サッカーブームだからといってサッカーやフットサルを始めようとか、マラソンブームだからといって長距離ランニングを始めましょう、と言うのではありません。
一日中デスクワークで座りっぱなし。移動は車中心。パソコンやスマートフォンを長時間見続けている。そんな生活が続いているなら、まずは「今より少しだけ多く、身体を動かす機会をつくること」から始めてみませんか?
適度な運動は、心肺機能や筋力を高めるだけでなく、仕事の集中力、ストレスへの抵抗力、睡眠の質などにも良い影響を与えることが多くの研究で示されています。
世界保健機関(WHO)は、成人に対して「週150分以上の中強度の有酸素性運動」と「週2回以上の筋力トレーニング」を推奨しており、これらが心血管疾患や2型糖尿病、うつ症状などのリスクを下げることを報告しています1。
まず知っておきたい「運動のタイプ」

一言に「運動」といっても、タイプがあります。
1)有酸素運動
歩く・走る・泳ぐ・自転車をこぐといった、心拍数を少し上げた状態を10分以上保つような運動は、有酸素運動と呼ばれます。
定期的な有酸素運動は、心臓や血管の機能、持久力、体脂肪や血糖・血圧の改善と関連しており、生活習慣病予防に有効であると報告されています2。
2)筋力トレーニング
ダンベルやマシン、自体重を使って筋肉に負荷をかける運動は、筋力や筋量を維持・向上させます。
年齢とともに低下する筋力を支える3とともに、姿勢の安定や腰痛・膝痛の予防4、メタボリックシンドロームの予防5にも役立つことが示されています。
3)ゆったりした全身運動(ヨガ・太極拳など)
呼吸を意識しながら、ゆっくりとした動きで全身を伸ばすヨガや太極拳は、柔軟性やバランス感覚を高めるとともに、自律神経の働きを整え、ストレスや不安感の軽減に役立つ可能性があると報告されています6。
「激しい運動は苦手だけれど、心身を整えたい」という方に向いたスタイルです。
ビジネスパーソンにおすすめの運動スタイル
ビジネスパーソンにとってプラスとなるような効果が期待できる運動をご紹介します。
A)ヨガ

ヨガは、呼吸とポーズを組み合わせて、全身の筋肉や関節をバランス良く動かす運動です。
体の表面だけでなく深部の筋肉まで動かすことで血液の循環を促し、柔軟性や姿勢の改善につながります。
呼吸法や瞑想を組み合わせるタイプのヨガでは、自律神経のバランスが整い、ストレスや不安感の軽減、睡眠の質の改善などが報告されています。
種類が多く、動きがゆったりしたヨガから、筋力も使うパワーヨガまで様々なスタイルがあるため、自分の好みや体力に合わせて選ぶことができます。初心者は、インストラクターによるクラスやオンラインレッスンから始めると安心でしょう。
B)太極拳

太極拳は、ゆっくりとした連続した動きと深い呼吸を組み合わせて行う全身運動です。
無理のない動作で全身の筋肉や関節を動かすため、体力にあまり自信がない方でも取り入れやすいのが特徴です。
研究では、太極拳がバランス感覚や柔軟性を高めるだけでなく、ストレスや不安感の軽減、自律神経の働きを整えることにも役立つ可能性が報告されています7。
「激しい運動は苦手だけれど、心身を整えたい」「落ち着いて体を動かす時間を持ちたい」という方に向いた運動です。
C)ウォーキング

ウォーキングは、最も手軽で続けやすい有酸素運動のひとつです。
「やや息が弾む程度」の速さで、少し大股で、腕を振りながら歩く中強度のウォーキングを、通勤や昼休みなどに少しずつ積み重ねていくだけでも、心肺機能や持久力の向上、血圧や血糖値の改善が期待できます。
平坦な道だけでなく、坂道や階段をルートに取り入れることで、下半身の筋力や心肺負荷を高めることができます。
仕事の合間に短時間ずつ歩く「分割ウォーキング」でも、トータルの運動時間を確保できれば健康効果が得られることが報告されています8。
正しい歩き方も学びたい方は「正しい歩き方6つのポイント|正しく歩いて脳・体・心を鍛えよう!」の記事もぜひお読みください。
D)ウェイトトレーニング(筋トレ)

ウェイトトレーニングは、筋肉を鍛え、体を引き締めたい人に向いた運動です。
パーソナルトレーナーやジムのインストラクターに相談し、自分の体力や目的に合わせてメニューを作成してもらうと、安全かつ効率的に取り組めます。
週2回程度の筋トレは、筋力・筋量の維持、姿勢の安定、基礎代謝の向上などにつながり、メタボリックシンドロームやサルコペニアの予防に役立つと報告されています。
E)水泳

水泳は、全身を使う有酸素運動でありながら、水の浮力のおかげで関節への負担が少ないのが特徴です。膝や腰に痛みがある方、ランニングの衝撃が気になる方にも適した運動とされています。
一定のペースで泳いだり、水中ウォーキングを行うことで、心肺機能の向上、筋持久力の改善、体脂肪の減少などが期待できます9。水圧による軽いマッサージ効果で、むくみの軽減やリンパの流れの促進も報告されています10。
F)サイクリング

屋外のサイクリングも、ジムや自宅で行うエアロバイクも、下半身を中心に鍛える有酸素運動として非常に効果的です。
一定の回転数でこぎ続けることで、心肺機能や持久力の向上、下肢筋力の強化が期待できます11。
ただし、通常の自転車やバイクでは上半身はあまり鍛えられないため、筋トレやストレッチなど別の運動と組み合わせると、バランスのよい全身運動になります。
G)ダンス

ダンスには、バレエ、ベリーダンス、サルサ、社交ダンス、フラメンコなどさまざまな種類があり、音楽に合わせて体を動かす楽しさが魅力です。
リズミカルな動きで、筋力・柔軟性・協調性が高まるだけでなく、自己表現の場として心理的な健康や自己概念のポジティブな変化につながる可能性が、日本の研究でも報告されています12。
「いかにも運動らしい運動は苦手」「人と一緒に楽しく体を動かしたい」という方には、社交的な場としてのダンスが理想的な選択肢になるでしょう。
H)乗馬

乗馬は、馬上でバランスを保つために体幹や下肢の筋肉を広く使うスポーツです。
常歩(なみあし)でも有酸素運動としての負荷があり、速歩や駈歩ではさらに高い運動強度になります。
国内の研究では、乗馬後に疲労感や気分の落ち込み、不安感などが有意に改善し、自律神経のバランスが整うことが報告されており、メンタルヘルスの向上やストレス緩和にも役立つ可能性が示されています13。
自然の中で、いつもより高い視点から景色を見ながら走る爽快感に加えて、馬との触れ合いを通じた癒し効果も期待できます。
まとめ:自分に合った運動を選ぶために
年齢、体力、健康状態、そして「どんな時間の使い方をしたいか」に応じて、あなたに合った運動のスタイルは変わります。
- 一人で集中したいなら:自宅でのオンラインヨガや筋トレ、エアロバイクなど
- 人と一緒に楽しみたいなら:ジムのグループレッスン、ダンス教室、チームスポーツなど
- 自然や動物が好きなら:ジョギングやハイキング、乗馬など
インストラクターに習う場合でも、グループレッスンか個人指導か、週何回・どの時間帯なら続けられるか、といった「自分の好みと生活リズム」を明確にしておくと、習慣化しやすくなります。
座りがちな働き方が続くと、心身のパフォーマンスは少しずつ低下していきます。一方で、週に数時間の運動を継続するだけでも、体調や集中力、ストレス耐性は着実に変わっていきます。
ぜひ、あなたのライフスタイルと興味に合った「新しい運動」を探して、日々の仕事と暮らしに取り入れてみてください。
参考文献・資料
- World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Geneva, Switzerland: World Health Organization; 2020. Accessed July 17, 2026. Available at: [https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128]
- Warburton DE, Nicol CW, Bredin SS. Health benefits of physical activity: The evidence. CMAJ. 2006;174(6):801-809.
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