テレワークや在宅勤務が当たり前になった現代、運動不足を感じているビジネスパーソンは非常に多いかと思います。
「ジムに通う時間なんてない」「会議の合間に運動なんて実際問題難しい」
そんな悩みを持つビジネスパーソンにこそ知ってほしいのが、1日たった4分行うだけで、運動不足解消はもちろん、脳・身体・メンタルに様々な効果が期待できる「HIIT(ヒート; 高強度インターバルトレーニング)」です。
「4分」で強度をしっかり上げる必要はありますが、脂肪燃焼や集中力アップなどにも効果があるHIITは、忙しい現代人にピッタリの運動法です。
定期的な運動時間の確保が難しい方や、忙しいのを言い訳に運動を避けてきた方も、「4分」であれば創出できるはず!
本記事では、運動習慣がなくても始めやすい初心者向けHIITメニューから、運動効果をより得たい方向けの中〜上級者向けメニューまで、わかりやすくご紹介します。
あなたの1日に “密度の高い4分” を取り入れて、身体のコンディションを向上させ、ワークパフォーマンスを高めて行きましょう!
HIITとは?

HIIT(High-Intensity Interval Training)とは、短時間の高強度な運動と短時間の休憩を交互に行うトレーニング方法です。
心拍数を一気に上げることで、短時間でも心肺機能の向上になる他、脂肪燃焼や持久力向上、集中力アップ、気分のリフレッシュなど、短い時間での運動でも非常に多くのメリットを享受できるのが特徴です。
「忙しくて運動するまとまった時間がとれない」というビジネスパーソンにとって、特別な器具も必要がなく、短時間で高い運動効果が得られるHIITは、タイムパフォーマンスの高い有効なトレーニング方法と言えるでしょう。
HIITの実施で期待できる効果
HIITの実施で得られる主なメリットは、以下の通りです。
1)脂肪燃焼・基礎代謝の向上

HIITは、短時間の実施にも関わらず、多くのカロリーを消費することができるため、脂肪燃焼を促進します。
2017年に発表されたHIITに関するメタアナリシス1では、HIITと有酸素運動の体脂肪の減少効果が比較され、平均してHIITが1.26%、有酸素運動が1.48%と、運動時間の違いがあるにも関わらず、ほぼ同等の効果があったことが報告されています。
また、運動後も代謝が高い状態が続く「アフターバーン効果」によって基礎代謝も向上するため、日常生活でのエネルギー消費量が増加して、体脂肪の減少が期待できます。
2)心肺機能・持久力の向上

HIITは、短時間で心拍数を急速に上げることになるため、心肺機能が強化され、持久力(スタミナ)を高めます。
2014年に発表されたメタアナリシス2では、心臓や血管に関わる病気(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)を持つ患者を対象にHIITを実施したところ、効果的に持久力や心血管機能が向上することが報告されています。
持久力の向上は、日常生活や仕事中の疲労感の軽減や、長時間の集中力維持が期待できるため、ビジネスパーソンにとってメリットが大きいと言えるでしょう。
3)脳機能の向上

HIITの実施によって、BDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促進するため、脳の健康や認知機能・記憶力の向上に有益である可能性が示唆されています3。
BDNFとは、脳の中で作られる「脳の栄養素」のようなもので、この分泌が促進されると、脳の神経細胞の成長を促したり、修復や再生を助けたり、記憶力や学習力、集中力などを高めたりする役割があります。
短時間でも運動を行うことで、脳のパフォーマンスが高まり、仕事の集中力や思考力にも良い影響を与える可能性があるのです。
4)ストレスの軽減

2021年に発表されたメタアナリシス4によれば、健康な個人に対してHIITを実施したところ、HIIT直後はストレスレベル(=コルチゾールレベル)は一時的に増加したものの、その後ストレスレベルは基準値よりも下がり、その効果は24時間程度続いたことが報告されています。
週に何度かHIITを実施することで、ストレスレベルが低い状態で過ごす時間を増やすことが可能になり、仕事のパフォーマンス向上やメンタルヘルスの維持に役立ちます。
自宅でできるHIITメニュー|レベル別に3つのメニューを紹介

ではここから、道具を使わずに、またマンション等でジャンプができない場所でも安心の、自宅で手軽に実践できるHIITメニューをレベル別に3つご紹介します。
なお、形式は「タバタ式」を使用し、すべて「20秒の運動+10秒の休憩を8セット(4種目✕2)」で行っていきます。
基本的に、この20秒の運動パートで行うエクササイズは何でも良いため、あなたがやりたいエクササイズがあれば、それを行っていただければ問題ありません。
「どんなエクササイズを行ったら良いかわからない」「おすすめのメニューが知りたい」という方は、ぜひここから紹介するエクササイズを実践していただければと思います。
運動強度が高すぎず、またビジネスパーソンに特にオススメの集中力や脳の活性化に効果的な種目を厳選しましたので、テレワーク中の気分転換や、会議の合間のスキマ時間にぜひ実施してみてください。
【レベル1】初心者向け:運動習慣がない方でも安心のベーシックメニュー
まったく運動習慣がなく久々に運動をするという方や、運動をするのがだいぶ久々だから軽めの運動から始めたいという方は、まずこのベーシックメニューから始めてみましょう。
- カーフレイズ:椅子の背もたれや壁に手をついてバランスを取りながら、かかとを上げ下げしましょう。
- 椅子スクワット:足を肩幅にセットして椅子から立ち上がり、ゆっくり腰を落として椅子に座る、を繰り返します。
- 腕振り:足を前後に開き、走るようにして腕を大きく前後に振ります。
- プランクキック:両肘をついた姿勢から、交互に膝を胸に引きつけます(下画像参照)。

まず1のカーフレイズを20秒行い、10秒休憩。続いて2の椅子スクワットを20秒行って、10秒休憩。と繰り返していき、4のプランクキックが終わったら、また1に戻ります。
この4種目では、そこまで心拍数が上がらないため、脂肪燃焼や心肺機能の向上効果は低いですが、全身運動による血流の促進効果によって全身のリフレッシュやストレス軽減、更に脳の活性化は十分に期待できます。
【レベル2】中級者向け:体力が少しついてきた人向けメニュー
HIITは「高強度」という名前がつくだけあり、強度が高い方が様々なメリットを享受できます(その分怪我のリスクも上がりますが)。
よって、ある程度運動習慣がある方(もしくはついてきた方)や、体力がある / ついてきたと感じる方は、少しずつでも強度を上げていきましょう。
- ヒップサイドレイズ(右脚):肩肘をついた横向き姿勢で、天井側の脚を上下させます(下画像参照)。
- ヒップサイドレイズ(左脚):左右を変えて逆側も行います。
- プランク・ショルダータップ:腕立て伏せの姿勢(両手と両足を肩幅で床につく)をとり、片手ずつ、逆側の肩(右手で左肩、左手で右肩)を交互にタッチします。
- スクワット・パンチ:足を肩幅にセットして、腰を落としてスクワット。立ち上がってきたら左右の手で1回ずつ前方にパンチ。これを繰り返します。

ベーシックメニューよりも強度は上がり、心拍数も上がるはずなので、脂肪燃焼や基礎代謝アップ効果も狙えます。また、バランス機能に刺激が入り、リズム感も必要なエクササイズが多いため、脳の活性化がかなり期待できます。
【レベル3】上級者向け:短時間で強度をしっかり高めたい人向け
様々な筋トレエクササイズに慣れてきたら、強度の高いエクササイズを4種目揃えてHIITを行っていきましょう。
- ランジスクワット:前後に足を開いた状態で腰を落とす&上げるを繰り返します(下画像参照)。
- プランク・サイドステップ:腕立て伏せの姿勢をとり、片足ずつ外側に1歩ステップして元に戻す、を繰り返します。
- ニートゥーエルボー:立位姿勢から、脚は腿上げをするように片足ずつ脚を引き上げながら、肘で膝をタッチ(右肘で左膝、左肘で右膝をタッチ)します。
- マウンテンクライマー:腕立て伏せの姿勢をとり、片脚ずつ膝を胸に引きつけます。

下半身や体幹にしっかり負荷がかかるメニューとなっています。また、ニートゥーエルボーやマウンテンクライマーなど、動き続けるメニューでしっかり動き続けることで、心拍数もかなり上がるかと思います。
脂肪燃焼や基礎代謝の向上はもちろん、心肺機能や持久力の向上、更に脳の活性化もかなり期待のできるメニューになっているかと思います。
HIITの効果を最大限引き出すコツと注意点

HIITは短時間で大きな効果が得られるトレーニングですが、やり方次第で、その効果には大きく差が出ます。
正しい方法で、最大限の効果を引き出すために、安全かつ効率的にHIITを行うためのポイントをお伝えします。
1)心拍数をしっかり上げる
上記で紹介した「初心者向けメニュー」は、まずは運動に慣れることや運動習慣をつけていくことが第一目標となるため、そこまで意識する必要はないですが、HIITを行う上での1番のポイントは「高強度」で行うことです。
そして、今行っている運動を高強度でできているのか、いないのかの目安として使えるのが「心拍数」です。
まずは心拍数を測定する必要はないので、しっかり心臓がドキドキバクバクしているか、ドキドキバクバクするくらいの強度で運動しましょう。
しっかり心拍数を測定して運動したい方は、「220 − ご自身の年齢」をした数値の80〜90%程度の心拍数になるように運動を行えると、しっかりHIITによる運動効果のメリットを享受できるかと思います。
2)休憩の10秒も完全に動きは止めない
HIITを初めてやる方は、まずは運動の20秒間をしっかり動くことをまずは意識してほしいのですが、余裕が出てきたら、休憩の10秒間は完全に止まって休憩するのではなく、その場で軽く足踏みをしたり、部屋の中をグルグル歩き回ったりして、完全には動きを止めないのがオススメです。
「動きながら回復させる」ことで、心拍数を維持することができ、HIITの運動効果が更に高まります。
3)決して無理はしない
HIITは高強度で行うことでより多くの効果を得ることができますが、強度を上げようと思うあまり、無理しすぎて怪我をしてしまったり、運動習慣として続けられなくなってしまっては本末転倒です。
最初は軽めの強度から始め、徐々に強度をあげていき、”キツイけどやり切れる” “運動後に爽快感を感じる” ようなラインを見つけましょう。
まとめ
HIITは、毎日忙しく働くビジネスパーソンが「時間がない」を言い訳にせずに始めることができる、タイムパフォーマンスの良い運動法です。
1日たった4分の運動時間を創出するだけで、脂肪燃焼・心肺機能向上・脳の活性化、ストレス軽減といった、日常生活にも仕事にも直結するメリットを得ることができます。
自宅で、道具の用意もいらず、騒音等も気にせずにできるHIITは、まさしく “今日から” 始めることが可能です。
「今日から4分だけ」、この一歩が、あなたの1日を、そして毎日のパフォーマンスが確実により良いものになっていきます。
ぜひ、あなたの生活にHIITを取り入れてみて下さい。
参考文献・資料
- Keating SE, Johnson NA, Mielke GI, Coombes JS. A systematic review and meta-analysis of interval training versus moderate-intensity continuous training on body adiposity. Obes Rev. 2017;18(8):943-964. doi:10.1111/obr.12536
- Weston KS, Wisløff U, Coombes JS. High-intensity interval training in patients with lifestyle-induced cardiometabolic disease: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2014;48(16):1227-1234. doi:10.1136/bjsports-2013-092576
- Mielniczek M, Aune TK. The Effect of High-Intensity Interval Training (HIIT) on Brain-Derived Neurotrophic Factor Levels (BNDF): A Systematic Review. Brain Sci. 2024;15(1):34. Published 2024 Dec 30. doi:10.3390/brainsci15010034\
- Dote-Montero M, Carneiro-Barrera A, Martinez-Vizcaino V, Ruiz JR, Amaro-Gahete FJ. Acute effect of HIIT on testosterone and cortisol levels in healthy individuals: A systematic review and meta-analysis. Scand J Med Sci Sports. 2021;31(9):1722-1744. doi:10.1111/sms.13999