コンビニでも挽きたてのおいしいコーヒーが手に入るようになるぐらい身近な存在になった「コーヒー」。ゆっくりと飲む1杯のコーヒーには、心身ともにリラックスさせ、リフレッシュさせる力があります。

コーヒーに含まれるカフェインの刺激には、適度な覚醒作用があり、目が覚める、仕事がはかどる、気持ちが落ち着く、飲むとリラックスする、など、独特の香りが神経を安定させてくれる効果を感じている方も多いと思います。

私にとってもコーヒーは日々の集中力の源で、毎日豆を挽き、ハンドドリップで淹れています。豆が膨らむ様子を見ながら挽きたての香りを浴びることが至福の時間です。

実はこのコーヒー、他にも意外な効果があるのです。

二日酔い予防

カフェインには身体の新陳代謝を活発にし、食事の後に胃や腸の働きを促進して消化を助ける効果もあります。加えて、肝臓の働きを活発にし、アセトアルデヒド(※1)の分解を早める効果がありますので、お酒を飲んだ後にコーヒーを飲むことで二日酔いの予防効果が期待できます。

※1 アセトアルデヒド:エタノールの最初の代謝産物であり、フラッシング反応や二日酔いの原因物質。ヒトへの発癌性が疑われている。

糖尿病の発症予防

コーヒーが糖尿病の発症を予防するという解析結果が米国のグループから報告されました。これによれば、コーヒーをまったく飲まない人に比べ、1日6杯以上飲む人では2型糖尿病の発症率が男性で5割、女性で3割低下していたそうです。 想定されるメカニズムは、

  1. カフェインがエネルギーを熱の形で放出することにより、体脂肪の蓄積を減少させる。
  2. クロロゲン酸(※2)が血糖値上昇に対して抑制的に働き、GLP-1(※3)の血中濃度の増加を促す。
  3. マグネシウムが高血圧やブドウ糖の代謝を改善する。

と考えられています。

※2 クロロゲン酸:ポリフェノールの一種。コーヒー独特の色、味、香りのもとになる成分
※3 GLP-1:血糖値を下げる消化管ホルモン

また、厚生労働省や文部科学省の研究によるとコーヒーを1日1~2敗飲む人から糖尿病発症のリスクが下がる可能性が示唆されています。

脂肪燃焼効果

コーヒーに含まれるクロロゲン酸は、肝臓での脂質代謝を活発にします。この結果、脂質の燃焼によるエネルギー消費が増加し、つまり脂肪が燃えやすくなる状況を作ります。また、コーヒーの成分としてたくさん含まれていることが広く知られているカフェインは、体内に入ると交感神経を優位にし、同時にリパーゼという酵素を活性化させます。リパーゼは脂肪をエネルギーとして活用されやすい形に分解をし、血液中に放出します。このようなしくみで、カフェインは脂肪をエネルギー源として消費されやすくするため、脂質代謝が高まることにつながります。

コーヒーと高脂血症の疫学

紙フィルター未使用の煮沸コーヒーは、コレステロールを上昇させるという報告がされています。コーヒーには、ジテルペンという物質が含まれており、この物質はコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)を上昇させる作用があります。コーヒーにはやせる効果があるとよく知られていますので、驚きのマイナス作用です。しかし、紙フィルターの使用によりジテルペンは除去されるため、コレステロールを上昇させないことがわかっています。コーヒーを多量に飲用(5杯以上/日)する人は、紙フィルターを用いてコーヒーを淹れることをおすすめします。

健康の「底上げ」に活用しましょう

覚醒効果以外にも、様々な効果が期待できるコーヒーですが、ただそれだけに頼っていても、健康になるわけではありません。これらの効果を高め、有効に活用するためには、運動や休養を組み合わせ、生活習慣自体を見直す効果を、コーヒーが底上げしてくれると認識しておくことが大切です。

参考文献・URL
1. http://www.nestle.co.jp/consumer/coffee/health.html
2. https://www.nestle.co.jp/nhw/coffee
3. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-005.html
4. からだの科学244号P34-38(2005)
5. からだの科学244号P42-46(2005)


石塚 志乃(いしづか しの)
・元スキークロスW杯日本代表
・マスターズ陸上(短距離)
・ワールドマスターズゲームズ2021へ挑戦
小学校からスキーを始め、中学ではアジア大会に出場。中学2年のジュニアオリンピックを最後に引退。
その後は同時に続けていた陸上競技の100m、走り幅跳びの選手として全国大会に出場した。
一度はスキーから離れたものの、2003年再びスキーを履き、誕生して間もない新種目スキークロスに本格的に挑戦することとなった。
03/04の国内シリーズでは、初参加でシリーズ総合優勝。04/05にW杯初出場。
2004年夏からは、第2の挑戦としてライフセービングの活動を始め、ビーチフラッグス、ビーチスプリントで全国大会入賞。オールシーズン活躍するマルチアスリートとして活躍した。
2007年冬季国体を最後に引退。世の中のオフィスワーカーに向けて健康を発信するトレーナー業を続けながら、3児の母となる。
限られた時間、限られた環境の中、何よりも心身の健康の大切さを身をもって強く感じ、再びトレーニングを開始。
2019年、陸上競技の世界へと戻る。現在2021年のワールドマスターズゲームズを目標に、仕事、家事育児との両立に奮闘中。
さまざまな競技スポーツを経験し積み重ねた身体能力と、競技への探求心、自分に負けないメンタルの強さを最大の武器にして、マスターズ世代の可能性を世に広めるべく、自分の限界をめざす。