「本当に効果があるウォーキング!!インターバル速歩のススメ」
連載2回目は、いよいよ【インターバル速歩】の実践方法について。
1日1万歩。という言葉を聞いた事がある方も多いと思いますが、毎日そんなに時間は取れない・・・やってみたけど続かなかった・・・という方に実践して頂きたい内容です。
今回も、松本大学 人間健康学部長/教授の根本賢一先生にお話を伺いました。


前回の記事はコチラ
第1回: 今こそ歩きましょう!運動不足を放置してはいけない理由とは?


編集部:
前回のインタビューで、姿勢を整え、徐々に歩く事に慣れてきた方は「緩急も付けてみましょう」とお話いただきました。これが【インターバル速歩】ですか?

根本先生:
インターバル速歩は「ゆっくり歩き」と「早歩き」を数分間ずつ交互に繰り返すウォーキング法で、「早歩き」の合計が1日15分以上実践する事をおすすめしています。
ウォーキングの健康効果を研究している過程で、参加者の1人が偶然「電柱」を目印に、「あそこの電柱までは小走り、ここからはゆっくり歩き」という歩き方を繰り返していたのですが、その方の体力が他参加者の方と比較して各段に上昇していた事をヒントに開発した歩き方になります。

編集部:
何故普通の歩き方よりも、運動効果が高いのでしょうか?

根本先生:
通常のウォーキングだと、運動強度は最大体力の40-50%までの強度にしか上がりませんが、少しキツイと思う位の速さで「早歩き」をすると、その強度は70%前後まで上昇します。数分であっても、この程度の強度の運動を組み合わせる事によって、筋力や持久力等が上昇すると考えられます。また、私達の実験では「血圧低下」に効果がある事も分かっています。海外では、インターバル速歩を実践することで「インスリンの抵抗性」が改善されたという報告があり、糖尿病の予防や改善にもその効果が期待されています。(※)

(※)生活習慣病を持つ方、心肺機能の低下がある方、その他基礎疾患をお持ちの方がインターバル速歩の様に負荷をかける運動を行う場合は、事前にかかりつけ医に相談した上で、水分補給はしっかりと行う、空腹時には行わない、 などの点にご注意ください。

「早歩き」を長く続けるとすぐに疲れてしまいますが、「ゆっくり歩き」と交互であれば続けられますし、早歩きの合計が15分以上になれば、1日の中で「小分け」にしても効果に大差はありません。例えば朝に5分、ランチ休憩に5分、帰宅時に5分などであれば、仕事のある日でも特別な時間を取らずに実践可能です。

中高年者(平均年齢65歳)を対象に、5ヶ月間のインターバル速歩トレーニングと「1日1万歩」目標の従来の歩行トレーニングの効果を比較。その結果、インターバル速歩トレーニング群では太ももの筋力が約13%、増加し、最大酸素摂取量¹も約9%増加しました。一方、1日1万歩ではこれらの効果は得られませんでした。すなわち、1日1万歩のトレーニングでは運動強度が低すぎて、脚の筋力や最高酸素摂取量(VO2peak)が増加しなかったと考えられます。

最大酸素摂取量¹:私たちは呼吸をすることで酸素を体内に取り入れ、酸素を利用して糖や脂質を分解することで運動エネルギーを作りだしています。運動強度が高くなったり運動継続時間が長くなったりしても、体内に十分な酸素を取り入れ利用することができる能力が全身持久力です。そのため最大酸素摂取量は全身持久力の指標として用いられます。

最高血圧の比較を比較すると、通常のウォーキンググループは3mmHgの低下だったのに対し、インターバル速歩のグループは約9mmHg低下した。

編集部:
前回のインタビューでも、運動を始める上で「まずは姿勢を意識しましょう」とお伺いしましたが、インターバル速歩を始める際は、どの様な事に気をつければよいでしょうか?

根本先生:
姿勢が大切なのは、インターバル速歩も同様です。前回の記事でご紹介した姿勢チェックを行い、その姿勢のまま楽なペースで歩くところから始めましょう。日中デスクワークをしている方であれば、座り姿勢を整え意識し続けるのも大切です。最初はそれだけでもキツイと感じる方が多いと思います。

正しい座り姿勢・・・横から見た際「耳の穴、肩、骨盤」が縦一直線に並ぶ姿勢

また、歩く際の基本姿勢は下記の写真を参考にしてください

編集部:
インターバル速歩を行う「おススメの時間帯」はありますか?

根本先生:
基本的にはいつでもOK、ご自身がやりやすい時間帯が1番です。
生活パターンを振り返ってみて、数分でも歩くチャンスが無いか?探してみてください。
ビジネスマンの方であれば、通勤や仕事中の移動時間を活用してみたり、在宅ワークであれば、お昼ご飯等で買い出しに出るタイミングを利用してみたり。小さなお子さんがいらっしゃる方は、保育園の送迎の片道を利用するのもいいですね。

気を付けるべき時間帯があるとすれば、早朝、朝起きたばかり空腹の状態でいきなり運動をするのはおススメしません。低血糖で具合が悪くなるリスクがあります。また、朝方は交感神経が優位となり血圧が上がりやすいので、血圧が高めの方はその時間帯は避けて行うのが良いでしょう。

参考文献・資料

1. NPO法人 熟年体育大学リサーチセンター
2. 健康長寿ネット


(編集後記)
今回は、「インターバル速歩の効果と実践方法」についてお伺いしました。
小分け運動OK!タイミングもいつでもOK!だと一気に運動のハードルが下がりますね。
「運動効果を得るには、1回30分以上継続しなければならない」という話を聞いた事があったのですが、そんな事は全く無く、早歩き1回3分にもこだわらずに「とにかく少しでも歩くチャンスがあればラッキー!という気持ちで楽しみながら実践してみてください」と仰っていました。
次回は最終回。「運動が苦手な方が継続するコツ」についてお伺いします。どうぞお楽しみに!


根本賢一 (ねもと けんいち)
松本大学人間健康学部長/教授/博士(医学)
中高齢者を中心とする全世代的な地域の健康づくりの実践的研究者。健康効果の高いと評判の「インターバル速歩」の共同研究者でもある。
トレーナーとして、アトランタオリンピックに参加するなど、これまで多数のプロスポーツ選手の体力コンディショニング指導。現在は、自治体や企業などで展開されている、健康づくり教室の企画や指導及び、医療法人横浜未来ヘルスケアシステム副理事長、熟年体育大学理事も務める。テレビ出演、著書多数。スポーツ医科学分野で活躍中。