毎日高いワークパフォーマンスを発揮する必要があるビジネスパーソンにとって、一日の脳や身体の疲労を取り除いて、次の日も活力に満ちた仕事を行うために、質の高い睡眠が欠かせません。

しかし、朝から晩まで忙しく働くビジネスパーソンが、毎日の中で睡眠の質を確保することは簡単ではありません。

本記事では、質の高い睡眠をとるための重要な要素の1つである、理想的な睡眠環境を整えるための寝室作りのポイントを紹介します。

適切な照明、静かな環境、心地よい寝具選びから、気温や湿度の管理まで、科学的に証明された方法をもとに、ぐっすり眠れる寝室の作り方をお伝えします。

ビジネスパーソンのワークパフォーマンスを最大限に引き出すためにも、本記事を参考にして、睡眠の質を高める最高の寝室を作ってみてください。

最高の寝室を作るための8つのポイント

それでは早速、質の高い睡眠をとることができる最高の寝室を作り方を、2018年に発表された睡眠介入に関するレビュー1を参考に、8つのポイントに分けて1つ1つ解説していきます。

1)寝室は「真っ暗」がベスト

睡眠の質を考えると、寝るときは全く明かりのない「真っ暗」がベストです。就寝中も五感は働いており、たとえ目をつぶっていたとしても、光を感知することができてしまいます。

寝付きが悪い人必読!寝付きが良くなる6つの入眠スイッチ」の記事でもお伝えしていますが、朝、太陽の光を浴びることで、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が止まって、目が覚めるとともに、体内時計がリセットされて脳や身体が「朝だ!」と感じます。

日光ほど強い光ではなかったとしても、睡眠中に光を感知することで、睡眠の質は低下してしまうため、寝室を真っ暗にして睡眠をとれるのが理想となります。

もし寝室に明かりがないと不安に感じる場合は、3ルクス以下(周りがぼんやり見えて、4メートル先にいる人がギリギリ認識できる程度の照度)であれば、睡眠の質を大きく低下させることなく睡眠がとれるでしょう。

また、夜間にトイレ等で起きた場合も、寝室の明かりをつけてしまうと眠気が抑制されてしまい、再び寝付くのが難しくなってしまう可能性があるため、足元のみ照らすような足元灯や、センサーで感知して光がつくような小さめの間接照明を用意しておくと良いでしょう。

2)寝室は「涼しく」する

寝室の室温は「やや涼しい」と感じる程度がベストです。

睡眠を改善する運動のコツ|運動するとよく眠れるは科学的根拠があった」の記事で詳しく解説していますが、スムーズな寝付きや質の高い睡眠において「深部体温を低下させる」ということがキーポイントであり、深部体温を低下させるために、涼しい寝室を作りましょう。

アスリートのリカバリーを促進するための睡眠環境についてのレビュー2によれば、寝室の室温は「15〜21℃」程度が望ましいと報告されています。

ただし、このレビューは米国の研究であり、日本人的にはさすがに15℃は寒すぎると感じる方が多いでしょう。寒いと感じる室温は睡眠の質を低下させるため、自分にとって少し涼しいと感じる程度の室温に設定しましょう。

目安として、夏は室温「25℃程度」が適温です。特に夏は、日中の暑さによって、家の壁や家具に蓄えられた熱によって寝室が温められるため、就寝の2〜3時間前からエアコンを「24〜25℃」に設定して、室温が25℃程度になるようにしましょう。

近年、深夜も気温が高く、熱帯夜となる日も多いため、可能な方は一晩中エアコンはつけっぱなしにすることで、寝室の適温をキープすることができ、快適な睡眠をとることができるでしょう。

エアコンをつけっぱなしにすると冷えすぎてしまう方や、乾燥などが気になる方は、2時間程度たったら切れるようにタイマーを設定して、睡眠の中でも特に重要な「眠り始めの90分」で深い睡眠が取れるようにすると良いでしょう。

冬は室温を「19℃程度」に設定するのが目安です。室温が16℃以下になると、寒さによって目が覚めやすくなるため、一晩を通して室温16℃以上をキープできるようにするのが重要です。

3)質の高い睡眠には「湿度」も重要

特に夏は、暑さだけではなく湿度の高さでジメジメして寝付けない、と感じたことがある方は多いと思います。

実際に、不快に感じる湿度の高さは睡眠の質を低下させるため、寝室の室温を下げるだけではなく、エアコンの「除湿機能」を利用することで、エアコンの設定温度を下げすぎずに、快適な寝室を作ることができます。

逆に冬は、乾燥が気になる方は多いかと思います。高湿度だけでなく低湿度(=乾燥)も、鼻や喉の乾燥によって夜中に目が覚めやすくなることがわかっているため、乾燥が気になる季節は、加湿器を使用したり、なければ濡れたタオルをハンガーに引っ掛けて干しておくことで、湿度をキープすることも重要です。

目安として、夏は「50〜60%」、冬は「40〜50%」程度の湿度になるように設定してみましょう。

4)寝室は「静かに」する

耳障りで不快な騒音は、睡眠の質を低下させます。人によって、音に敏感な人は、ちょっとした騒音や物音でも気になって眠れないという場合もあります。

WHO(世界保健機関)が発表している「環境騒音ガイドライン3」によれば、30デシベル以下が睡眠に影響を与えない騒音レベルと設定しており、45デシベルを超える騒音は、中途覚醒が増え始めて睡眠が阻害されることが報告されています。

音量の基準の目安としては以下の通りです4

  • 20デシベル:木の葉の触れ合う音
  • 30デシベル:郊外の深夜 / ささやき声
  • 40デシベル:図書館 / 深夜の市内 / 昼の静かな住宅街
  • 50デシベル:家庭用クーラーの室外機 / 換気扇
  • 60デシベル:洗濯機 / 掃除機 / トイレの洗浄音 / 車のアイドリング

また、スマホの着信音は45デシベル以上であるため、寝室にスマホを持っていく方は、スリープモード等の設定をして、就寝中に音が鳴らないようにしておくことが大切です。

寝室で、45デシベル以上の騒音がある、もしくは騒音や物音によって夜中に起きてしまうことがあるという方は、遮音カーテンや耳栓の使用を検討すると良いかもしれません。

5)通気性の良い高反発マットレスが理想

ウレタン素材でできた低反発のマットレスと、通気性の良い高反発マットレスを比較した研究5によれば、通気性の良い高反発マットレスのほうが、深部体温の低下がスムーズに起きて入眠が早まり、深い睡眠に導いたという結果が報告されています。

深部体温の低下以外にも、高反発マットレスは寝返りを打つ際の力が最小限で済むことで、肩こりや腰痛の予防にも効果があると考えられています。

6)通気性が良く、頭と首の高さに合った枕の使用

身体の深部体温の低下と同様に、脳の温度も低下させることでスムーズな入眠や深い睡眠につながります。よって、通気性が良く脳の温度が下がりやすい枕を使用することで、睡眠の質が向上します。

メッシュ素材でできた枕や、そば殻、パイプストローのようなものを使用した枕が、脳の温度を効果的に下げるという点で、推奨されます。

枕の素材に加えて、高さも重要なポイントです。枕が高すぎると、気道を狭めてしまうことで、いびきなど呼吸のしずらい状態となってしまい、睡眠の質が低下するため、自分の頭や首の高さに合ったものを使用することが大切です。

更に、寝返りが打ちやすい高反発のものや、寝返りを打っても枕から頭が落ちない程度の幅の広い枕が、快適な睡眠を続ける上で重要なポイントとなります。

7)寝室は寝る場所と決め、それ以外のことは寝室で行わない

寝室(もしくはベッドの上・布団の上)では、日中に行うような活動は行わず、寝ることのみを行う場所にすることが重要です。

例えば、寝室に入って(もしくはベッドの上にきて)、動画を見たり、仕事のメールを読んだりといった行動を続けると、脳は「この場所は動画を見る場所、もしくは仕事のメールを確認する場所」というのを覚えます。

脳が「この場所は〇〇を行う場所」と、寝ること以外を行う場所であると認知してしまうと、寝室にきたとき(もしくはベッドの上にきたとき)に、脳が寝るモードではなく、〇〇を行うモードになってしまい、脳が覚醒して睡眠の質が低下してしまいます。

もし寝る前に読書やストレッチといった「寝る前の準備としての活動」を行う場合でも、読書やストレッチはリビング等の寝室以外の場所で行い、すべての準備が整ったら寝室へ行って、寝室では寝るだけという状態にしましょう。

脳が「寝室=寝る場所」と認知することで、寝室へ来ると自然と脳が睡眠モードになり、スムーズな入眠や深い睡眠を促してくれます。

8)通気性の良いパジャマを着用する

最後に、寝室作りではありませんが、マットレスや枕と同様に、睡眠時に着用するパジャマも、深部体温の低下がスムーズに起こる通気性の良いもので、襟や袖口が開いていて熱放散が効果的に行われるようなものを使用すると良いでしょう。

身体が冷えすぎると睡眠は浅くなってしまうため、下着やパジャマは着用して寝ましょう。衣服を脱いで体温調節をするのではなく、エアコン等を利用して快適な室温に設定することが重要です。

また、上述した「寝室は寝る場所と決める」と同じように、「寝るときはこの衣服」と決めることもオススメです。

同じ衣服・パジャマを着ることで、脳が「もうすぐ寝るんだ」ということを認識し、睡眠モードになりやすくなります。

まとめ

睡眠の質を高める寝室の作り方を、8つのポイントに分けてご紹介しました。

マットレスについては今すぐ変えることは難しいかもしれませんが、その他については今日の夜から実践できるものかと思いますので、ぜひ自分がまだ行っていないものがあれば、ぜひ実践してみていただけたらと思います。

1つでも実践することで睡眠の質が向上し、日中のワークパフォーマンスの向上が期待できます。毎日元気に、活力に満ちた仕事を行うために、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。

参考文献・資料

  1. Bonnar D, Bartel K, Kakoschke N, Lang C. Sleep Interventions Designed to Improve Athletic Performance and Recovery: A Systematic Review of Current Approaches. Sports Med. 2018;48(3):683-703. doi:10.1007/s40279-017-0832-x
  2. Vitale KC, Owens R, Hopkins SR, Malhotra A. Sleep Hygiene for Optimizing Recovery in Athletes: Review and Recommendations. Int J Sports Med. 2019;40(8):535-543. doi:10.1055/a-0905-3103
  3. World Health Organisation. Noise. www.who.int. Published April 27, 2010. https://www.who.int/europe/news-room/fact-sheets/item/noise
  4. 騒音値の基準と目安 | 騒音調査・測定・解析のソーチョー. 騒音調査・測定・解析のソーチョー | 騒音を解決するためには、騒音の調査、すなわち発生している騒音の測定・計測が必要不可欠です。騒音調査なら当社にお任せください。. Published September 9, 2012. https://www.skklab.com/standard_value
  5. Chiba S, Yagi T, Ozone M, Matsumura M, Sekiguchi H, Ganeko M, et al. High rebound mattress toppers facilitate core body temperature drop and enhance deep sleep in the initial phase of nocturnal sleep. PLoS One. 2018;13(6):e0197521.