パソコンやスマートフォン、タブレット等の長時間使用は、現代のビジネスパーソンにとって避けられない現実です。しかし、これが原因で多くの人が眼精疲労に悩まされています。

目の疲れはただ不快なだけでなく、ワークパフォーマンスの低下や仕事の質自体にも影響を及ぼすことがあります。

本記事では、ビジネスパーソンが日常的に実践できる、眼精疲労を改善するための5つの方法をご紹介します。

仕事の合間や休憩中、寝る前などに行うことで、目の疲れを効果的に解消することができるはずです。

快適なビジネスライフを送るためにも、ぜひ1つでも良いので実践してみてください。

眼精疲労とは?

日本眼科学会1によれば、眼精疲労とは「目を使う作業を長時間継続することにより、目の症状(かすみ目、目の疲れ、光の過敏など)や全身症状(肩こり、頭痛、吐き気など)が現れ、休息をとっても十分に回復できない状態」をさします。

目の疲れを感じている方はもちろんですが、肩こりや頭痛といった症状がある方で、首や肩のマッサージやストレッチを行ってもなかなか改善しないと感じている方は、もしかすると眼精疲労が肩こり・頭痛の原因である可能性があります。

眼精疲労と姿勢の関係

肩こりや頭痛、吐き気といった症状が眼精疲労からきている可能性があるという話と同様に、もしあなたが「姿勢の悪さ」に悩んでいる場合、その不良姿勢も目の疲れが原因である可能性があります。

パソコンやスマートフォンの長時間の使用により、現代人は「同じ距離を見ている時間」がとても長い生活をしています。

私たちは、近い距離にあるものでも遠い距離にあるものでも、目の機能によって「見たいものにピント(焦点)を合わせる」ことができます。

この「ピントを合わせる」という機能は「内眼筋(ないがんきん)」と呼ばれる筋肉が行ってくれているのですが、同じ距離ばかり(特に近距離)を見ていると、内眼筋の機能(正確には毛様体筋と水晶体の機能)が低下してしまい、見たい距離にピントが合わなくなっていきます。

目の機能によってピントを合わせられなくなると、ピントを合わせるために「顔をモニターやデバイスに近づける」ということが起こるため、結果として顔が前に出た不良姿勢(猫背やストレートネック、フォワードヘッド姿勢など)となってしまいます。

「デスクワークをしているとすぐ姿勢が悪くなってしまう」「ストレッチをしたり体幹を鍛えたりしてるけど姿勢が良くならない」という方は、もしかすると、不良姿勢の原因は目の機能低下の可能性があります。

眼精疲労改善のための目の疲れケア5選

眼精疲労の改善は目の疲れや目の機能低下の改善・向上だけではなく、肩こりや頭痛といった不調や姿勢の改善にもつながる可能性があります。

ではここから具体的に、眼精疲労を改善するための目のケア方法をお伝えしていきます。

どれも仕事の合間はもちろん、ちょっとしたスキマ時間に手軽に行える方法ばかりですので、ぜひ一度お試しいただき、気に入ったものを1つだけでも習慣的に行って不調を改善していきましょう。

1)寄り目エクササイズ(輻輳【ふくそう】)

ピント調節機能の改善・向上におすすめのエクササイズがこの「寄り目エクササイズ」になります(=「寄り目」のことを専門用語では「輻輳」と言います)。

目の機能によってピント調節がスムーズに行えるようになると、顔を前後に動かす必要がなくなるため、良い姿勢をキープしやすくなります。

また、ピント調節機能が低下していると、ピントが合う場所にずっと頭や身体を固定しようとする(=ずっとピントが合う同じ距離で見続けようとする)ため、全身の緊張度が高くなります。

慢性的な全身の緊張は肩こりや腰痛といった慢性痛をはじめ多くの不調を引き起こすため、ピント調節機能の回復はこの全身緊張を緩和させ、よりリラックスした状態でデスクワークに取り組むことができるようになります。

寄り目エクササイズのやり方は以下の通りです。

  1. 肘をできるだけ伸ばして人差し指を立てます。
  2. 指の先をじーっと見続けます。
  3. 指の先にピントを合わせたまま、ゆっくり指を鼻先に近づけていきます。
  4. ピントがズレてきたらそこで指を止め、ゆっくり指を遠ざけていきます。
  5. 10往復繰り返します。

10往復を1セットとして、1日に数セット行えると良いでしょう。

2)凝視エクササイズ(VOR【ヴィ・オー・アール】)

「目のストレッチ」とも言われるこのエクササイズは、目が正しく機能するためのサポート機能である「前庭機能(ぜんていきのう)」を鍛えるエクササイズです。

寄り目エクササイズと合わせて行うことで、目の機能の改善・向上が期待できます。どちらも座ったまま仕事の合間に手軽に行えるものなのでぜひやってみてください(一点を見つめた状態で頭を回旋することを専門用語で「VOR」と言います)。

  1. 肘を伸ばして親指を立てます。
  2. 親指の先をじーっと見続けます。
  3. 親指の先を見たまま顔をゆっくり左右に回転させます。
  4. 10往復繰り返します。

「凝視」という名前がついていますが、一点を見つめる際はなるべく全身が緊張しないようにリラックスした状態で行うようにしましょう。

また、体調が悪かったり、乗り物酔いをしやすい方は、このエクササイズ中に気分が悪くなったり、めまいのような症状が出ることがありますので、決して無理はしないようにしましょう。

3)20-20-20ルール

低下してしまった目の機能の改善や向上を目的としたエクササイズを行うと同時に、目の疲れ自体を防ぐ習慣をつけることも大切です。

アメリカ眼科学会(American Academy of Opthalmology)は、パソコンのモニターやスマートフォンのディスプレイを長時間見続けることによって引き起こされる目の疲れを予防・軽減するためのルールとして「20-20-20ルール」の使用を推奨しています2

20-20-20ルールとは「20分おきに、20フィート遠くを、20秒間見る」というルールになります(20フィート=約6メートル)。


アメリカ検眼協会より(https://www.aoa.org/AOA/Images/Patients/Eye%20Conditions/20-20-20-rule.pdf

同じ距離を長時間見続けることによってピント調節機能の低下が起きたり、モニターやディスプレイを見続けることによってかすみ目やドライアイといった目の症状が起こりやすくなるため、定期的に遠くを見る時間を作ることによって、これらの現象を防ぐことができます。

たった20秒で良いので、一度デスクワークをやめて立ち上がり、窓から景色を見て休憩の時間をとるだけで、様々な不調が軽減される可能性があります。

4)眼精疲労に効くツボ3選

「神経が集まる場所」とも呼ばれるツボを刺激することで、神経の通りがよくなり、身体の機能を回復することができると言われています3

また、ツボ押しは身体がもともと持っている自然治癒力を高めるとも言われているため、ちょっとしたスキマ時間で行うセルフケアとしても非常に有効です。

今回は眼精疲労に効くツボを3つご紹介します。

A)睛明【せいめい】

目の内側、目頭のやや上にあるくぼみにあるのが「睛明」と呼ばれるツボです。

痛みがない程度に、くぼみの奥に親指を押し込むようにして、くぼみの奥の骨を押し上げるようなイメージで、左右同時に押していきます。

「3〜5秒程度押して、数秒離して休憩」を5〜6回程度繰り返しましょう。

目の周りの筋肉がほぐれることで視界がクリアになるとともに、目の疲れやかすみ目、充血など、あらゆる目の症状に効果があると言われています。

B)攅竹【さんちく】

左右の眉毛の眉頭にある、少しだけくぼんだ部分にあるのが「攅竹」と呼ばれるツボです。

眼輪筋(がんりんきん)と呼ばれる目の周りにある筋肉がほぐれることで、眼精疲労が軽減されていきます。

C)四白【しはく】

瞳の中央の真下から、指一本分下の位置にあるのが「四白」と呼ばれるツボです。

触ってみると少しくぼんでいるので、そこをグーッと押していきましょう。

目にまつわる症状の軽減とともに、目のクマの解消や、頬の血行が促進されることによって顔の筋肉が和らぐという効果も期待できます。

5)パーミングマッサージ

目の疲れ対策として、もしくはマインドフルネスの一環として、ヨガの中でも行われる「パーミング」は、疲れ目におすすめのケア方法です。

手の平で目を覆うことで視界を真っ暗にして、目の神経を休めるとともに、ぐるぐると眼球を動かすことで目の周りの筋肉をほぐしていきます。

  1. 両手を合わせてこすり合わせ、手の平を温めます。
  2. 肘をつく場所があれば両肘をついて腕を安定させ、左右の手の平で、目に触れないようにしながら目を覆います(なるべく光が入らないように)。
  3. 手の平の中で目を開け、暗闇を見ながら眼球で円を描くように、ゆっくりとぐるぐる回します。
  4. 時計回り、反時計回り10回ずつ回します。

まとめ

眼精疲労とはどういったものなのか、更に目の疲れによって不良姿勢が生まれる理由をお伝えし、眼精疲労改善のためのケア方法を5つご紹介しました。

どれも今日からすぐに導入できるものばかりだと思いますので、自分にとって負担が少ないものや、一度やってみて効果を感じられるものを、まずは1つだけでもいいのでぜひ実践してみていただければと思います。

参考文献・資料

  1. 日本眼科学会. 病名から調べる. www.nichigan.or.jp. Accessed November 14, 2023. https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=26#:~:text=眼精疲労とは
  2. Boyd K. Computers, Digital Devices and Eye Strain. American Academy of Ophthalmology. Published March 3, 2020. https://www.aao.org/eye-health/tips-prevention/computer-usage‌
  3. 加藤雅俊. ホントによく効くリンパとツボの本. 日本文芸社; 2010.