肩を揉んでみたり、グイーンと伸びをしてみたりと、お仕事中に肩こりを軽減させようと色々試してはいるけどなかなか改善しない、とお悩みの方は多いかと思います。

2019年に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査1」によれば、日本人が日常生活の中で自覚している身体の不調として、肩こりは女性で1位、男性で2位にランクしています(男性の1位は腰痛)。

もはや “国民病” と呼んでも良いほど多くの人が悩んでいる肩こり。実は肩こりには “3種類ある” というのをご存知でしょうか?

もしあなたが、肩こりを軽減させるためになにか努力をしているけれど全然解決しないと感じているのであれば、その努力(=肩こりを軽減させるためのアプローチ)は “あなたの肩こり” には合っていないアプローチである可能性が高いです。

本記事では、3種類ある肩こりそれぞれの原因をお伝えし、それぞれに合った肩こりの軽減・解消方法をお伝えします。

自分の肩こりの原因は何なのかを知り、その原因に合った肩こり解消法を今日からお試しください。

3種類の肩こりそれぞれの原因

まずは原因別に、3種類の肩こりをそれぞれ解説します。

1)「怪我・病気」が原因で起こる肩こり

頚椎椎間板ヘルニアや肩腱板損傷、胸郭出口症候群や肩関節周囲炎(四十肩)などといった整形外科的な怪我は、肩に痛みを引き起こします。

また、狭心症や肺の腫瘍、消化器疾患といった内科的な病気があると、肩に痛みや重だるい凝りといった症状を引き起こすこともあります。

マッサージや軽い運動を行っても軽減しない・改善しない、むしろ痛みが増すといった場合や、肩や腕にしびれがある痛みがある場所がピンポイントである、といったケースは、怪我や病気が原因で肩こりを感じている可能性があります。

2)「ストレス」が原因で起こる肩こり

仕事、家庭、人間関係など、ストレス社会と呼ばれる現代では、交感神経の活動を過剰に優位にするものにあふれています。

複数のストレスが常にかかり続けてるビジネスパーソンは多く、交感神経が常に優位となってしまっている方は非常に多いです。

交感神経優位な状態は血管が収縮するため、血流が低下し、肩の凝りを生み出します。

3)「生活習慣」が原因で起こる肩こり

怪我や病気は存在せず、長時間の座りっぱなしや同姿勢の継続、運動不足や睡眠不足など、生活習慣が原因となって、肩周りの血流の低下や筋肉の緊張、弱化などが起こって肩こりが発生します。

3種類の肩こりそれぞれの軽減方法

もしあなたが肩こりにお悩みの方は、自分の肩こりはどれに当てはまるのか考えてみましょう。

前述した3種類の肩こりそれぞれをどのように軽減し、解消していくべきか、その方法をお伝えします。

1)怪我・病気を治す

「怪我」や「病気・病態」が原因で肩に痛みや凝りが発生している場合は、この怪我や病気を治療しないと、あなたが感じている肩こりは軽減していきません。

肩周辺のみに痛みがある場合は整形外科に、肩以外にも身体に不調を感じる場合は内科を受診して、医師の診察・検査を受けましょう。

診断を受けて、怪我や病気、病態がはっきりすれば、確立した治療法があることがほとんどですので、医師や理学療法士等の指示にしたがって治療、リハビリ等を行うことで、確実に軽減していくと考えられます。

2)ストレスの発散&自律神経を整える

ストレスが原因で肩こりが起こっている場合、そのストレスを特定して取り除くことが一番の解決策となります。

しかし、ストレス社会で活動するビジネスパーソンがストレスをなくすというのは、なかなか現実的ではありません。

そこで、ストレスによって起こっている自律神経の乱れ(=交感神経優位がずっと続いてしまっている状態)を改善することで、血流の低下や身体の緊張を和らげて肩こりを軽減させていく、という方法が良い考えでしょう。

2−1)呼吸法

交感神経が優位な状態が続くと、荒い呼吸(=浅くて速い呼吸)になります。

荒い呼吸は副交感神経活動を低下させるため、リラックスできず、更に身体の緊張を強めて肩こりを助長することにもつながります。

交感神経活動を抑制し、副交感神経活動を高めるために、浅くて速い呼吸の反対である「深くてゆったりとした呼吸」を行いましょう。

呼吸法とストレスの関係を調べた研究2 では、「1分間に4〜6回」のペースで呼吸を行うことで、ストレスレベルが有意に減少することがわかっています。

ゆったりとした呼吸を行うことでストレスリリースにもなりつつ、リラックスモードに導く副交感神経活動を活性化させることができます。

具体的なやり方は「5秒吸って、5秒吐く」のペースで呼吸を繰り返すと1分間に6回の呼吸量となり、「7秒吸って、7秒吐く」のペースで行うと1分間に約4回の呼吸量となります。

まずは「5秒ー5秒」のペースで行ってみましょう。余裕があれば1秒ずつ、吸う・吐くの時間を伸ばしていくと良いでしょう。

また「呼吸瞑想」も副交感神経を活性化させる良い方法と言えます。動画で紹介しておりますので、ぜひ見ながら行ってみて下さい。

2−2)迷走神経の活性化

迷走神経とは副交感神経の一種であり、副交感神経活動が優位になるべきときにしっかり働くためには、この迷走神経の活性化が不可欠です。

迷走神経は脳から始まり、目元・耳元・喉元を通る神経のため、顔を洗って目元を冷やしたり、歌を歌って喉元を刺激することで迷走神経を活性化することができます。

迷走神経を刺激して活性化することで副交感神経活動が優位になり、肩こりをはじめとした身体の緊張の軽減・緩和につながります。

迷走神経の活性化については「疲労回復と心身のリラックスに欠かせない迷走神経を活性化する4つの方法」の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひこちらの記事もお読みください。

3)ストレッチや軽いエクササイズで肩周りの血流アップ

怪我や病気が原因でなければ、2のストレス対策を行いながら、仕事の合間にストレッチや軽いエクササイズも行ってみましょう。

2015年にアメリカ・ユタ大学によって行われた研究3 によれば、1時間にたった2分軽度な運動を行うだけで、常に座り続けていた人と比べて死亡率が33%減少したことが報告されています。

長時間の座りっぱなしによる運動不足や血流の低下などは、肩こりをはじめとした不調を引き起こすだけでなく、死亡率をも高めてしまうことがわかっているため、ぜひ1時間に1回、たった2分で良いので、疲れや凝りを感じる部分をストレッチしたり、簡単なエクササイズで動かしたりしてみましょう。

今回は、肩こりの軽減につながる姿勢の改善や筋肉の柔軟性・活性化を促進するオススメのストレッチやエクササイズを3つご紹介します。

3−1)肩スッキリ体操

肩と肩甲骨を大きく動かすことができる、座りながらでも可能なエクササイズです。

両腕を胸の前で合わせるときは肩甲骨を外側に開くように、両腕を外側に開いたときは肩甲骨を内側に寄せることを意識することで、肩周りの多くの筋肉に刺激が入り、血流促進や筋肉の柔軟性アップに効果的です。

  1. 椅子に浅く座り、背すじを伸ばして姿勢を正します。イチで両腕を胸の前で合わせます。
  2. ニーで両手を外側に向けながら、両腕を外側に開いて胸をストレッチさせます。
  3. サンで両腕を頭上に持ち上げます。
  4. シーで両腕を曲げて、肘を脇腹に引きつけるようにして下ろします(この時も胸にストレッチを感じましょう)。
  5. イチに戻り、1から4を繰り返します。5〜10回程度繰り返しましょう。

3−2)大の字ストレッチ

腰周りや骨盤周りにはたくさんの筋肉が存在するため、身体を回旋させる動的なストレッチを行うことで多くの筋肉を動かすことができ、全身の血流促進につながります。

また、自律神経は背骨を通っているため、背骨を動かすエクササイズを行うことで自律神経の活動を活性化につながり、自律神経の乱れの改善につながる可能性があります。

  1. 両足を肩幅よりも広めにセットして立ち、両腕は肩の高さで真横に伸ばします。
  2. 上体を前に倒しながら体をひねり、右手を左足首に向かって伸ばします。腰にストレッチを感じましょう。
  3. 体を逆方向にひねりながら、左手を右足首に向かって伸ばします。腰にストレッチを感じましょう。
  4. 大きく腕を動かしながら、2と3を繰り返して左右に体をひねりましょう。左右5回ずつ、計10回程度行いましょう。

3−3)バンザイスクワット

全身の筋肉の約三分の二が下半身に存在するため、肩周りだけではなく下半身も動かすことでより血流が促進されます。

一日中デスクワークが続くビジネスパーソンは特に、下半身の筋力低下が起きないようにするためにも、肩周りの動きにプラスしてスクワットを行うこのエクササイズを行うことで、全身の血流促進と下半身の筋力強化が期待できます。

  1. 足を肩幅にセットし、背筋を伸ばして立ちます。お尻を後ろに引きながら腰を落とし、同時に肘を後ろに引きます。
  2. 両足でしっかりと地面を押して立ち上がりながら、両手をパーにして頭上に伸ばします。
  3. 1と2を繰り返します。10回程度行いましょう。

まとめ

3種類ある肩こりについて、それぞれの原因と軽減方法をお伝えしました。

原因を解決できる方法でアプローチすることで、より短時間で効率的に改善に導くことが可能になります。

怪我や病気が原因でなければ、ぜひ呼吸法や迷走神経の活性、もしくはストレッチやエクササイズのどれか1つでも良いので試してみましょう。

肩こりを軽減して、より快適に仕事に取り組み、ワークパフォーマンスを高めていただければと思います。

参考文献

  1. 2019年国民生活基礎調査の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html. Accessed May 1, 2023.
  2. Ma X, Yue ZQ, Gong ZQ, et al. The Effect of Diaphragmatic Breathing on Attention, Negative Affect and Stress in Healthy Adults. Front Psychol. 2017;8:874. Published 2017 Jun 6. doi:10.3389/fpsyg.2017.00874
  3. Beddhu S, Wei G, Marcus RL, Chonchol M, Greene T. Light-intensity physical activities and mortality in the United States general population and CKD subpopulation. Clin J Am Soc Nephrol. 2015;10(7):1145-1153. doi:10.2215/CJN.08410814