長時間のデスクワークやスマートフォンの使用により、現代人に増えている悩みの一つが “スマホ首”とも呼ばれる「ストレートネック」です。

ストレートネックとは、首の骨(=頚椎)の自然なカーブが失われた状態であり、頭痛や肩こり、さらには背中の痛みなど、さまざまな不調を引き起こす可能性があります。

首のエリアには多くの神経が通っていたり、特殊な感覚器官が多く存在しているため、正しくない方法で治療や運動を行ってしまうと、首の痛みや不調を悪化させてしまうこともあります。

ですが、正しい方法で、適切なプロセスを踏んで運動や治療を行っていけば、ストレートネックは改善が可能です。

頚椎の自然なカーブを取り戻すための効果的な4つのステップをご紹介するこの記事では、まずストレートネックを引き起こす原因をお伝えし、その後ストレートネック改善のためのストレッチやエクササイズを写真つきでお伝えします。

ストレートネックによって引き起こされている可能性のある様々な不調を軽減し、ワークパフォーマンスの向上とともに、より快適な毎日を送るための実践的なアドバイスを、科学的根拠に基づいて紹介していきます。

ストレートネックとは?

頚椎も含めた背骨は、約4〜6キロもある頭を効率的に(=最小限のエネルギーを使って)支えるとともに、その重さに負けずに直立での二足歩行を行うために、まっすぐではなくS字のカーブを描いています1

「首の骨=頚椎」は7個あり、この7個の骨が「前弯」を作っています。

この頚椎の前弯によって重い頭を効率的に支えているのですが、この前弯がなくなってしまうと、重い頭を支える力が弱くなってしまい、周りにある首や肩の筋肉が必要以上に働かないと支えられなくなってしまいます。

その結果、寝ているとき以外は、常に頭を支えるためにたくさんの筋肉群が働き続けなくてはならず、首凝りや肩凝り、背中の痛み、頭痛やめまいなど、様々な不調を引き起こしてしまう可能性があります。

ストレートネックになると首が痛くなるわけではない

実は、ストレートネックと首の痛みについて、因果関係を示すエビデンスは現状ありません。つまり、ストレートネックだけど首に痛みはない、という人もたくさんいるということになります。

ですが、多くの研究で「相関性はある」ことが示されています。

2001年に発表された、ストレートネックと首の痛みの関係に関する研究2では、ストレートネックと首の痛みにはポジティブな関連性(=a trend for positive relation)が見られることを報告しています。

また、ストレートネックや、逆に頚椎の過度な前弯を持つ人は、正しい頚椎の前弯を持つ人と比較すると、約3.3倍程度、慢性的な首の痛みにつながる可能性が高くなることを示すデータもあります3

すなわち、ストレートネックを改善すると首の痛みがなくなる、とは必ずしも言えませんが、現代人は “首の健康” を失いやすい生活をしているため、ストレートネックも含めた首の健康の改善によって、首の痛みレベルが低下したり、今以上の痛みを引き起こさないための予防になる、と言うことができます。

ストレートネックになってしまう原因

長時間のデスクワークやパソコン作業、スマホ操作などにより、頭・顔が前方に出た姿勢や、アゴが前方に出た姿勢を続けていると、下記2つのようなことが起こります。

1)首のインナーマッスルとアウターマッスルのアンバランス

「フォワードヘッド(Forward Head)」と呼ばれる頭やアゴが前方に出た姿勢や、猫背・巻き肩のようないわゆる不良姿勢を続けていると、骨や関節の位置を正しい場所にキープする働きのあるインナーマッスル(=深層にある筋肉)がうまく働かなくなったり、弱くなってしまいます。

また、インナーマッスルが本来の働きをしてくれないと、骨や関節の位置を正しい場所にキープするために、アウターマッスル(=表層にある筋肉)が働き始めます。

アウターマッスルは「力を発揮する(モノを持ち上げる、ダッシュする、何かを押す、何かを引く、など)」ための筋肉群であり、骨や関節を正しい位置に保つという役割はありません。

よって、力を発揮するという役割を果たしながら、骨や関節の位置を良い場所に保つという役割が加わることになり、結果働き過ぎとなって、凝りや硬さが発生してしまいます。

2)胸椎の硬さやカーブの変化

首の骨も含めた「背骨(専門的には「脊柱」と呼びます)」は、頭からお尻まで伸びており、小さな骨(=椎骨)が積み重なってできています。

この背骨は、どこか一部分の位置やカーブが変化すると、それに影響を受けて背骨の他の場所の位置やカーブも変化してしまいます。

例えば、頭が前に出ると(=ストレートネックの状態になると)、その影響を受けて腰が反りやすくなります。反り腰や慢性的な腰痛をお持ちの方は、もしかしたらストレートネックが根本の原因である可能性もあります。

また、ストレートネックの状態は、背中が過度に丸まった姿勢になりやすくなることから、胸の位置にある背骨(=胸椎)が過度に後弯してしまい、それによって動きが悪くなってしまったりします。

特に、頚椎につながる胸椎の動きの悪化は、頚椎の動きの悪化や働きの低下に大きく作用するため、胸椎の硬さをほぐしたり、胸椎の自然なカーブ(=後弯)を取り戻すことは、ストレートネックを改善する上で非常に重要となります。

ストレートネックを改善するための4ステップ

頭が前に出ていて、顎が前に出ている状態だから、シンプルに頭と顎をグッと後ろに引けば良いかというと、ストレートネックはそんなシンプルに改善するものではありません。

使い過ぎとなっている筋肉をほぐして、うまく使えていない筋肉を使えるように教育してあげることや、頭の正しいポジションを脳に改めて教育するために「前庭感覚」という感覚器官にもアプローチしていくことで、安全に効果的にストレートネックを改善していくことが可能になります。

ぜひ1つ1つ丁寧にプロセスを踏みながら、できるだけ毎日習慣的に、下記で紹介するエクササイズを順番に行ってみてください。

1)使いすぎのアウターマッスルをほぐす

首や頭の位置を安定させるために働くべきインナーマッスルが働かないことで過度に働いてしまっている、アウターマッスルをほぐしていきましょう。

下で紹介している強力な筋肉群の過度な緊張は頭を前方向に引っ張るため、これらを緩めないと頭の位置は良いポジションに来づらくなってしまうとともに、首を安定させる小さいインナーマッスルがうまく働くことができません。

1−1)小胸筋リリース

小胸筋は、大胸筋の下(深層側)にある小さめの筋肉ですが、とても強力な筋肉です(上画像参照)。

猫背姿勢のような「肩が前に出る姿勢」をずっととっていたり、浅く速い呼吸をしていると、この小胸筋が硬くなり、不良姿勢が続くことで胸椎の硬さや肩甲骨の動きの低下にもつながります。

小胸筋を緩めることで、肩が正しい位置に戻り、肩甲骨もうまく動くようになって、胸椎の正しいカーブを取り戻せるようになります。

  1. 鎖骨を胸側から肩先へ向かって触っていき、肩先まできたら、そこから指2〜3本分程度戻った場所にある骨の出っ張り(=烏口突起)を触ります。
  2. その骨のすぐ下部分を指先3本(人差し指〜薬指)で優しく左右にさすります。
  3. 左右60秒ずつ行います。

強く押しながらさすらなくても筋肉はリラックスするため、優しく行いましょう。

1−2)大胸筋ストレッチ(90-90)

大胸筋は、胸を広範囲で覆う非常に強力なアウターマッスルです。大胸筋の硬さは、猫背姿勢や巻き肩の姿勢をつくり、胸椎の硬さや肩甲骨の動きの悪さにつながります。

  1. 横向きになり、股関節と膝をどちらも90度に曲げて、腕を肩の高さで伸ばします。
  2. 鼻から息を吸い、吐きながら胸を開くようにして腕を開きます。
  3. 気持ちよく胸がストレッチされる場所で腕を止め、その状態で60秒程度キープします。
  4. ストレッチしている最中は「鼻から息を吸う、口から息を吐く、3〜5秒程度息を止める」を繰り返します。

ストレッチ中、上に乗っている膝が下の膝から離れないように注意しましょう。

また、胸を開いている側の腕は、床につける必要はありません。胸のストレッチ感を感じながら、息を吸ったときに胸が広がるのを感じられるとより良いです。

1−3)広背筋ストレッチ

背中〜腰に広がる「広背筋」も非常に強力なアウターマッスルであり、広背筋の使い過ぎも肩を前方に引っ張り、肩甲骨も前側に移動して顔が前に出やすくなり、ストレートネックを作り出してしまいます。

  1. 四つ這い姿勢(肩の真下に手首、股関節の真下に膝を置いた姿勢)となり、右手の前に左手をつきます。
  2. 両手が床から離れないようにしながら、ゆっくりお尻を後ろに引いていき、左側の脇の下〜脇腹あたりのストレッチ感を感じます。
  3. 左右60秒程度ずつ行いましょう。

ストレッチをしているときは、大胸筋ストレッチと同様に「鼻から息を吸う、口から息を吐く、息を吐ききったら3〜5秒息を止める」を繰り返します。

息を吸ったときに、脇腹や背中に空気が入って広がっていくのを感じましょう。

2)前庭感覚を鍛える

ストレートネックの状態である人、もしくは首の凝りがひどい人や首に痛みがある人は、首を動かした際の細かい感覚がうまく脳に伝わっていないことが多い、と言われています。

「前庭感覚」と呼ばれる感覚器を鍛えることで、首の位置感覚が正確になり、動かした際の首や頭の状態を脳がしっかりと理解できるようになるため、首まわりの筋肉の過緊張が取れて、凝りがほぐれたり、痛みの改善が期待できます。

2−1)VOR(左右)

眼精疲労改善まとめ|ビジネスパーソンの目の疲れを取る方法5選」の記事でも紹介した、目のストレッチとも呼ばれる前庭覚を鍛えるエクササイズです。

一点を見つめ続けることになるため、首や肩が緊張しやすいですが、できるだけリラックスして行いましょう。

  1. 肘を伸ばして、親指の爪が目の高さにくるように立てます。
  2. 親指の爪の先をじーっと見続けます。
  3. 親指の爪の先を見たまま、顔をゆっくり左右に回転させます。
  4. 10往復繰り返します。

顔を大きく左右に動かしすぎると親指の爪の先から視線が外れてしまうため、見続けられる範囲で行います。

座ったままでもできるので、仕事の合間等にも行うことで、目の疲れの改善にもつながります。

2−2)VOR(インフィニティ)

VORと同様、一点を見つめながら顔を動かすエクササイズですが、インフィニティは「∞(横の8の字)」を描くようにして顔を動かすことで、眼球が左右だけではなく上下や斜めなどにも動きます。

頭を様々な方向に動かすことで、首の様々な筋肉に刺激が入るため、前庭覚を鍛えるだけでなく、首の安定性向上にもつながっていきます。

  1. 親指の爪(もしくは何か目標物)を目の高さにセットします。
  2. 目標物を見たまま、横の8の字(∞)を描くように顔を動かします。
  3. 時計回りで5回描いたら、反時計回りも5回行いましょう。

慣れてきたら、縦の8の字を描くように動かすのもやってみましょう。横の8の字よりも上下に動く範囲が広がることで、また違った刺激が首の筋肉に入っていきます。

3)頚椎を正しい位置にキープするインナーマッスルを鍛える

頭や首を安定させるために過度に使用していたアウターマッスルが緩み、頭や首の位置を正確に捉えるための感覚器を刺激したことで、首周りの無駄な過緊張がとれて、インナーマッスルが働きやすい状態となっているはずです。

この状態で、頭や首の位置を正しい位置にキープする役割のあるインナーマッスルをしっかりと働かせるエクササイズを行って、頚椎の正しいカーブを作り、ストレートネックを改善していきます。

3−1)首の前側のインナーマッスルエクササイズ

頚椎の1番上(=C1; 環椎とも呼びます)の骨と、頭の骨(=後頭骨)をつなぐ小さな筋肉を動かして鍛えることで、頭や顎が前方に出てしまうことを防ぎます。

1番上の頚椎は、鼻と口の間あたりの高さに位置するため(上画像参照)、鼻と口の間の部分を起点にして少しだけ後ろ方向に引き、少しだけうなづく、といったイメージで行うと、使いたいインナーマッスルを動かして鍛えることができます。

すごく小さな筋肉であり、動きも小さいため、”筋肉を使っている” という感覚はありませんが、根気よく行うことでストレートネックが改善されていきますので、ぜひ継続して行ってみてください。

  1. 仰向けになり、膝を立てて、足は腰幅程度に開いて安定させます。
  2. 鼻と口の間の部分を後方に引いて(=仰向けの状態だと地面側に引く)、後頭部が頭頂側に引っ張られるようなイメージ(=首が伸びるイメージ)で、少しだけうなづくように顎を引き、そこで5〜10秒キープします。
  3. リラックスしてまた同様に動かす、を10回繰り返しましょう。

「頭を後方に引く」という動きになりますが、後頭部で地面を押すほど大きく引いたり、力を込めてしまうのはNGです。小さな筋肉を優しく使うような感覚で行います。

また、胸鎖乳突筋など、首のアウターマッスルにグッと力が入ってしまうのもNGです。くれぐれも、筋肉を使っているという感覚はないのが正解のため、頑張りすぎずに、これで合ってるのかな?と不安にもなるかもしれませんが、それくらいの動きの小ささと力の込め方で合ってますので、信じて続けてみてください。

3−2)首の後ろ側のインナーマッスルエクササイズ

首の後ろ側を支えるインナーマッスルも鍛えることで、頚椎のきれいな前弯カーブを作って、ストレートネックを改善していきます。

  1. 四つ這い姿勢(肩の真下に手首、股関節の真下に膝を置いた姿勢)となり、首をリラックスします。
  2. 後頭部を天井に押し上げるようにして、頭を良い位置にセットして5秒キープします。
  3. 5秒キープしてリラックス、を10回程度繰り返しましょう。

肩がすくまないように注意するとともに、このエクササイズもインナーマッスルをしっかりと使いたいため、頑張りすぎず、頭〜背中にかけてが一直線になる位置へ持っていく、というイメージで行いましょう。

4)肩甲骨の位置と頚椎の位置を整える

最後に、首周りの様々な筋肉を統合して動かして、全体の位置を整えます。

  1. うつ伏せになり、肘が目の高さにくるように、両手をハの字にして頭の上の位置にセットします。足は腰幅よりも広めにセットします。
  2. 肘で地面を軽く押すようにしながら、頭を5センチ程度持ち上げて、5秒キープします。

足を少し大きめに左右に広げることで腰が反りづらくなるため、頚椎や胸椎を使いやすくなります。

これができたら、次は頭を回旋していきます。

  1. 持ち上げてキープして下ろす、を10回行ったら、次は頭を持ち上げた状態で、左右を交互に見るようにして回旋します。こちらも10回行いましょう。

頭を持ち上げた状態で左右を見る際は、棒に刺さったお団子をイメージして、頭が棒に刺さっている状態で棒を軸に回すイメージを持って回旋させましょう。

まとめ

ストレートネックについての基本知識から、ストレートネックになってしまう要因、更にストレートネック改善のためのストレッチやエクササイズを4ステップに分けてご紹介しました。

頚椎のカーブの変化は、その下に続く胸椎や腰椎のカーブにも影響を与えます。

ストレートネックの改善は、首の凝りや痛みだけでなく、猫背や巻き肩といった不良姿勢や慢性的な腰痛などの改善につながる可能性があります。

1〜2ヶ月程度継続することで効果が出てくるはずなので、根気良く継続してみてください。

参考文献・資料

  1. 保健管理センターだより 兵庫医科大学. Accessed March 13, 2024. https://www.hyo-med.ac.jp/department/health-center/news/center_news/center2019autumn.pdf
  2. Ariëns GA, Bongers PM, Douwes M, Miedema MC, Hoogendoorn WE, van der Wal G, et al. Are neck flexion, neck rotation, and sitting at work risk factors for neck pain? Results of a prospective cohort study. Occup Environ Med. 2001;58(3):200-207.
  3. Weerakoon TCS, Dissanayake PH, Weerasekera MM, Jayakody S, Abeywickrama BN, Yasawardene SG. Chronic neck pain and its association with the angle of the cervical curve. Sri Lanka Anatomy Journal. 2022;6(2):48-59.DOI: https://doi.org/10.4038/slaj.v6i2.163