日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、管理栄養士、スポーツ栄養士の後藤 優子さんに編集部がインタビューしました。

うんちから探る食事の見直し

編集部:
消化吸収について、お話しください。

後藤さん:
食べたものを気にする方は多いけれど、出すものに無頓着な方が多いのです。うんちは食べたものによって、色、におい、硬さが反映されやすいので、出したものを観察する習慣をつけましょう。

出したものがからだに影響しているというよりも、食べたものがきちんと吸収されて必要ないものが出ているという視点を持って観察するといいですね。

例えば、からだの水分が少ない状況だとコロコロのうんちが出ます。するっと気持ちよく出るうんちは油や食物繊維が十分に摂れていることがわかります。

私は、小麦粉の食事(パンや麺など)が続くと、非常にベタベタした状態になりがちです。そんなうんちが続いたら、小麦が続いたな、じゃあお米を食べようと、出したものから食べるものを考えることもできますね。

編集部:
ベタベタしたうんちは良くないのですか?

後藤さん:
内視鏡で覗いたわけではなく、イメージでしかありませんが、便器について流れにくかったりすると、自分の腸内にもたくさん残っているんじゃないか。うんちはいらないものが出ているのだけれど、それが体の中に残っているとしたら、普段の消化・吸収を阻害しているのではないかと心配になります。

編集部:
宿便になっている?

後藤さん:
はい。宿便という表現が正しいかはわかりませんが、残っているかもしれませんよね。気持ちよく食べ、気持ちよく過ごし、気持ちよく出すための食事ってなんだろうと考えた時に、何を食べたらからだの調子がいいのか振り返る時間が必要ですね。

うんち・おならとたんぱく質の関係

後藤さん:
最近すごく多いのが、若い人で、痩せるよりも筋肉をしっかりつけたいと考える人の中に、肉を食べる機会が多かったり、プロテインを摂取したりが多い人に、おならが臭い、うんちが臭い・黒いなどの腸内環境の問題が起きています。

改善するためには、動物性のたんぱく質だけでなく、植物性のたんぱく質を摂ること、現実的な割合として7:3か8:2の割合で、植物性を取り入れるといいと思います。

毎日、牛乳を飲んでいる人だったら、それを豆乳にするとか、朝食にごはんを食べる人が、いつも生卵で流しているのであれば、それを納豆に変えるなどで、十分植物性の食品に変えることができます。

編集部:
植物性たんぱく質というと、どんなものがありますか?

後藤さん:
植物性たんぱく質は大豆製品が中心となりますが、もちろんお米にもたんぱく質は含まれていて、炭水化物を抜く=お米を抜く行為は、植物性のたんぱく質を減らしてしまっていることになるので、ご飯をしっかり食べたほうがいいとお伝えしています。

もちろん、大豆以外の豆類でもいいですよね。あずき、ソラマメ、えだまめ、ひよこ豆、レンズ豆等です。

編集部:
加工品だと、豆腐、納豆、厚揚げ、おから等もありますね。

肉の脂とカロリーの関係

編集部:
肉の脂とか部位とかで、注意することはありますか?

後藤さん:
体重が気になる人に関しては、肉の部位は脂身の少ない部位を選択する必要はあると思いますが、脂身の多い部位を選んだとしたら、量に気をつけてください。食べてはいけないものは、この世に存在しないと思っていて、あくまでも頻度や量を調節することが重要だと考えます。

編集部:
バラ肉の脂身が美味しい、それが全く無かったら残念ですし、バランスが大事なんですね!

後藤さん:
アスリートになってくると、1日に3,000〜4,000kcalとらなくてはいけない食事になり、油をカットするとその分ボリュームが非常に多くなってしまう。そうすると、胃の容量的に入らないとう問題が起きてくる。それではエネルギーを回復させる機会の損失になってしまうので、少量でエネルギーの高いものを選ぶということも大切な手段の一つになります。

うんちチェックの方法は?

編集部:
うんちチェックの時間、やり方などについて教えてください。

後藤さん:
時間は特に決まりはないです。トイレの形態として、和式トイレはしっかり観察できるけど、洋式トイレは水に浸かってしまい、よく観察できないので、用を足す前にトイレットペーパーを詰まらない程度に、紙の無駄にならない程度に敷いて、出した後に確認しましょう。

最近の自動で流れてしまうトイレの場合、自宅ならば手動に切り替えて、色、臭い、形…コロコロなのか、バナナ状なのか、ゆるいのかを観察しましょう。

ゆるいなら体調が悪いというのもあります。下痢はストレスから来ていることもあります。便秘と下痢を交互に繰り返す場合、何かしら腸に問題があるかもしれないので、気になる方は病院を受診したほうがいいですね。

下痢であることは、うまく消化吸収ができていない可能性が高いです。

編集部:
下痢が多い人は食事と関係がありますか?

後藤さん:
食事をする時に、同時に流し込むように水を飲んでしまう人。またはストレス性のものであるとか、もともと腸があまり強くない場合もある。どれがとは言えないけど、油が多すぎる食事でも下痢になる場合もあります。

おならと腸内環境の関係

編集部:
おならのにおいについて、今一度お話しを聞かせてください。

後藤さん:
動物性のたんぱく質が多い方はどうしてもにおいがきつくなりがちです。そういう方の話を聞いてみると、肉の摂取が多い、乳製品が多い、プロテインをすごく飲んでいる。おならのにおいがよくないのは、腸内環境がよくない証拠なのです。

おなら=ガス。おならの多い少ないは食べ物にもよります。果糖(くだものに多く含まれる)は腸内でガスを発生しやすいですし、急いで食べてしまう方や、熱いものが苦手な方は、一緒に空気を食べてしまうので、ガスが溜まりやすいというのもあります。

腸内環境は、いわゆる善玉菌、悪玉菌、日和見菌といって、体調の良し悪しによってどちらかの味方になるような菌が存在していて、においのキツイ人は悪玉菌の量が多くなっていると言われています。

腸内環境をよくする食べ物

編集部:
悪玉菌を減らして、善玉菌を増やしてくれる食べ物とはどんなものですか?

後藤さん:
菌自体を増やす、取り入れるということになると、発酵食品ですね。菌のエサになるものが食物繊維。発酵食品や食物繊維を多く含む野菜やきのこ類、海藻類をしっかり毎食とるのが望ましいですね。

手に入れやすい発酵食品は、納豆、キムチ、ぬかづけ、チーズ、ヨーグルト、味噌などです。

発酵食品を食物繊維と一緒に食べる方法として、味噌きゅうり、みたいにすれば、気軽に両方とれますね。冷やしうどんなら、納豆とキムチと海藻におくらをプラスして、ねばねば攻めなんてこともできる。冬場なら、いも、だいこん、にんじん、ごぼう、根菜類の味噌汁がおすすめです。

素材の話でいうと、たんぱく質の話で出てきた豆類には食物繊維が含まれているので、炊き込みごはんにしてもいいですね。

編集部:
お話、ありがとうございました。 最近は、在宅勤務の人が増えて、運動不足を感じている人も多いようです。
後藤さんのお話から、今まで以上にキノコや食物繊維を意識してローカロリーの食品を取り入れ、また発酵食品は簡単に手に入るものが多いので手間なく取り入れ、無理なく体調管理に心掛けてみるのはいかがでしょう。


後藤 優子

後藤 優子
福岡県生まれ
フィットネスクラブでの運動指導、アスリートトレーナー&栄養サポート、専門学校講師
■資格:日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、管理栄養士、スポーツ栄養士
■サポート歴:
[トレーナー]東福岡高校サッカー部、中京大学水泳部、大同特殊鋼ハンドボール部、DENSOボート部、名経大高蔵高校テニス部、女子空手選手パーソナルトレーナー
[栄養士]国学院栃木高校野球部セミナー、東京都少年野球連盟セミナー、競泳選手食事サポート、オムロン女子ハンドボール食事サポート、高齢者フレイル予防セミナー