松本大学人間健康学部長、根本賢一先生による「インターバル速歩」に関するインタビューの最終回です。

第1回の「なぜ運動不足を放置してはいけないのか?」、第2回の「インターバル速歩実践!やり方・運動効果・注意点も紹介!」では、運動の必要性から、インターバル速歩の具体的な実践方法について、お伺いしてきました。

今回は「運動が苦手でなかなか運動を続けることができない」という人が、どのようにすれば運動を継続することができるのか?について、継続できる工夫やアイデアをご紹介いただきました。

【前回までの記事はコチラ】
【根本賢一氏インタビュー①】 今こそ歩きましょう!運動不足を放置してはいけない理由とは?
【根本賢一氏インタビュー②】インターバル速歩実践!やり方・運動効果・注意点も紹介!


【監修者】根本賢一

  • 松本大学人間健康学部長 / 教授 / 博士(医学)

中高齢者を中心とする全世代的な地域の健康づくりの実践的研究者。健康効果の高いと評判の「インターバル速歩」の共同研究者。トレーナーとして、アトランタオリンピックに参加するなど、これまで多数のプロスポーツ選手の体力コンディショニング指導。医療法人横浜未来ヘルスケアシステム副理事長、熟年体育大学理事も務める。

運動が苦手な人でも運動を継続するコツ

編集部
「運動をした方が良いと分かっていても、なかなか続かない…」という方はどうしたら良いでしょうか?

根本先生
前回もお話しましたが「歩けてラッキー!」「動けてラッキー!」の考え方はとても大切だと思います。

運動するぞ!と意気込むとなかなか続かない方が、日常生活のちょっとした移動を活用して、階段があれば「運動するチャンスだ!」と捉えられると、特別に時間を確保しなくても、日常の身体活動量が増えていきます。

また、継続の工夫としては「仲間を見つけること」「記録をつけること」がポイントです。

まず「仲間を見つけること」ですが、運動自体は1人でやっていたとしても、「最近やってる!?」「調子はどう?」などと、声を掛け合える仲間がいると、運動の継続率がグンと上がります。

私の大学でも、教職員(希望者)に活動量計をつけてもらって歩数や活動量を測り、そのデータをクラウドにアップする機械を大学のエントランスに設置しています。

そこを通る際に皆さんが、機械に活動量計をかざす習慣があるので、仲間を見かけたら「あれ?データアップしていないの?」「先週どのくらい歩いた?」などと声を掛け合うきっかけとなり、横の繋がりができています。

また、そのデータを集計して、毎月「歩数」と「運動量」が多かった上位5名をランキングで発表し、そこに健康コラムも掲載するといった活動を長年続けているため、コロナ禍になってからも、参加している皆さんの運動量は落ちませんでした。

会社や部署、チーム等でこの様な取り組みができれば理想的だと思いますし、身近な家族や友人を誘って、活動量計やアプリを利用してお互いに結果を報告しあう、という方法であれば、すぐにでも始められると思います。

また、この様なコミュニティーの輪を広げて行くには「体験者の口コミ」がとても重要です。私たちの様な指導者がいくら言っても運動しなかった人が、同僚や家族が運動を始めて「スッキリ痩せた!」「健康診断の結果が劇的に改善した!」などの姿を見ると、「一体何をやったの!?」「私にも教えて!」と急に興味を持ち出します。

そこで、じゃあ一緒にやろうよ!と巻き込んでいけると、仲間も増えて運動を継続する “支え” となり、良い循環が生まれていくかと思います。

誰かに言われたからやる、強制的にやらされる、のではなくて、自ら興味を持って主体的に始めた事は続きやすいと思います。

運動は1人でやりたいという人は「記録をつける」

編集部
素晴らしい取り組みですね!「仲間に声をかけるのは苦手で…」「運動は出来れば1人でやっていきたい」という方には、どのようなアドバイスをされますでしょうか?

根本先生
1人でやりたい、という方も多いですよね。その場合は「記録をつける」事をお勧めしています。

編集部
「記録をつける」というのも継続が難しくないでしょうか?私は昔から日記なども三日坊主になりがちです…。

根本先生
記録と言っても、どんな運動をしたかを事細かに入力したり、何か素晴らしい運動結果を書いたり、といった必要はありません。

先ほどもご紹介した「活動量計」や「ウェアラブル」のようなものを利用すれば、ただ電源を入れて装着しているだけで、記録が自動的に取れます。

また、全く運動をしなかった日は「こんなにも動かなかったんだ」という記録が残るため、ご自身の現状の把握や気づきにつながっていきます。

動かなかった日が何日が続いてしまったら、1回目のインタビューでご紹介した「運動の必要性」を少し思い出してもらって、次の日は今日より少しだけ動こう!というモチベーションに繋げて頂けると嬉しいです。

編集部
なるほど!装着しているだけで自動的に記録が取れるのであれば、わざわざ記録するのは面倒だな…と感じる人でも問題なくできますね。

根本先生
あとは、継続していく上で、ご自身の趣味とドッキングさせると楽しく続けられますよ。

カメラが趣味の人であれば、カメラを持って色々な所に歩きに行くとか、この辺(長野県)であれば、山菜やきのこが採れたりもするので、そういった楽しみのついでに歩く様にすると良いと思います。

編集部
前回お伺いした、生活パターンを変えずに「歩くチャンス」を見つけるという所にもつながりますね!私は、カフェに行くのが好きなので、「カフェ巡り」にウォーキング要素をプラスして、テイクアウトを楽しんでみたいと思います!!

根本先生、貴重なお話をありがとうございました。

編集後記

全3回にわたる根本先生へのインタビュー連載、いかがでしたでしょうか?

コロナ禍、リモートワーク等で運動不足・コロナ太りを感じていらっしゃる方は、今までは通勤や何気ない移動が「良い運動」になっていて、それを運動として特別意識していなかったからこそ、知らない間に活動量が確保出来ていたとも考えられる、ということに気づかされました。

運動は苦手、もしくは継続することに不安があるという方こそ「特別な運動」を張り切ってスタートさせるのではなく、今ある生活を大きく変化させずに、ちょっとした「歩くチャンス」や「動くチャンス」がないかどうかを振り返ってみたり、活動量を少しでも増やせるチャンスを作り出せないかを考えてみてはいかがでしょうか?

ちょっとしたチャンスに、ちょっと動く。それを毎日無理せずに継続する。ということが、運動が苦手な人でも運動を継続するコツです。

運動不足の解消に、少しでも参考になれば幸いです。