みなさんは、ご自身の日々の体調や健康を、どのようにチェックしているでしょうか?
朝起きたときのスッキリ度、体に痛みがあるかないか、朝の食欲、日中の眠気や睡眠時間、疲労度、などなど、様々なチェック方法があるかと思いますが、みなさんにぜひオススメしたいのが「便(うんち)」をチェックすることです。
ここ数年「腸活」「腸内環境」「腸脳相関」など、メディアで「腸」という言葉を見聞きすることが多いかと思いますが、腸の健康は体や心の健康、日々の体調や気分と密接な関わりがあります。
「全身の健康の9割は腸と関係している」と言われることもあるくらい重要な腸の状態を簡単に確認できるのが、便(うんち)の形や色、硬さ、においなどをチェックすることです。
本記事では、管理栄養士であり、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーでもある後藤優子氏に、「うんちで体調管理」というテーマで行ったインタビューをもとに、うんちのチェック方法から、うんちやおならとタンパク質の関係、更に腸内環境を改善するための食事方法についてご紹介していきます。
ぜひ日々の体調管理に役立てていただけますと幸いです。

【監修者】後藤優子
- 管理栄養士 / 日本スポーツ協会アスレティックトレーナー
管理栄養士・スポーツ栄養士として、アスリートへのトレーナー&栄養サポートやフィットネスクラブでの運動指導、専門学校での講師も行う。トレーナーとして、東福岡高校サッカー部や大同特殊鋼ハンドボール部、DENSOボート部などをサポート。栄養士としては国学院栃木高校野球部やオムロン女子ハンドボールチームへのセミナーや食事サポートの実績あり。
うんちから探る食事の見直し

編集部:腸を含めた消化器系による「消化・吸収」について、教えてください。
後藤さん:食べるものや食べたものを気にする方は多いですが、出すものには無頓着な方が多いなと感じます。うんちは食べたものによって、色、におい、硬さが反映されやすいので、出したものを観察する習慣をつけると良いと思います。
出したものがカラダに影響しているというよりも、食べたものがきちんと吸収されて、必要ないものが出ている、という視点を持って観察するといいですね。
例えば、カラダの水分が少ない状況だと、コロコロのうんちが出ます。スルッと気持ちよく出るうんちは、脂や食物繊維が十分に摂れているということがわかります。
私は、小麦粉の食事(パンや麺など)が続くと、非常にベタベタした状態になりがちです。そんなうんちが続いたら、小麦が続いたな、じゃあお米を食べようと、出したものから食べるものを考えることもできます。
編集部:ベタベタしたうんちは良くないのですか?
後藤さん:内視鏡で覗いたわけではなく、イメージでしかありませんが、便器に付着して水で流れにくかったりすると、自分の腸内にもたくさん残っているんじゃないかな、と感じます。うんちはいらないものが出ているのだけれど、それが体の中に残っているとしたら、普段の消化・吸収を阻害しているのではないかと心配になります。
編集部:宿便になっている?
後藤さん:はい。宿便という表現が正しいかはわかりませんが、残っているかもしれませんよね。気持ちよく食べ、気持ちよく過ごし、気持ちよく出すための食事ってなんだろうと考えた時に、何を食べたらカラダの調子が良いのか、を振り返る時間が必要だと思います。
うんち・おならとたんぱく質の関係

後藤さん:最近すごく多いのが、若い人で、痩せるよりも筋肉をしっかりつけたいと考える人の中に、肉を食べる機会が多かったり、プロテインを摂取したりが多い人に、おならが臭い、うんちが臭い・黒いなどの腸内環境の問題が起きています。
改善するためには、動物性のたんぱく質だけではなく、植物性のたんぱく質を摂ること、現実的な割合として「7:3」か「8:2」の割合で、植物性のたんぱく質も取り入れるといいと思います。
毎日牛乳を飲んでいる人だったら、それを豆乳にするとか、朝食にごはんを食べる人が、いつも生卵で流しているのであれば、それを納豆に変えるなどで、十分植物性の食品に変えることができます。
編集部:植物性たんぱく質というと、どんなものがありますか?
後藤さん:植物性たんぱく質は、大豆製品が中心となりますが、もちろんお米にも植物性たんぱく質は含まれていて、炭水化物を抜く=お米を抜く行為は、植物性のたんぱく質を減らしてしまっていることになるので、ご飯もしっかり食べたほうがいいとお伝えしています。
もちろん、大豆以外の豆類でもいいですよね。あずき、ソラマメ、えだまめ、ひよこ豆、レンズ豆等です。
編集部:加工品だと、豆腐、納豆、厚揚げ、おから等もありますね。
肉の脂とカロリーの関係

編集部:肉の脂とか部位とかで、注意することはありますか?
後藤さん:体重が気になる人に関しては、肉の部位は脂身の少ない部位を選択する必要はあると思いますが、脂身の多い部位を選んだとしたら、量に気をつければ特に問題はありません。食べてはいけないものはこの世に存在しないと思っていて、あくまでも頻度や量を調節することが重要だと考えます。
編集部:バラ肉の脂身が美味しい、それが全く無かったら残念ですし、バランスが大事なんですね!
後藤さん:アスリートになってくると、1日に3,000〜4,000kcal摂らなくてはいけない食事になり、脂をカットするとその分ボリュームが非常に多くなってしまいます。そうすると、胃の容量的に入らないという問題が起きてきます。それではエネルギーを回復させる機会の損失になってしまうので、少量でエネルギーの高いものを選ぶということも、時には大切な手段の一つになります。
うんちチェックの方法は?

編集部:うんちチェックの時間、やり方などについて教えてください。
後藤さん:時間は特に決まりはないです。トイレの形態として、和式トイレはしっかり観察できるけど、洋式トイレは水に浸かってしまい、よく観察できないので、用を足す前にトイレットペーパーを詰まらない程度に、紙の無駄にならない程度に敷いて、出した後に確認しましょう。
最近の自動で流れてしまうトイレの場合、自宅ならば手動に切り替えて、色、臭い、形…コロコロなのか、バナナ状なのか、ゆるいのか、を観察しましょう。
ゆるいなら体調が悪いというのもあります。下痢はストレスから来ていることもあります。便秘と下痢を交互に繰り返す場合、何かしら腸に問題があるかもしれないので、気になる方は病院を受診したほうがいいですね。
下痢であることは、うまく消化吸収ができていない可能性が高いです。
編集部:下痢が多い人は食事と関係がありますか?
後藤さん:食事をする時に、同時に流し込むように水を飲んでしまう人。またはストレス性のものであるとか、もともと腸があまり強くない場合もあります。どれがとは言えないですが、油が多すぎる食事でも下痢になる場合もあります。
おならと腸内環境の関係

編集部:おならのにおいについて、今一度お話しを聞かせてください。
後藤さん:動物性のたんぱく質が多い方はどうしてもにおいがきつくなりがちです。そういう方の話を聞いてみると、肉の摂取が多い、乳製品が多い、プロテインをすごく飲んでいる。おならのにおいがよくないのは、腸内環境がよくない証拠なのです。
おなら=ガス。おならの多い少ないは食べ物にもよります。果糖(くだものに多く含まれる)は腸内でガスを発生しやすいですし、急いで食べてしまう方や、熱いものが苦手な方は、一緒に空気を食べてしまうので、ガスが溜まりやすいというのもあります。
腸内環境は、いわゆる善玉菌と悪玉菌の他に「日和見菌(ひよりみきん)といって、体調の良し悪しによって善玉菌にも悪玉菌にもなるような菌が存在していて、においのキツイ人は日和見菌が悪玉菌となってしまっていて、悪玉菌の量が多くなっていると言われています。
腸内環境をよくする食べ物

編集部:悪玉菌を減らして、善玉菌を増やしてくれる食べ物とはどんなものですか?
後藤さん:菌自体を増やす、取り入れるということになると、発酵食品ですね。菌のエサになるものが食物繊維です。発酵食品や食物繊維を多く含む野菜やきのこ類、海藻類をしっかり毎食とるのが望ましいですね。
手に入れやすい発酵食品は、納豆、キムチ、ぬかづけ、チーズ、ヨーグルト、味噌などです。
発酵食品を食物繊維と一緒に食べる方法として、味噌きゅうり、みたいにすれば、気軽に両方とれますね。冷やしうどんなら、納豆とキムチと海藻におくらをプラスして、ねばねば攻めなんてこともできる。冬場なら、いも、だいこん、にんじん、ごぼう、根菜類の味噌汁がおすすめです。
素材の話でいうと、たんぱく質の話で出てきた豆類には食物繊維が含まれているので、炊き込みごはんにしてもいいですね。
編集部:お話、ありがとうございました。
編集後記
本記事では「うんちで体調管理」をテーマとして、食べたものとうんちの関係やうんちのチェック方法、うんちやおならと腸の関係、更には腸内環境を整える食事法についてもお聞きしました。
後藤さんのお話から、今まで以上にキノコや食物繊維を多く含む食品を摂り入れること、特に比較的簡単に手に入るものが多い発酵食品を手間なく摂り入れていこうと思いました。
また、普段の便をたった数秒観察するだけでも、今の体調や腸の健康を知ることができ、それによって何を食べるべきかがわかるというのは、とても簡単で有効なコンディショニング法だなとも感じました。
ぜひ、すぐ水で流してしまうのではなく、ちょっとだけうんちを観察してみてはいかがでしょうか。