「今度こそ運動習慣をつけたい!」「新しい習慣を身につけたいけど、なかなかうまくいかない…」そんな経験はありませんか?

「習慣化 コツ」というキーワードで、多くの人が、なんとかして自分にとって良い習慣を身につけようと、秘訣を探しています。

実は、新しい物事を習慣化させるために必要なのは気合いではなく、しっかりと科学的なアプローチが存在します。

本記事では、新しい習慣を効果的に身につけるためのコツを、最新の研究を基に紹介します。そもそも “習慣” とはなんなのか?どんなプロセスを経ると習慣となるのか?習慣化をジャマする原因と挫折を防ぐための戦略など、実践的かつ科学的に裏付けられたアドバイスを提供します。

習慣化のメカニズムを知り、あなたの日常生活に無理なく組み込むことで、よりより人生を過ごすための習慣を苦労なく身につけることができますよ。

そもそも “習慣” とは?

Health Psychology Review(ヘルス・サイコロジー・レビュー)に2013年に掲載された研究1によると、習慣は「過去に繰り返し実行された行動の状況に対して、自動的に作られた行動パターン」と定義されています。

この定義から考えると、何かの行動を習慣化させるためには、以下の要素が必要であることがわかります。

  1. 繰り返し実行する
  2. 実行する際の「状況」も行動パターンに含まれる

つまり、ただただ習慣化したい行動を繰り返すだけではなく、その行動を実行する状況もセットで設定しておくことで、その行動と状況が行動パターンとなって、習慣化(=自動化)していきます2

新しい物事を習慣化させるには平均で「66日」かかる

成人を被験者としてイギリスで行われた研究3によると、参加者それぞれが自由に「新しく習慣にしたいこと」を1つ設定し、それがしっかり新しい習慣として身につくまでにどれくらいの日数がかかったのかが調べられました。

結果、早い人は「18日」、時間がかかった人は「254日」かかったと示され、平均すると「66日」であったことが報告されています。2ヶ月ちょっとくらい、ということになりますね。

習慣化のコツ:科学的な新しい習慣の身につけ方

ここから、何か新しいモノゴトを習慣化させる上で押さえておきたいポイント、コツを5つ紹介します。この5つのポイントを考えた上で習慣化をスタートさせると、習慣化の成功率がグンと上がるはずです。

1)「〇〇を習慣にするぞ!」と自分で決める

Lallyらの研究1では、「自分で決める」ことで、いざその行動を実行した際に「この行動をちゃんとできた自分エライ!」と達成感や満足感を得ることができ、その気持ちが、習慣化の後押しをしてくれる、と示されています。

まずは、習慣化したいことがあなたにあれば、それを「習慣化させるぞ!」と自分で決めましょう。

みなさんも一度は、誰かにやれと言われたらやりたくなくなった、という経験はありませんか?これは行動科学で「リアクタンス(Reactance)」と呼ばれる反応で、人から何かを強制させられたり無理に押し付けられたりすると、たとえその行動が自分にとってそんなに無理なくできるようなものであったとしても、やりたくなくなってしまいます。

誰かに「これやりな!」と言われたからなんとなくやる、のではなく、しっかりと「これを習慣にするぞ!」と自分で決めて、習慣化のスタートを切りましょう。

2)すでに習慣になっている行動に、新しく習慣化したい行動をくっつける

習慣化したいことを決めたら、次は「いつやるか」を決めます。例として「毎日30分ウォーキングをする」を習慣化させたいとします。

いつやるかを決める上でのポイントは「時間で決めずに、今の自分の習慣行動にくっつける」ことです(←ここが本記事の中で一番重要です)。

例えば「夜21時にウォーキングをする」と決めてしまうと、仕事が長引いて帰宅が21時を回ってしまった時に「21時過ぎちゃったからやらなくていいや」となりやすくなります。

よってコツは「夕ご飯を食べたらウォーキングをする」や「洗濯物をとりこんでたたみ終わったらウォーキングをする」など、普段必ずやっている、すでに習慣となっている行動に、新しく習慣化させたい行動をくっつけましょう。

習慣行動に紐付けることで、その習慣行動が一種の “トリガー” となり、次の行動=新しく習慣にしたい行動を実践しやすくなります。

3)新しい行動の実行が面倒にならないように「事前準備」をしておく

習慣になっていない行動を実行することはエネルギーが必要であり、ちょっとしたこと、例えば「暑い」「ちょっとだけ腰が痛い」「今日は仕事しなきゃだから時間がない」「今日は疲れた」といったネガティブな感情や状況で、「今日はやらなくていいや」となりやすいです。

もしあなたが「夕ご飯を食べたらウォーキングをする」と決めた場合、ウォーキングをするための準備が面倒と感じて、上記したようななにかしらの理由をつけて今日はやらない、という選択になってしまうことが多いです。

ウォーキングをするための準備とは、例えば以下のようなものを指します。

  • ウォーキングするための服装に着替える
  • 水分補給用のペットボトルを持つ
  • 腕時計をつける
  • ウォーキングシューズを下駄箱から出して履く
  • どんなコースをウォーキングするか決める

このような準備が面倒だと感じないように、あらかじめできる準備は事前にやっておくことで、習慣にしたい行動を行いやすくなります。

例えば、朝、仕事着に着替える時に、一緒にウォーキングのための服も用意して出しておくことで、ウォーキング前に「服を用意する」という行動をする必要がなくなり、ただ着替えるだけになります。

もし腕時計を別の場所に置いている場合は、用意した服と一緒に置いておきましょう。玄関にスペースがあるのであれば、ウォーキングシューズは出しっぱなしにしておくことですぐ履けますよね?

このように、ちょっとしたことでも、事前に準備しておけるようなものは何かのついでに一緒に準備してしまい、いざ習慣化したい行動をする際の「準備時間」をできるだけ簡略化して、すぐにその行動を実行できるようにしましょう。

なにかしらの理由をつけるヒマを与えず、せっかくここまで準備しておいたんだからやるか、といった心理も働くことで、行動を起こしやすくなります。

4)たまにできない日があっても全く問題ない

「習慣化させるぞ!」と気合を入れて行動を開始して、最初の数日は順調にできていても、なんらかの理由(残業だった、すごい雨だった、腰痛がひどかった、など)でどうしてもできなかった、という日が現れてしまうことは必ずあります。

そんなときに「あぁ、ずっと継続できていたのにできなかった…もうダメだ…」と落ち込み過ぎないようにしましょう。

例えば、毎日〇〇をやる、という習慣づくりをしている期間中に、1日できなかった日があったとしても、次の日にできれば、習慣化が遅れるといったことはありません4

ただ「1週間以上」やらない日が続いてしまうと、習慣化されなくなってしまう可能性が高くなります1,4

どうしてもできない日が生まれてしまうのは仕方ありません。1回できない日があったことで「習慣が途切れた…習慣化失敗だ…」となってもうやめてしまうのではなく、「今日はできなかったから明日はちゃんとやろう!」と気持ちを切り替え、しっかりと次の日に実行することで、ちゃんと習慣化は進んでいきます。

5)記録をつける(セルフモニタリング)

レコーディングダイエットで痩せる【減量成功率がグンとアップ】」の記事でも紹介しましたが、記録をつけることは、新しい習慣を身につける上でとても効果的な方法です5

ウォーキングの習慣づくりであれば「何分歩いた」「何km歩いた」「何歩歩いた」など、記録をするものはなんでも構いません。

「記録をする」という行為によって「今日もちゃんとできた!」というような喜びや満足感を生み、この「ポジティブな感情」という報酬が、習慣化を後押ししてくれます。

まとめ

科学的な新しい行動を習慣化する方法、というテーマで、様々なコツをお伝えしました。

「その行動をしないと逆に気持ち悪い」という感情になれば、それが習慣化したサインです。

もしあなたが心底「習慣化させたい」というものがあれば、ぜひ本記事を参考に「すでにルーティーン化されている行動」に紐づけて、習慣化をスタートさせていきましょう。

より充実した人生を作り上げるために、習慣の力をうまく使っていきましょう。

参考文献・資料

  1. Lally P, Gardner B. Promoting habit formation. Health Psychol Rev. 2013;7(sup1):S137-S158. ↩︎
  2. Neal DT, Wood W, Labrecque JS, Lally P. How do habits guide behavior? Perceived and actual triggers of habits in daily life. J Exp Soc Psychol. 2012;48(2):492-498. ↩︎
  3. Lally P, van Jaarsveld CHM, Potts HWW, Wardle J. How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. Eur J Soc Psychol. 2010;40(6):998-1009. ↩︎
  4. Armitage CJ. Can the theory of planned behavior predict the maintenance of physical activity? Health Psychol. 2005;24(3):235-245. ↩︎
  5. Michie S, Abraham C, Whittington C, McAteer J, Gupta S. Effective techniques in healthy eating and physical activity interventions: a meta-regression. Health Psychol. 2009;28(6):690-701. ↩︎