コロナ禍の生活で健康意識が高まり、新たに運動を始めた方がいらっしゃる一方で、長引く巣籠生活で極端に活動量が減り、いわゆる「コロナ太り」に悩まれているビジネスパーソンの方も多いのではないでしょうか?

今回より、「本当に効果があるウォーキング!!インターバル速歩のススメ」と題しまして、松本大学人間健康学部長 根本賢一先生へのインタビュー連載が始まります!

運動不足にお悩みの方。忙しくてなかなか体をケアする時間を取れない方。運動は苦手なので出来るだけやりたくないと思っていらっしゃる方に是非読んで頂きたい内容です。

連載1回目は「何故運動不足を放置してはいけないのか?」についてお伺いしました。


編集部:
巣籠生活・リモートワーク等による運動不足について、現状をどの様に見ていらっしゃいますか?

根本先生:
実は私の身の回りでは、「コロナ禍で運動機会が減った」という方は少なく、皆さんウォーキング等をコロナ前と変わらず続けていらっしゃいます。某ホテルで毎月行っている「ウォーキング講座」も人気で、リピーターの方も多いですね。

ただ、以前は健康保険組合主催など団体でいらっしゃっていた方々が軒並みキャンセルとなり、今は個人で申し込まれています。その為、健康意識の高い方は続けているけれど、今まで「付き合いで参加していた」「会社のイベントだから参加していた」という方は運動機会が極端に減り「二極化」が起こっているのでは?と思います。スポーツジムの利用やサークル活動等も制限される中、1人だとなかなか続かないという方の運動不足は深刻化しているのではないでしょうか?

編集部:
運動不足を放置すると、どの様な悪影響があるのでしょうか?

根本先生:
運動の必要性は語りだしたらキリがない程あります。

運動不足によって心肺機能は低下し、持久性体力の低下や生活習慣病(特に、心臓血管系疾患やⅡ型糖尿病)のリスクが高まります。また、一日あたりの活動量が不足すると、骨格筋が縮んで小さくなり筋力が低下したり、体内に酸素や栄養を供給する役割となる「毛細血管」を失うことが報告されています。骨の健康を保つ為にも運動は必要不可欠で、ある実験では運動の刺激を加えた骨と、刺激を加えない骨にカルシウムを流して比較した所、運動の刺激を加えた骨の方がカルシウムの吸収率が高かったというデータがあります。食事だけ気を付けていても十分な効果は期待できないという事ですね。

さらに、運動を語る上で「メンタル面」への影響は見過ごせません。「POMS(ポムス)検査」という気分や感情の状態を測る心理検査があるのですが、その分析によると活動量が上がるとメンタルのコンディションも良くなる事が示されています。運動不足に陥っている方は、カラダだけでなくココロの状態にも注意を向ける必要があります。

編集部:
健康と運動は切っても切れない関係にありますね!
自分が運動不足かどうか?をチェックする方法などはありますか?

根本先生:
運動不足を実感していない、気づいていないという方は多くいらっしゃいます。
チェック方法は色々ありますが、例えば会社やマンションの階段を1Fから3Fまで一段飛ばしや速足で上がった時に息が切れる様だと、それはもう立派な運動不足です。車移動や、エレベーター・エスカレーター利用が習慣化していて、久しく階段を昇っていないという方も多いのではないでしょうか?是非身近な階段でチェックしてみてくださいね。

また、体力がついたか?落ちたか?をチェックする際、スマートフォンについている歩数計や活動量計等を活用して、「どれだけ少ない歩数で歩けるか?」をチェックするのも面白いですよ。

編集部:
どれだけ沢山歩いたか。ではなくですか?

根本先生:
例えばご自宅のまわりの散歩コースを、今日は30分かけて5,000歩で歩いたとします。これが半年後25分で4,200歩に減っていれば、1歩の歩幅が大きくなった事によって、歩行速度が上がった事が分かります。逆に、同じ道のりでも、35分かけ6,000歩要していれば体力が落ちてきている事が分かります。

歩行速度というのは、歩幅と歩調をかけたもので決まります。脚の筋力が豊かな方は歩幅が広いので、歩行速度が速くなり、同じ距離を歩くための歩数は少なくなるのです。

今日時点の時間と歩数を記録しておけば、「運動不足かも?体力が落ちてきたかも?」と思った時に、比較してチェックする事ができますよ!

編集部:
「歩数が多い程、沢山歩いていて良い」と思っていましたが、距離と時間も視野に入れる事で、同じ道のりを少ない歩数で歩く。という目標も出来るのですね!
運動不足が発覚した場合、まずは何から始めるのがおすすめでしょうか?

根本先生:
基本的に「好きな事」であれば何でもOKです。無理なく楽しく出来る事だと続けやすいと思います。
また、もし歩くのが好きであれば、ウォーキングは特別な道具も必要なく、いつでも・どこでも・誰でも出来るのでおススメです。外出が難しい日は、室内で足踏みをするだけでも良いと思います。TVや映画を見ながらその場足踏みであれば、すぐに楽しみながら出来ますよね!ただし、いきなり張り切って歩くのではなく、まずは姿勢を意識する事から始めてみましょう。体の準備が出来ていない状態でいきなりハードに歩くと、怪我につながります。正しい姿勢(※1)を意識し、座る・立つ・歩く事が出来たら、その姿勢を保ったまま楽なペースで歩いてみる。徐々に距離を伸ばしていき、体力に余裕が出てきたらペースに緩急もつけてみましょう。

(※1)正しい姿勢・・・横から見た際「耳の穴、肩、骨盤」が縦一直線に並ぶ姿勢

【ウォーキングの3ステップ】

  1. 正しい姿勢を意識しよう!
  2. 姿勢を保ったまま、楽なペースで歩いてみよう!
  3. 姿勢が身についたら、距離を伸ばしてみよう!

+α 体力に余裕が出てきたらペースに緩急もつけてみましょう!

編集部:
根本先生、ありがとうございました。
ランニングや筋トレだとハードルが高く、続ける自信がありませんでしたが「姿勢を意識するだけ」「歩くだけ」であれば今からすぐ始められそうです!


(編集後記)
いかがでしたか?階段で3Fまで速足or一段飛ばし。運動不足かも?と気になっていらっしゃる方は是非チェックしてみてくださいね!

次回のインタビューでは、根本先生が長年研究に携わっていらっしゃる【インターバル速歩】についてご紹介したいと思います。時間が無い方も、運動に苦手意識がある方でも気軽に始められて効果が期待出来る歩き方とは!?具体的な実践方法をお伝えしますので、是非お楽しみに!


根本賢一 (ねもと けんいち)
松本大学人間健康学部長/教授/博士(医学)
中高齢者を中心とする全世代的な地域の健康づくりの実践的研究者。健康効果の高いと評判の「インターバル速歩」の共同研究者でもある。
トレーナーとして、アトランタオリンピックに参加するなど、これまで多数のプロスポーツ選手の体力コンディショニング指導。現在は、自治体や企業などで展開されている、健康づくり教室の企画や指導及び、医療法人横浜未来ヘルスケアシステム副理事長、熟年体育大学理事も務める。テレビ出演、著書多数。スポーツ医科学分野で活躍中。