仕事の合間にコーヒーを飲む習慣がある方は多いのではないでしょうか?コンビニやカフェで手軽に楽しめるコーヒーは、ただの嗜好品ではなく、健康維持にも役立つ効果があることがわかっています。
コーヒーに含まれるカフェインには、適度な覚醒作用があり、集中力を高めたり、気分をリフレッシュさせたりする効果が期待できます。
また、コーヒーの独特の香りが自律神経を整えて、ストレスの軽減にもつながると言われています。特に、毎日忙しく働くビジネスパーソンにとって、コーヒーは仕事のパフォーマンスを向上させる強い味方となるでしょう。
私自身も、毎朝コーヒーを淹れることで1日をスタートさせています。豆を挽き、ハンドドリップで丁寧に淹れる時間は、仕事前の大切なルーティーンです。挽きたての香りを感じることで、自然に集中モードへと切り替えてくれます。
本記事では、コーヒーの健康効果についてより詳しく解説していくとともに、飲むタイミングや適切な摂取方法についてもご紹介していきます。
ちょっとした工夫で、あなたの健康や仕事のパフォーマンスをよりよいものにしてくれます。ぜひ参考にしてみていただけたらと思います。

【監修者】石塚 志乃(いしづか しの)
- 元スキークロスW杯日本代表
- マスターズ陸上(短距離)
中学時代はスキーでアジア大会出場。その後は陸上100mと走り幅跳びで全国大会出場。2003年に誕生間もない新種目「スキークロス」に挑戦し、04/05シーズンにW杯初出場。2007年冬季国体を最後に引退。その後はオフィスワーカーに向けて健康を発信するトレーナー業へ。三児の母。
コーヒーの4つの健康効果
コーヒーが、どんな健康効果を持っているのか、もしくはどんな能力の向上によって、仕事のパフォーマンスがアップするのかを、科学的なエビデンスをもとに、ここから紹介していきます。
上手にコーヒーを活用して、仕事の効率アップと健康維持を両立させていきましょう。
1)集中力・記憶力の向上

毎日忙しいビジネスパーソンにとって、集中力と記憶力の向上は、仕事の生産性を高める上で欠かせない要素です。そこで役立つのがコーヒーに含まれるカフェインです。
カフェインの摂取によって覚醒レベルが高まると、注意力や集中力が向上する効果があります。特に、長時間の会議やデスクワーク、重要なプレゼンの前などにコーヒーを適量摂取することで、脳の働きをサポートすることができます。
また、カフェインには短期記憶や作業記憶を向上させる効果もあることが研究で示されています。2014年にJohns Hopkins大学で行われた研究では、カフェインを摂取したグループは、摂取しなかったグループに比べて、記憶の定着率が向上したことが報告されています1。
さらに、適量のコーヒーの摂取は認知機能をサポートし、脳の老化を遅らせる可能性も指摘されています。特に、長期的なコーヒーの摂取が、アルツハイマー病や認知症のリスクを低下させる可能性があることが示唆されています2。
2)脂肪燃焼効果

コーヒーに含まれる「クロロゲン酸」と「カフェイン」には、脂肪燃焼を促進し、エネルギー消費を高める効果があることが明らかになっています。
クロロゲン酸は、脂質の代謝を活発にする働きがあり、これにより脂肪の分解とエネルギー消費が促進されます。実際に、クロロゲン酸が脂質の蓄積を抑制し、脂肪燃焼をサポートすることが研究で示されています3。
一方、カフェインは交感神経を刺激して、体内のエネルギー代謝を活発にします。カフェインが体内に入ると、リパーゼという酵素が活性化され、体内に蓄積された脂肪を分解しやすい形に変え、血液中に放出します。この過程によって、脂肪がエネルギー源として利用されやすくなり、脂肪燃焼効果が高まるのです。
また、カフェインが脂肪の燃焼を促進することは、多くの研究でも確認されています。たとえば、2013年に発表された研究では、カフェインを摂取することで、安静時のエネルギー消費量が3~11%増加することが示されています4。
このように、適量のコーヒーを取り入れることで、脂肪の燃焼をサポートし、効率的なエネルギー代謝を促進することが期待できます。特に、運動前にコーヒーを飲むことで、脂肪燃焼効果をより高めることができるでしょう。
3)二日酔い予防

お酒を飲んだ翌朝、頭が重く感じることはありませんか?実は、コーヒーを上手に取り入れることで二日酔いの予防や軽減が期待できます。
コーヒーに含まれるカフェインは、肝臓の解毒作用をサポートして、アルコールの代謝を促進する働きがあります。
特に、アルコールが分解される際に発生する有害物質「アセトアルデヒド」が、二日酔いの主な原因の一つとされているため、アセトアルデヒドを速やかに分解することが、二日酔いを防ぐ鍵となります。
実際に、2018年に発表された研究では、アルコールの摂取後にカフェインを摂ることで、血中のアルコール濃度の低下を早めることが報告されています5。
さらに、コーヒーには胃腸の働きを促進する効果もあり、飲酒後の消化を助ける作用も期待できます。
適量のコーヒーを取り入れることで、二日酔いのリスクを軽減し、翌朝スッキリと目覚めるサポートになるかもしれません。
4)糖尿病の発症予防

コーヒーを飲む習慣がある人は、糖尿病の発症リスクが低下する可能性があることが、近年の研究で明らかになっています。
米国の大規模研究によると、コーヒーをまったく飲まない人に比べ、1日6杯以上飲む人は、2型糖尿病の発症率が男性で50%、女性で30%低下していたことが報告されています6。この結果から、コーヒーには糖尿病の予防に寄与する成分が含まれていると考えられます。
コーヒーが糖尿病の発症予防につながると考えられるメカニズムとして、以下のような作用が挙げられます。
- カフェインがエネルギー消費を促進し、体脂肪の蓄積を抑える。
- クロロゲン酸(ポリフェノールの一種)が血糖値の上昇を抑制し、インスリン分泌を促す消化管ホルモン「GLP-1」の血中濃度を上げる。
- マグネシウムが血圧の調整や糖の代謝を改善することで、インスリンの働きをサポートする。
また、厚生労働省や文部科学省の研究でも、コーヒーを1日1~2杯飲む人は、糖尿病の発症リスクが低い傾向にあることが示唆されています。
適量のコーヒーを日常的に取り入れることは、糖尿病予防の一助となるかもしれません。
コーヒーの抽出方法で変わる健康効果

コーヒーの抽出方法によって、健康への影響が異なることが明らかになっています。特に、紙フィルターを使用しない煮沸式や、フレンチプレス式のコーヒーには、少し注意が必要です。
これらの抽出方法で作られたコーヒーには、ジテルペンという物質が多く含まれています。これらの物質は、血中の総コレステロールやLDL(悪玉)コレステロールを上昇させる作用があることが、研究で示されています7。
一方、紙フィルターを使用して抽出したコーヒーでは、ジテルペンの大部分が除去されるため、コレステロール値への影響はほとんどないとされています。同じ研究で、フィルターを通したコーヒーを摂取した場合は、LDLコレステロールには影響を及ぼさなかったと報告されています7。
そのため、1日に5杯以上のコーヒーを飲む方は、紙フィルターを使用してコーヒーを抽出することで、コレステロール値の上昇リスクを低減できると考えられます。
まとめ
コーヒーは、ただの嗜好品ではなく、適量を意識して摂取することで、集中力や脂肪燃焼、二日酔いの予防、糖尿病リスクの低減など、多くの健康効果をもたらします。特に、ビジネスパーソンにとっては、仕事の効率を上げる強力なサポートドリンクとなるでしょう。
また、コーヒーの健康効果を最大限に活かすためには、飲むタイミングや抽出方法にも注意を払うことが重要です。紙フィルターを使用することで、コレステロール値への影響を抑えられることもわかっています。
忙しい日々の中で、コーヒーを上手に取り入れて、健康と仕事のパフォーマンスを両立させるライフスタイルを実現してみてはいかがでしょうか?
参考文献・資料
- Borota D, Murray E, Keceli G, et al. Post-study caffeine administration enhances memory consolidation in humans. Nat Neurosci. 2014;17(2):201-203. doi:10.1038/nn.3623
- Ritchie et al., Journal of Alzheimer’s Disease, 2007. “Caffeine, cognitive function, and dementia: A systematic review.”
- Dulloo et al., The American Journal of Clinical Nutrition, 2013. “Caffeine and energy metabolism: A comprehensive review.”
- Song et al., Obesity Research & Clinical Practice, 2014. “Effects of chlorogenic acid on lipid metabolism and obesity.”
- Jung et al., Food & Function, 2018. “Effect of caffeine on alcohol metabolism and its potential to prevent hangover symptoms.”
- van Dam RM, Hu FB. Coffee consumption and risk of type 2 diabetes: a systematic review. JAMA. 2005;294(1):97-104. doi:10.1001/jama.294.1.97
- コーヒー. コーヒー. Linus Pauling Institute. Published June 4, 2018. Accessed March 15, 2025. https://lpi.oregonstate.edu/jp/