毎日忙しく働く現代のビジネスパーソンにとって、クリアな思考や深い集中力など、脳が常に高いパフォーマンスを発揮している状態をキープできることは、キャリアの成功にとって不可欠です。

本記事では、脳の健康を維持・増進し、仕事をする上で高いワークパフォーマンスを発揮するための「脳に良い食べ物」を厳選して10個ご紹介します。

今回は、特定の食品群を取り入れることで認知機能の低下を遅らせ、脳の健康を向上させることが多くの研究によって証明されている「MINDダイエット」と呼ばれる食事法をベースに、MINDダイエットがなぜ脳の健康を増進するのかや、「脳に良い食べ物」と「脳に悪い食べ物」を具体的にお伝えします。

忙しいビジネスライフの中でも比較的簡単に取り入れられる食べ物も多くありますので、ぜひ参考にしていただき、毎日高いワークパフォーマンスを発揮できる脳を作っていきましょう。

脳に良い食事法「MINDダイエット」

MINDダイエット(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)とは、日本語に訳すと「神経の変性を遅らせる、地中海式食事法とDASHダイエットの介入」といったような意味になります。

アメリカ・ラッシュ大学メディカルセンターのマーサ・モリス博士のチームが考案した食事法であり、簡単に言うと、地中海式食事法とDASHダイエットを組み合わせて良いとこ取りをしたような食事法です。

地中海式食事法とは?

地中海式食事法は、「よく眠れる食事術|睡眠に良い食事と悪い食事とは?」の記事でも紹介していますが、1960年代にギリシャやイタリアといった地中海地方で行われていた食事法を模したもので、毎年アメリカのU.S. News & World Reportが発表する「最高の食事法ランキング」では、7年連続1位にランクする食事法です1

多くの健康効果がエビデンスによって明らかとなっていますが、例えば2020年に発表された研究2では、地中海式食事法を8週間行ったところ、一般的な西洋食を続けたグループと比較して、コレステロール値の低下や、腸内細菌の多様性が増えた(=腸内環境が良くなった)ことが報告されています。

DASHダイエットとは?

DASHダイエット(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、高血圧を予防するために作られた食事法です。

食事内容は地中海式食事法と似ており、野菜や全粒の穀物、低脂肪の乳製品、フルーツを中心とした食事を摂ることで、高血圧の予防や改善に効果があることが2020年に発表されたレビュー3で示されています。

MINDダイエットの効果

2015年に発表された、MINDダイエットによる認知機能と加齢の関係を調べた研究4によれば、MINDダイエットは加齢による認知機能の低下をかなり抑制したことが示されており、MINDダイエットを開始してから4〜8週間ほどで脳機能の改善が見られたと報告されています。

その他にも、マーサ・モリス博士らによる研究5では、MINDダイエットによってうつ病が11%改善したことや、5年間の追跡調査によってアルツハイマーの発症率が53%低下したことを報告しています。

更に、体内の炎症を表す数値が最大95%改善したこと6や、メタボリックシンドロームの発症リスクが35%減少したこと7を報告している研究もあります。

脳に良い食べ物10選

それではここから、MINDダイエットと呼ばれる食事法の中で、脳の健康を維持・増進し、ワークパフォーマンスを高めることが期待される「脳に良い食べ物」を10種類ご紹介します。

1)全粒の穀物

玄米、オートミール、キヌア、全粒粉を使用したパンやパスタなどの「全粒穀物」を、1食で握りこぶし1個分(125グラム程度)食べられると良いでしょう。

MINDダイエットでは、1日3食、1週間で21食、全粒の穀物を食べることを推奨していますが、ビジネスパーソンにとって毎食で全粒穀物を食べることはなかなか厳しいかと思いますので、取り入れられるときに取り入れれば良いでしょう。

2)緑の葉物野菜

ほうれん草、レタス、チンゲン菜、ケールといった緑色の葉っぱ野菜を、1日で両方の手の平いっぱいに乗るくらい(生野菜であれば150グラム程度、調理した場合は75グラム程度)食べることを目指しましょう。

葉物野菜の摂取は、心臓の機能の向上やストレスの対処能力の向上にもつながる可能性があることがわかっている8ため、毎日少しだけでも葉物野菜を摂る意識を持つようにできると良いかと思います。

3)その他の野菜

玉ねぎ、にんじん、ブロッコリー、ごぼう、大根など、葉物野菜以外の野菜も積極的に摂取しましょう。食物繊維が豊富な野菜がベターです。

葉物野菜と同じく、両手の平いっぱいに乗る程度(生野菜であれば150グラム程度、調理した場合は75グラム程度)が、1日の摂取量の目安となります。

4)魚介類(シーフード)

サバ、サーモン、ニシン、牡蠣、ツナなど、魚やシーフードは、たんぱく質や良質な脂質(=オメガ3脂肪酸)を豊富に含むため、脳の健康を維持・増進する上では積極的に摂取したい食材です。

オメガ3脂肪酸の一種である「DHA(ドコサヘキサエン酸)」の摂取量が不足すると、認知機能の低下や認知症、統合失調症、不安やうつといった、脳の病態や精神障害を発症するリスクが高まる可能性が示唆されています9

片手の手の平に乗る程度の量を、1週間に1回以上は食べましょう。

5)とり肉

鶏、ニワトリ、鴨といったとり肉は重要なたんぱく質源であり、健康な身体組成をつくるのはもちろん、脳の健康にとっても非常に重要な食材です。

また、脳の健康にとってたんぱく質とともに重要とされている「ビタミンB6」も鶏肉には豊富に含まれているため、週に2回以上を目安として、1食で片方の手の平に乗る程度(85グラム程度)の量を食べるように心がけましょう。

6)豆類

脳の健康にとって重要な栄養素であるたんぱく質や鉄、葉酸、コリンなど、多くの良質な栄養素を含むのが「豆」です。

苦手な人も多かったり、なかなか意識をしないと食べない方もいるかと思いますが、大豆、レンズ豆、ヒヨコ豆といったものから、納豆、豆腐、味噌といったものまで、1日どこかの1食で豆類を片方の手の平に乗る程度の量食べられるようにできると、脳の健康も含めて身体の調子が整うはずです。

7)ベリー類

ブルーベリー、ストロベリー(いちご)、クランベリー、ラズベリーなどのベリー類も脳の健康をはじめとして、カラダにもココロにも良い食材として有名です。

ベリー類は「ポリフェノール」のカタマリとも言うべき食材です。ポリフェノールとは、植物の色素や苦みの成分であり、2009年に発表されたレビュー論文10では、ガンや心疾患、糖尿病、高血圧、感染症といったあらゆる病気や病態の予防・対策として効果があることや、アンチエイジング効果も高いことが示されています。

1週間で握りこぶし2個分(=1食で約50グラム)程度食べることを目指しましょう。

8)ナッツ類

2016年に発表されたレビュー論文11によれば、1日に20〜30グラムのナッツ類を摂取することで、死亡率の低下をはじめ、ガンや心疾患、呼吸器系疾患、糖尿病、感染症の発症リスクを低減させることが報告されています。

とり肉と同様に、ナッツ類もビタミンB6が豊富なため、脳にも身体にも良い食材と言えます。カロリーが高めなので、食べ過ぎにだけは注意しましょう。

クルミ、アーモンド、マカダミアといったナッツ類を1日に親指の大きさくらいの量(=20〜30グラム)食べるというのが、摂取の目安になります。

9)ワイン

アルコール(=お酒)は基本的に体に良くないと考えていいですが、ワインは体に良いと報告している研究が多く存在します。

特に赤ワインは、ベリー類と同様にポリフェノールが豊富なため、死亡率の低下やアンチエイジング効果、更にポリフェノールの抗酸化作用によって脳にも良いと示す研究も存在します。

もちろん、ワインを飲まなくても、ベリー類の摂取でポリフェノールは充分に摂れるため、まったくお酒を飲まない方や、お酒は飲むけどワインは好きではないという方が無理に飲む必要はありませんが、他のお酒と比較するとワインは比較的体に良さそうなので、お好きな方は1日にグラス一杯程度(約150ml)飲むのは良いのかなと思います。

10)エキストラバージンオリーブオイル

「体に良い油」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのがオリーブオイルではないでしょうか?

実際に2024年に発表された最新のレビュー論文12でも、オリーブオイルの摂取が多い人は、全死因での死亡率、心疾患による死亡率、心血管系の疾患を発症するリスクが低かったことが報告されています。

調理油としてや、サラダ等のドレッシングとして、最も多く使う油として、オリーブオイルをぜひ活用すると良いでしょう。1日に親指程度の量が使用の目安となります。

脳に悪い食べ物

MINDダイエットの基本的なガイドラインは「脳にとって良い食品をできるだけたくさん食べて、脳にとってあまり良くない食品をできるだけ減らす」こととなります。

上記した脳に良い食べ物を、毎食の中でできるだけ取り入れる努力をすることがもちろん重要なのですが、同時に、いわゆる脳に悪い食べ物をできるだけ食べない、というのも大切になります。

脳に悪い食べ物として、MINDダイエットの中で紹介されているのは、以下の通りとなります。

  • 赤肉・加工肉
  • 揚げ物
  • チーズ
  • バター・マーガリン
  • お菓子類
  • ファストフード

ここに挙げた食べ物は、できるだけ摂取量を減らすことで、脳の健康を保つことにつながります。

まとめ

MINDダイエットを参考に、脳に良い食べ物を10種類紹介しました。

どの食べ物・食材も、一度は “体に良い” と聞いたことがあるようなものかと思うので、そんなに驚きはなかったかと思いますが、今回紹介した食べ物を日々の食事で積極的に取り入れることで、脳の健康の維持から、脳機能の向上まで期待できます。

早速、次の食事で脳に良い食べ物を食べましょう!

参考文献・資料

  1. Best Diets Overall. Usnews.com. Published 2019. https://health.usnews.com/best-diet/best-diets-overall
  2. Meslier V, Laiola M, Roager HM, et al. Mediterranean diet intervention in overweight and obese subjects lowers plasma cholesterol and causes changes in the gut microbiome and metabolome independently of energy intake. Gut. 2020;69(7):1258-1268. doi:10.1136/gutjnl-2019-320438
  3. Filippou CD, Tsioufis CP, Thomopoulos CG, et al. Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) Diet and Blood Pressure Reduction in Adults with and without Hypertension: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Adv Nutr. 2020;11(5):1150-1160. doi:10.1093/advances/nmaa041
  4. Morris MC, Tangney CC, Wang Y, et al. MIND diet slows cognitive decline with aging. Alzheimers Dement. 2015;11(9):1015-1022. doi:10.1016/j.jalz.2015.04.011
  5. Morris MC, Tangney CC, Wang Y, Sacks FM, Bennett DA, Aggarwal NT. MIND diet associated with reduced incidence of Alzheimer’s disease. Alzheimers Dement. 2015;11(9):1007-1014. doi:10.1016/j.jalz.2014.11.009
  6. Casas R, Sacanella E, Urpí-Sardà M, et al. The effects of the mediterranean diet on biomarkers of vascular wall inflammation and plaque vulnerability in subjects with high risk for cardiovascular disease. A randomized trial. PLoS One. 2014;9(6):e100084. Published 2014 Jun 12. doi:10.1371/journal.pone.0100084
  7. Yang J, Farioli A, Korre M, Kales SN. Modified Mediterranean diet score and cardiovascular risk in a North American working population. PLoS One. 2014;9(2):e87539. Published 2014 Feb 4. doi:10.1371/journal.pone.0087539
  8. Park SK, Tucker KL, O’Neill MS, et al. Fruit, vegetable, and fish consumption and heart rate variability: the Veterans Administration Normative Aging Study. Am J Clin Nutr. 2009;89(3):778-786. doi:10.3945/ajcn.2008.26849
  9. Crawford MA, Bloom M, Broadhurst CL, et al. Evidence for the unique function of docosahexaenoic acid during the evolution of the modern hominid brain. Lipids. 1999;34 Suppl:S39-S47. doi:10.1007/BF02562227
  10. Pandey KB, Rizvi SI. Plant polyphenols as dietary antioxidants in human health and disease. Oxid Med Cell Longev. 2009;2(5):270-278. doi:10.4161/oxim.2.5.9498
  11. Aune D, Keum N, Giovannucci E, et al. Nut consumption and risk of cardiovascular disease, total cancer, all-cause and cause-specific mortality: a systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. BMC Med. 2016;14(1):207. Published 2016 Dec 5. doi:10.1186/s12916-016-0730-3
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