働き方改革(働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革)のような取り組みが始まり、プレゼンティーイズム(健康の問題を抱えながら仕事をしている状態)が問題視されてきた現代において、いかに仕事の効率・能率を上げ、ワークパフォーマンスを向上させるかが、よりよいワークライフバランスを実現する上で、非常に重要なポイントになってきています。

そんな中、短時間でも集中力を最大限に発揮させて、仕事の効率を格段に上げていくための秘訣の1つが「パワーナップ」と呼ばれる短時間の仮眠です。

毎日忙しく働くビジネスパーソンにとって、日中の短い仮眠(お昼寝)は、集中力を回復させ、午後のワークパフォーマンスを大きく向上させる効果があります。

しかし、ただ眠れば良いわけではなく、パワーナップには、その効果を最大限に引き出すコツが存在します。

本記事では、ランチタイムや仕事の合間の休憩中に簡単にできる、効果的なパワーナップの方法を紹介し、どのようにして短時間で疲れを取り除き、脳のパフォーマンスを向上させることができるのかを解説します。

あなたの仕事効率を高めるための短時間休息の秘訣を、ぜひ活用してみてください。

パワーナップとは?

パワーナップとは、元アメリカ・コーネル大学の社会心理学者であるジェームス・マース教授が1998年に自著で提唱した「日中に行う30分以内の仮眠」のことをさします1

日本語では「積極的仮眠」と呼ばれることもあるパワーナップは、深い睡眠に移行する前の「30分以内」の睡眠をとることで、脳や身体の疲れや機能を回復させることが目的となります。

パワーナップの効果

1994年にNASA(アメリカ航空宇宙局)が行った研究2によれば、パイロットを被験者として、仮眠をした群と仮眠をしなかった群を比較したところ、仮眠をした群は注意力(集中力)が54%高く、業務を遂行する能力も34%高かったことを報告しています。

こちらも少し古い研究ですが、1999年に日本人を被験者として行われた研究3でも、日中に20分間の仮眠をとったことで、主観的な眠気の改善や仕事のパフォーマンス向上、自分自身の仕事に対してより自信が持てるようになる、といったポジティブな変化が報告されています。

更に、久留米大学医学部による高校生を対象とした研究4では、高校の職員・学生合わせて542名が、お昼休みの15分間で仮眠をとり、6ヶ月後にアンケートを実施したところ、週3回以上仮眠を実施した人は、午前午後ともに眠気を感じることが少なくなったことや、授業に集中しやすくなったことが報告されたとともに、センター試験の成績の向上や難関大学への合格者が増えるといった結果も出たことを示しています。

昼食の有無に関係なくアフタヌーンディップは起こる

アフタヌーン・ディップとは「午後の眠気」とも呼ばれ、ランチを食べる食べないに関係なく、午後1時〜3時の時間帯は、体内時計の働きによって誰もが眠気に襲われてしまうことが、アメリカ・スタンフォード大学の研究によって明らかになっています5

「お昼ご飯を食べた後は、消化・吸収のために胃腸に血液が集まるため、脳への血流が減少して眠くなる」という話を聞いたことがある方もいるかと思いますが、お昼ご飯とその後の眠気は関係がないことが、これもスタンフォード大学の研究で結論づけられています5

効果的なパワーナップのやり方

それではここから具体的に、あなたのワークパフォーマンスを高めるパワーナップの具体的なやり方をご紹介していきます。

1)仮眠は「30分以内」で「15時より前」に

2014年に厚生労働省健康局によって発表された「健康づくりのための睡眠指針2014」では、以下のような記述があります6

仕事や生活上の都合で、夜間に必要な睡眠時間を確保できなかった場合、昼間の仮眠が、その後の覚醒レベルを上げ、作業能率の改善を図ることに役立つ可能性がある。ただし、必要以上に長く寝すぎると目覚めの悪さ(睡眠慣性)が生じるため、30分以内の仮眠が望ましいことが示されている。

睡眠慣性とは、深い睡眠後に現れる、一時的に頭がボーッとして作業能率が低下した状態のことをさします。30分以上寝てしまうと深い睡眠に入ってしまって睡眠慣性が起こるため、起床後しばらくはワークパフォーマンスが低下してしまいます。

また、仮眠をとる時間帯も重要です。アスリートの効果的な疲労回復についてまとめたVitaleらによるレビュー7では、仮眠をとる場合は15時までに終えることを推奨しています。

あまり遅い時間に仮眠をとってしまうと、夜の睡眠の質が低下してしまいます。15時までに済ませて、夜間の睡眠に悪影響が出ないようにしましょう。

2)「頭を固定」して「光と音を遮断」する

食後に仮眠をとる場合は、逆流性食道炎を防ぐためにも、横にはならずに座った姿勢で仮眠をとる方が良いです8

食後でない場合は、ベッドやソファ等で横になって仮眠をとっても問題ありませんが、横になるとつい30分以上眠ってしまいがちのため注意が必要です。

職場のデスクや会議室等で座って仮眠をとる場合、まず重要なのが「頭を固定する」ことです。

机に伏せた姿勢や、壁や椅子の背もたれに頭をもたれて、仮眠をとっている間に頭が動かないようにすることが大切です。

もし可能であれば、背もたれにしっかりと体を預けて頭をもたれて、脚を伸ばした長座位になれるとより良い仮眠姿勢と言えるでしょう9

更に、音や光を遮断することができるとより仮眠のための睡眠環境が良くなるため、耳栓やノイズキャンセリング付きのイヤホン等を使用して音を遮断したり、アイマスクや頭・顔にタオルをかける等で光を遮断すると良いでしょう。

3)完全に眠れなくても「目を閉じるだけ」でも脳機能向上

2016年に発表されたアメリカ・ファーマン大学による研究10では、26名の学生に短いお話を聞いてもらった後、15分間「椅子に座って目をつぶって休むグループ」と「簡単なパズルゲームをして遊ぶグループ」に分けて、その後お話に関する記憶テストを行いました。

結果、目をつぶって休んでいたグループの方がより詳細に話を記憶していたとともに、このグループの脳波は睡眠をとっているときと似た脳波になっていたことを報告しています。

ヒトは目から非常に多くの情報を常に得ているため、目を閉じて情報が入らないようにするだけで、交感神経活動の低下、副交感神経の活動が活性化が起こって疲労回復の効果があるとともに、記憶の整理や定着といった、睡眠時に起こると言われている脳活動も認められるのだろうと示唆されています。

「仮眠したかったけど眠れなかった」という場合も全く問題なく、ウトウトしながらまどろんでいる程度でも、充分に脳の疲れをとって機能を向上させる効果はあるのです。

4)カフェインを摂取してから仮眠をとる「カフェインナップ」

カフェインナップとは、コーヒーや緑茶などを使用して「カフェイン」を摂取してから仮眠をとる方法です。

カフェインというと「眠気覚まし」のイメージがあるかと思いますが、摂取するといきなり目が覚めるわけではなく、摂取してから「約30分後」に覚醒作用が出てきます。

体内に入ったカフェインが、血液を通じて脳にたどり着くまでに約30分かかるという仕組みを利用して、仮眠を取る前にカフェインを摂取することで、20〜30分後に起きた時に、ちょうどこの覚醒作用が働き、スッキリと目が覚めて、スムーズに午後の仕事や活動にとり組むことができます。

実際にカフェインと短時間の仮眠による効果を検証した研究でも、カフェインと仮眠の組み合わせによってより効果的に脳と身体の疲労を取り除くことができることが示されています11

ポイントは、カフェインを含んだ飲料(コーヒー、緑茶など)を1〜2分程度でサクッと飲むこと12。そうすることで約30分後にきちんと覚醒作用が働きはじめ、起床後すぐのワークパフォーマンス向上に役立てることができます。

5)目覚ましアラームは「音量小さめ」の「自然音」を使用する

お昼寝をすると心配なのが「ちゃんと時間通り」起きられるか、ですよね。しっかり時間通りに起きられるように、つい目覚ましのアラームとして激しいBGMを使用したり、音量を大きくしたりしたくなると思います。

しかし、お昼寝であろうが夜の睡眠中であろうが、眠っているときに大きな音がすると、動物にとっては命の危険を示すサインとなるため、せっかく疲労がとれてリフレッシュできたのに、一瞬で交感神経優位となって緊張状態となり、疲労がたまりやすい状態となってしまいます13

よって、目覚ましアラームは静かな音や自然音(鳥のさせずり、波のせせらぎ、雨の音など)のようなものを使用し、音量も小さい音から徐々に大きい音になるように設定して、できる限り交感神経活動を不必要に活性化させないようにすることで、スッキリとした目覚めとなり、午後の仕事をスムーズにスタートすることができるかと思います。

まとめ

パワーナップとはどういったものなのか、そして効果的なパワーナップの取り方をご紹介しました。

夜の睡眠が一番重要なのは言うまでもありませんが、それに加えてパワーナップを取り入れることで、午後の眠気の解消や集中力の回復などが期待でき、一日中高いワークパフォーマンスを維持しながら業務を遂行することが可能になります。

ぜひ本記事を参考にして、あなたの生活ルーティーンに仮眠を取り入れてみてください。

参考文献・資料

  1. Maas JB. Miracle Sleep Cure:The Key to a Long Life of Peak Performance 1998; Thorsons.
  2. Rosekind M, Graeber R, Dinges D, Connell L, Rountree M, Spinweber C, et al. Crew Factors in Flight Operations IX : Effects of Planned Cockpit Rest on Crew Performance and Alertness in Long-Haul Operations. United States. National Aeronautics and Space Administration. Operations Branch; 1994. doi:10.21949/1403328
  3. Hayashi M, Watanabe M, Hori T. The effects of a 20 min nap in the mid-afternoon on mood, performance and EEG activity. Clin Neurophysiol. 1999;110(2):272-279.
  4. https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-18603010/18603010seika.pdf
  5. 西野精治. スタンフォードの眠れる教室. 幻冬舎; 2022.
  6. 内山真. 健康づくりのための睡眠指針 2014. 学術の動向. Published online 2015. https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/20/6/20_6_68/_article/-char/ja/
  7. Vitale KC, Owens R, Hopkins SR, Malhotra A. Sleep Hygiene for Optimizing Recovery in Athletes: Review and Recommendations. Int J Sports Med. 2019;40(8):535-543. doi:10.1055/a-0905-3103
  8. ブレインスリープ監修. 脳まで眠る睡眠がすべてを解決する. 宝島社; 2023.
  9. 中根一. 寝てもとれない疲れをとる本. 文響社; 2017.
  10. Brokaw K, Tishler W, Manceor S, Hamilton K, Gaulden A, Parr E, et al. Resting state EEG correlates of memory consolidation. Neurobiol Learn Mem. 2016;130:17-25.
  11. Reyner LA, Horne JA. Suppression of sleepiness in drivers: combination of caffeine with a short nap. Psychophysiology. 1997;34(6):721-725. doi:10.1111/j.1469-8986.1997.tb02148.x
  12. メンタリストDaiGo. 賢者の睡眠. リベラル社; 2021.
  13. 梶本修身. すべての疲労は脳が原因3<仕事編>. 集英社; 2017.