皆さんは1日に何時間座っていますか?

運動不足にならない様「宅トレ」や「ランニング」をしているという方もいらっしゃると思いますが、「座りすぎない様にしている」という方はまだ少ないのではないでしょうか?

デスクワーカーであれば、仕事中は座っている事が当たり前であり、最近では打ち合わせや営業活動も全て「オンライン」で行われる事が多いため、以前に増して座位時間が増していませんか?

また「座位時間」とは、仕事中デスクに向かっている時間だけでなく、移動中の電車や車の中・帰宅後ソファーに座ってテレビを見ている時間も含まれます。オーストラリアの研究機関の調査では³、日本人の成人が平日に座っている時間が、

世界20カ国中、もっとも長い1日420分=7時間

だということがわかりました。
これは、現代の日本人の生活が「無意識のうちに”座らざるを得ない“環境になっている」のが大きな原因ではないでしょうか?

今回の記事では、「座りすぎ」に潜む健康リスクと、「無意識の座りすぎ」を減らす環境づくりについてお伝えしたいと思います!

目次:
日本は「座りすぎ対策」後進国!?
こんなに怖い!!「座りすぎ」の健康リスク について
私は「座りすぎ」なの??
「脱!座りすぎ」を実現する、環境とは?
 【1】気づいたらもうこんな時間!?を防ぐアラーム活用
 【2】皆でやれば怖くない!!ミーティング時のリフレッシュ体操
 【3】座らずに仕事をする! スタンディングデスクの導入
 【4】上司が動けばハードルが下がる! 会社が「立って動くこと」を推奨する
まとめ

日本は「座りすぎ対策」後進国!?

「座りすぎ」の健康リスクについての研究は、2010年ごろから盛んにおこなわれる様になり、イギリスは2011年に世界一早く「座りすぎ」のガイドラインを策定、オーストラリアでは官民一体となり、座りすぎに警鐘を鳴らすTV CMを流しました。

一方、世界20カ国中最も座っている時間が長い日本でも、TVの特集等で「座りすぎ」について取り上げられる機会はあるものの、国や企業を上げてのキャンペーン等は未だ少なく、「座りすぎない方が良い」と何となくは分かっていても、実際に行動変容する段階に至っていない方が殆どだと思います。

それどころか、コロナ禍の巣ごもり生活・リモートワークの環境や、スマート家電など技術の進歩により、特にオフィスワーカーの方・共働き世代・シニア層で、座りすぎに拍車がかかっている現状があります。

この現状を変えるためにできる事。それは
(1)「座りすぎ」の健康リスクについて知り
(2)自分の座りすぎに気づき
(3)環境を変える事
ではないでしょうか。

今回の記事は、私自身の実体験も踏まえてお届けしたいと思います!

こんなに怖い!!「座りすぎ」の健康リスク について

2011年、WHO(世界保健機関)によれば、「座りすぎは世界で年間200万人の死因になる」という発表があり、今や「「座りすぎ」は喫煙や飲酒と同様に危険だと認識されています。

長時間座り続けることで血流や筋肉の代謝が低下し、「糖尿病」「肥満」「高血圧」「がん」「認知症」のリスクが高まり、ひどくなると「うつ」の引き金になるとも言われているのです。また、これらのリスクは30分以上座り続ける事でぐっと高くなると言われています。

例えば、2003年にアメリカで行われた「看護師健康調査」⁴によると、テレビ視聴による座位時間が1日2時間増加するごとに、肥満リスクが23%、糖尿病の発症リスクが14%高まる事が明らかになりました。
この研究では年齢や、喫煙状況、身体活動、食生活などの影響を統計学に調整した上での結果です。

その他にも、イギリスで約1万1,000人を13年ほど追跡し、その間にがんや、心血管疾患などで亡くなった人について調べた研究⁵によると、デスクワークの多い人に比べて「立ったり・歩いたりといった身体活動をともなう仕事」の人は、総死亡リスクが32%低く、がんで亡くなるリスクが40%低いという研究結果もあります。

また、2017年に行われた早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一郎教授らの研究⁶によると、「座りすぎが働く意欲を低下させている」というデータがあります。

20-30代の若年層は、仕事中の座位時間が長い時に「仕事のパフォーマンスが低かった」と感じる方が通常時よりも38%多く、40-50代は、座位時間が長いと「仕事に熱心に取り組んでいない・誇りややりがいを感じていない」など、ワークエンゲージメントが落ちている人が通常の約1.5倍も多い事が分かりました。

これは、本人のみならず企業の人事、経営層の方々にとって気になる数字なのではないでしょうか?

私は「座りすぎ」なの??

ここまで、「座りすぎ」のリスクについてご紹介しましたが、いったい1日何時間以上が「座りすぎ」なのでしょうか?オーストラリアシドニー大学の研究⁷によると、1日の座位時間が4時間未満の人に比べて

4~8時間
8~11時間
11時間以上

と、長くなるにつれて総死亡リスクが11%ずつ、狭心症や心筋梗塞による死亡リスクは18%ずつ高まるという結果が出ています。日本人の成人が1日に座っている時間は約7時間と言われているので、デスクワークのオフィスワーカーの方であれば、「1分でも座る時間を短くした方が良い」と言っても過言ではなさそうです。

また、オーストラリアでは「座っているときにどれくらいの間隔で、どのような種類の活動でブレイク(一定期間立ったり座ったりすること)すればいいのか、実験的に確かめる研究が盛んに行われていて、ある研究⁸によると、

(1)1日7時間ずっと座っている
(2)2時間座ったあとの5時間は20分ごとに2分ずつ立ってゆっくり歩くなど、低強度のブレイクを挟む
(3)(2)のブレイクを通常歩行以上の速度で歩くなど、中高強度活動にする

この3パターンを比較し、食後の血糖値やインスリン抵抗性を調べ、糖尿病に関わる値を比較したところ、(1)と比較して(2)と(3)は共に2割程度数値が改善したそうです。血糖値を下げるという意味では、運動強度は低くてOK。とにかく「座り続けない」事が重要だという事が分かります。

ブレイクの頻度は、何分に1回が良いのか?というのは未だ明確でない部分もありますが、今回参考資料で拝読した「「座りすぎ」が寿命を縮める」の著者、岡浩一郎教授によると、20-30分に1回が効果的であることは分かっているけれど、現段階では誰もができるタイミングとして、1時間に1回はブレイクする事をお勧めされています。²

最後に「平日はデスクワークだけれど、土日は宅トレやランニングを行うなどアクティブに生活している」という方も要注意!
適度に体を動かすことは健康にとって良い影響があるものの、平日の「座りすぎ」を十分に解消することはできません。運動と座りすぎの関係について調べた「45and Up study」によると、1週間に300分以上体を動かしている場合でも、1日に11時間以上座っている人の死亡リスクは、1日の座位時間が4時間未満の人の1.57倍でした。つまり、終業後や週末に運動していてもそれ以外の時間で長時間座っていると死亡リスクは高まってしまうのです。

「運動不足」と「座りすぎ」は切り分けて考え、
★1日の座位時間を少しでも短縮すること
★連続して座り続ける回数を減らし、30分に1回。
少なくとも1時間に1回は立ち上がって軽く体を動かすこと

が大切だという事が分かります。

「脱!座りすぎ」を実現する、環境とは?

30分に1回立ち上がりましょう。1分でも座位時間を短縮しましょう!と言われても、なかなか「意志」だけでは実現が難しいもの。そこで、「立ち上がって体を動かす為の環境づくり」について考えてみましょう。

【1】気づいたらもうこんな時間!?を防ぐアラーム活用
【2】皆でやれば怖くない!!ミーティング時のリフレッシュ体操
【3】座らずに仕事をする! スタンディングデスクの導入
【4】上司が動けばハードルが下がる! 会社が「立って動くこと」を推奨する

【1】気づいたらもうこんな時間!?を防ぐアラーム活用

集中力を高めたい!と思っている方は多いと思いますが、「座りすぎ」の観点で見ると「集中しすぎ」は危険です。無意識の座りすぎを防ぐためにも、仕事用のPCに表示されるアラート機能を活用したり、スマートウォッチなどで、1時間に1回「ブレイク」を促す設定をしておくと「そろそろ体を動かさないと!」という目安が出来ます。

オフィス環境だと、1人で立ち上がるのは勇気がいる。という方もいらっしゃいますが、ちょっと立ち上がって(出来たら少し遠回りをして)お手洗いに行くというのはいかがでしょうか?また、リモートワーク環境の方は、同僚の目が無い分、自由に立ち上がるチャンスですね!

【2】皆でやれば怖くない!!ミーティング時のリフレッシュ体操

自分ひとりの意志ではなかなか実行できない・・・という場合は、「ミーティング開始のタイミングで、必ず全員立ち上がって、皆で数分間のリフレッシュ体操をする」と決めると、皆がやるから私もやる。決まり事だから特に自らの意志を働かせなくても、動ける。といった環境が出来ます。運動はかかとの上げ下げや、その場足踏み、スクワットなど、シンプルなものでOK。オンラインミーティングであれば、エクササイズ動画を流してみたり、リフレッシュのためのLIVEレッスンサービス等を利用すれば、チームメンバー同士のコミュニケーションにもつながり、おすすめです。

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【3】座らずに仕事をする。スタンディングデスクの導入

座っているところから立ち上がるのが難しいのであれば、立ったまま仕事ができる「スタンディングデスク」を導入する。という手もあります。調べてみると、昇降式のものから、既存のデスクの上に乗せるだけで使えるモデルなど様々あります。企業内で備品を入れ替えるタイミングがある方、テレワーク環境整備のための補助金がある方等は、ぜひ検討してみる事をお勧めします!

我が家はすぐにスタンディングデスクの導入が難しかったので、カメラオフで参加できるオンラインミーティングや、この様な記事執筆のアイディア出し等、立ったままでも出来る仕事の時は「立つ」とルールを決めて実践しています。

【4】上司が動けばハードルが下がる。会社が「立って動くこと」を推奨する

【2】の皆でやれば怖くない!でもお伝えした様に、自分1人だけで立ち上がる。というのはやっぱりハードルが高いもの。会社として「就業中に立ち上がってブレイクすることを推奨」という考え方を明確に打ちだし、上司が積極的に行動で示せば、立ち上がりやすい環境となります。

私が所属しているチームでは、打ち合わせのタイミングで上司から「体動かしてる?適度に休憩取って、動いてね!」「座りっぱなしだとアイディアも煮詰まっちゃうから、たまには気分転換で歩きに出るのもいいんじゃない?」等の声掛けがあります。就業中に立ち上がる事のハードルが下がり、「座りっぱなし」に気づくきっかけにもなるので、この様な環境はやはり大切だなと実感しています。

まとめ

いかがでしたか?
ご自身が「座りすぎ」だと気づいていなかった方も、今日から(今すぐにでも)立ち上がってみよう!と思って頂けたでしょうか?私達の日常は「無意識に座りすぎる環境」にありますので、健康リスクを理解し、極力意志の力を働かせなくても立ち上がれる環境づくり、是非取り入れてみてください!

参考文献・サイト
1. スポーツ庁Web広報マガジン:https://sports.go.jp/special/value-sports/7.html
2. 「座りすぎ」が寿命を縮める(岡浩一朗著、大修館書店、2017)
3. Bauman AE, Ainsworth B, Sallis J, et al. The descriptive epidemiology of sitting: A ₂₀-country comparison using theInternational Physical Activity Questionnaire(IPAQ). Am J Prev Med. 2011;41: 228-235
4. Hu FB, Li TY, Colditz GA, Willett WC, Manson JE. Television watching and other sedentary behaviors in relation to risk of obesity and type 2 diabetes mellitus in women. JAMA, 2003;289(14):1785-91
5. Stamatakis E, Chau JY, Pedisic Z, Bauman A, Macniven R, Coombs N, Hamer M. Are sitting occupations associated with increased all-cause, cancer, and cardiocascular discase mortality risk? A pooled analysis of seven British population cohorts. PLoS One,2013;8(9):e73753
6. Ishii K, Shibata A, Oka K. Work engagement, productivity, and self-reported work-related sedentary behavior among Japanese adults: A cross-sectional study. J Occup Health, 2017(in press).
7. van der Ploeg HP,Chey T, Konda RJ, Bauman A. Sitting time and all cause mortality risk in 22297 Australian adults. Arch Intern Med, 2012;172(6)
8. Dunstan DW, Kingwell BA, LarsenR, Healy GN, Cerin E, Hamilton MT, Shaw JE, Bertovic DA, Zimmet PZ, Salmon j, Owen N. Breaking up prolonged sitting reduces postprandial flucose and insulin responses. Diabetes Care, 2012; 35(5):976-83.