熱中症対策として様々な方法がメディアでは紹介されていますが、必要不可欠な熱中症対策の1つが「水分補給」です。

一般的に、ヒトは1日に「約2.5リットル」の水分を失うと言われていますが、その人の1日の活動量や身体の大きさによっても変わってくるため、一概に「1日何リットルの水分を補給するべき」と言うことができません。

本記事では、なぜ熱中症対策に水分補給がそんなに大事なのかの解説と、水分補給を極めるために知っておくべき7つのポイントをご紹介していきます。

なぜ熱中症対策に水分補給が重要なのか

体温の上昇を防ぐことが、熱中症を防ぐ上で非常に重要なポイントとなります。

そして、その体温の上昇を防ぐために起こる身体の反応(=体温調節機能)が「血液を皮膚表面に運んで熱を外に出す」ことと「汗をかく」ことです。

この「血液」と「汗」ですが、これはどちらも「水分」です。

つまり、体内の水分が少なくなってしまうと、皮膚表面に運ぶ血液の量が減って熱が効率よく体外に放散されなかったり、汗をたくさんかくことができなくなってしまうため、結果として体温が過度に上がってしまい、熱中症を引き起こします。

その他にも、脱水によって血液量が減ってしまうと、血液によって充分な酸素や栄養素を全身に運ぶことができなくなってしまうため、筋肉の働きが低下したり、すぐに疲れを感じたりと、運動パフォーマンスや脳機能が低下してしまいます。

水分は、身体のあらゆる機能に関わっているため、熱中症対策としても水分は不可欠なものと言えます。

水分補給を極めるための7つのポイント

では、熱中症対策としての水分補給において、知っておくべき重要なポイントを7つ紹介していきます。

1)「のどが渇いた」と感じたときはすでに脱水状態

「のどの乾き」という症状が表れるのは、体内から体重の2%の水分が失われたときです1

体重の2%の水分が身体から失われると、以下のようないわゆる「脱水症状」が現れます。

  • 倦怠感 / 疲労感
  • 肌が赤く火照っている
  • 頭痛
  • 吐き気 / 嘔吐
  • 筋肉のけいれん(つる)

上記した症状に加えて、運動パフォーマンスの低下や認知機能の低下、更には体温調節機能の低下も起こるため熱中症によりなりやすくなってしまいます。

「のどが渇いた」と感じたらすでに脱水状態にある、ということを覚えておき、より積極的に、こまめな水分補給を心がけましょう。

2)おしっこの色をチェックして水分補給が足りているかを確認

のどが渇いてからの水分補給では遅いという話をしましたが、今自分は水分補給が足りているのか、それとも脱水状態なのか、を知る上で参考になるのが「おしっこの色」です2

トイレにいったとき、尿が上画像の「おしっこの色確認シート」で「5」が示している色であった場合(もしくはそれ以上)、体重の2%以上の水分が失われていると考えられます。

毎回トイレにいったら尿の色を確認してみましょう。そして、常に1〜3の色であるように、こまめな水分補給を心がけましょう。

3)冷たい水分の補給で体温を下げる

水分補給によって体内の水分量を保つことは、汗をかくことや、運動パフォーマンスや認知機能の維持・向上において非常に重要ですが、更に「冷たい水分」を補給することで、体温を下げる効果も期待できます。

水分の体内への吸収の速さや身体の冷却効果を考えると「5〜15℃」がベストであろうということが、環境省から発行されている熱中症環境保健マニュアル20223に示されています。

ぜひ暑い夏は「冷たい水分」をこまめに補給して、水分の補給に加えて体温の低下も行っていきましょう。

4)「飲む」水分補給だけでなく「食べる」水分補給も

児童を対象とした研究ではありますが、「普段の野菜とフルーツの摂取量」と「体内の水分量」の関係を調査した研究4によると、普段から野菜やフルーツを多く食べていた人ほど体内の水分量は多く、脱水になるリスクは低かったことが報告されています。

「水分補給」と聞くと「飲む」ことをイメージする方が多いかと思いますが、「食べる」ことによって「水分補給+エネルギー補給」をしっかりと行うことで、脱水を防ぐとともに、熱中症を予防する上でも重要となります。

「食べる水分補給」としておすすめの食材は以下の通りです5

  • きゅうり
  • にんじん
  • たまねぎ
  • なす
  • トマト
  • ほうれん草
  • ブロッコリー
  • セロリ
  • 魚(お寿司 / お刺身 / シーフードサラダなど)
  • りんご
  • オレンジ
  • ぶどう
  • グレープフルーツ
  • メロン
  • ベリー系(いちご / ブルーベリー / ラズベリー など)

5)長時間の運動・身体活動中はスポーツドリンクを摂取

一般的に「運動や身体活動時間が1時間以内」であれば、水のみの補給でも十分であることがわかっています1

しかし、1時間以上の運動量、身体活動量になる場合は、汗によって失われる塩分(電解質)、更にエネルギーも多く消費することになるため、糖分・塩分(電解質)を含むスポーツドリンクを飲むことで、熱中症予防・対策に効果的となります。

暑熱環境下での運動・身体活動中にスポーツドリンクを摂取する際は、糖質の量が少なめ(100mLあたり4グラム以下)のスポーツドリンクの使用がおすすめです。

糖質が多いと水分の吸収速度が少し遅くなるため、素早く水分摂取をしたい暑熱環境下では、以下のようなスポーツドリンクを選ぶと良いでしょう。

  • ポカリスエット イオンウォーター(100mLあたり糖質約2.7グラム)
  • アミノバリュー(100mLあたり糖質約3.6グラム)
  • ヴァーム【VAAM】(100mLあたり糖質約0.7グラム)
  • アミノバイタルGOLD(100mLあたり糖質約2.8グラム)

6)脱水の症状が現れたら経口補水液を利用する

経口補水液は「水分を体内により効果的・効率的に吸収させるために、塩分(電解質)と糖分がバランス良く配合された飲み物」であり、脱水状態となってしまった人の治療として使われるものです。

よく勘違いして利用されている方も見受けられますが、経口補水液は「脱水状態になってしまった身体に、できるだけ早く水分と塩分を吸収させるために作られた液体」のため、「熱中症を予防するために普段からこまめに飲む」ための水分ではありません。

大塚製薬は「オーエスワン®」という経口補水液を出していますが、そのオーエスワン®の公式サイトには、以下の記述があります6

軽度から中程度の脱水状態の方の、水・電解質を補給、維持するのに適した病者用食品です。感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態、高齢者の経口摂取不足による脱水状態、過度の発汗による脱水状態等に適しています。

日常生活でのこまめな水分補給には「水」や「スポーツドリンク」といったものを使用し、脱水状態や体調不良の際に経口補水液を摂取しましょう。

7)アルコール飲料には利尿作用あり

暑い夏は特に美味しく感じるビールですが、アルコール飲料には利尿作用(=おしっこをたくさん出す作用)があるため、脱水に注意しなければいけません。

文献1には「4%以上のアルコールを含む飲み物は過度な利尿作用を引き起こす」ということが明記されているため、アルコール度数4%以上の飲み物を摂取するときは特に注意が必要です。

また、ビアガーデンやバーベキューなど、屋外で汗をかきながらのアルコール飲料の摂取は一気に脱水を促進するため、脱水症状や熱中症のリスクが上がります。

アルコールを摂取する際は、一緒に水も飲むようにして、脱水に注意しながら楽しむようにしましょう。

まとめ

以上、熱中症対策において水分補給がなぜ重要なのかの解説と、水分補給をより効果的に行う上でのティップスを7つ紹介しました。

こまめにちょくちょく水分を補給していれば(一気飲みをたくさんしなければ)、体内に増えすぎた水分はすぐに尿として出ていくため、飲み過ぎによるネガティブな作用は心配する必要はありません。

ぜひ暑い夏は、常に水分を手元に用意して、こまめに水分を補給して、快適な夏を過ごしましょう。

参考文献・資料

  1. McDermott BP, Anderson SA, Armstrong LE, et al. National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Fluid Replacement for the Physically Active. J Athl Train. 2017;52(9):877-895. doi:10.4085/1062-6050-52.9.02
  2. McKenzie AL, Muñoz CX, Armstrong LE. Accuracy of Urine Color to Detect Equal to or Greater Than 2% Body Mass Loss in Men. J Athl Train. 2015;50(12):1306-1309. doi:10.4085/1062-6050-51.1.03
  3. 環境省熱中症予防情報サイト 熱中症環境保健マニュアル 2022. https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
  4. Montenegro-Bethancourt G, Johner SA, Remer T. Contribution of fruit and vegetable intake to hydration status in schoolchildren. Am J Clin Nutr. 2013;98(4):1103-1112. doi:10.3945/ajcn.112.051490
  5. Nutrition & Beverages. European Hydration Institute. Accessed June 17, 2023. https://www.europeanhydrationinstitute.org/nutrition_and_beverages/
  6. 経口補水液オーエスワン(OS-1)|大塚製薬工場. 経口補水液オーエスワン(OS-1)-軽度から中等度の脱水症に|大塚製薬工場. Accessed June 17, 2023. https://www.os-1.jp/

永吉みねこ
管理栄養士
「献立に悩む女性のための出張料理&栄養レッスン」主催。 簡単・おいしい・栄養◎なレシピをモットーに1,000以上のレシピを提供。
レッスン受講者は300名以上。女性セブンや各種WEBへのレシピ記事提供、栄養カウンセリングも行う。
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