みなさん、今の自分の「握力」がどれくらいか、ご存知でしょうか?

学生時代に体力測定で測った!という方は多いかと思いますが、社会人以降、定期的に握力を測っている方は少ないのではないでしょうか?

今回は「握力+4項目(身長・体重・腹囲・閉眼片足立ち)」で算出する、新しい健康指標「身体年齢(パーソナルスコア®)測定」をご紹介します。

健康経営の一環として、もしくは健康経営の担当者として、効果的な健康支援を行うためには、まず従業員の健康状態を把握することがとても重要です。

身体年齢の測定は、現在の身体の状態を可視化することで、従業員の健康リスクを早期に発見することができるとともに、個別に具体的な改善策の提案も可能になります。

本記事では、身体年齢とはどういうものなのか?という基本情報から、握力や閉眼片足立ちを測定することでわかる生活習慣病のリスクについてや、身体年齢を若返らせるオススメの筋トレやバランストレーニングもご紹介します。

健康経営を担当する方にとっては、この身体年齢測定によって、従業員の方の健康促進はもちろん、生活習慣病予備軍の方や運動不足の方とコミュニケーションを取るキッカケにもなり、更には企業全体の生産性向上にもつながる施策となるかと思いますので、ぜひ健康経営の取り組みの中に取り入れてみてはいかがでしょうか?

簡易でオープンな健康指標「身体年齢(パーソナルスコア®)」

「身体年齢」は、握力・身長・体重・腹囲・閉眼片足立ち(開眼でも可)の5項目で算出する健康指標です。

みなさんが健康診断などでよく目にする「BMI(体格指数)」は、体重と身長のみで算出されています。

BMIは、日本では「18.5〜24.9=標準」「25以上=肥満」という分類がされていますが、たとえ体重が減ってBMIの値が肥満から標準の値に下がったとしても、減ったのが体脂肪なのか、筋肉なのか、がわかりません。

筋肉量が減少して体重が減った場合、これは必ずしも「健康になった」「生活習慣病のリスクが低下した」とは言えないため、BMIの数値のみで健康度や生活習慣病のリスクについて考えるのは、少し注意が必要になります。

一方で、身体年齢測定では、体型(=プロポーション)の指標となる「腹囲」や、全身の筋力と相関性が高い「握力」、更に身体平衡機能(=バランス能力)をチェックする「片足立ち」など、短時間で計測可能な測定項目を用いて多角的に評価して、いわゆる「健康度」を身体年齢という形で評価していきます。

上画像の左側に示されている五角形のレーダーチャートは、青の線が測定結果、グレーの線が同年代の平均値を示しており、視覚的に自分のスコアを確認できるとともに、同年代の人たちとの比較もできるようになっています。

身体年齢を算出する4つの指標

身体年齢は、5つのスコア(GWRは左右あるため2つあります)のバランスによって算出されます。

1)BMI(Body Mass Index)

BMIは「体重(kg)÷ 身長(m)÷身長(m)」で算出される体格指数です。

「BMI=22」となる体重が「標準体重」とされ、統計上最も病気になりにくい体重とされています。BMIが25以上になると、脂質異常症や糖尿病、高血圧といった生活習慣病のリスクが2倍以上になるとされています1

2)WHtR(Waist Height Ratio)

WHtRは「腹囲(cm)÷ 身長(cm)」で算出される指標です。

WHtRの値が大きいほど肥満の傾向があり、0.5を超えると健康リスクが増加する可能性があるとされています。あまり聞き慣れない指標かと思いますが、WHtRは健康リスクを表す新たな指標として注目されています2

よく見られるパターンとして、加齢とともにBMIが下がっていき、逆にWHtRの数値が上がっていくことがあります。

これは、筋肉量の減少によって体重が軽くなることでBMIが下がり、内臓脂肪の蓄積によってウエストまわりが太くなってWHtRは増えるという、いわゆる典型的な “老人体形” であることを示しています。

このことからも、体重やBMIの数値だけでは、正確に健康度を測定できないことが分かります。

3)GWR(Grip Weight Ratio)

GWRは「握力(kg)÷ 体重(kg)」で算出される指標です。

握力は全身の筋力と相関があるとされています(握力が強い=全身の筋力も強い)。その握力を体重で割ることで、身体が引き締まった人が握力も高い場合に、高い値となります。

4)閉眼片足立ち

閉眼片足立ちは、身体平衡感覚(=バランス感覚)を表す代表的な指標です。

一般的に、年齢を重ねると身体平衡感覚は低下することがわかっているため、閉眼片足立ちの時間も低下します。

身体平衡機能が低下すると転倒をしやすくなるとともに、わずかなつまずきであっても被災の重篤度が高まる傾向があります3

握力と閉眼片足立ちで糖尿病リスクを評価できる

2018年に発表された新潟大学・東北大学の論文4によれば、糖尿病ではない21,802人を6年間追跡したところ、下記2点について明らかになったことを報告しています。

  1. 握力÷体重(GWR)の数値が低いほど、2型糖尿病の発症リスクが高かった。
  2. 閉眼片足立ちの成績が悪かった(=バランスをキープできた時間が短かった)群の2型糖尿病の発症リスクは高い値を示した。

握力や閉眼片足立ちの様に簡単な測定で、糖尿病リスクの予測も立てられるというところが、身体年齢測定の魅力の一つとなっています。

片足立ちのスコアが上がると認知症リスクが下がるかも

総合型地域スポーツクラブで行われた高齢者の体力づくり教室の参加者を、10年に渡って追跡調査を行った新潟県魚沼市の上村伯人氏の試みについて、第92回日本産業衛生学会で報告されたのは、下記2点についてでした。

  1. 体力づくり教室に参加している人は、そうでない人と比べて、「1分間で出来る限り多くの動物名を想起する」というテストのスコアが良かった。
  2. 開眼片足立ち・年齢・握力・長座体前屈・歯の本数・上体起こし・椅子立ち上がり・10m障害物歩行のスコアなど、複数の因子の中で、開眼片足立ちのスコアと動物名想起テストのスコアとの関連性が一番高かった。

このことから、閉眼片足立ちをできるだけ長くキープできるようになることは、身体機能だけでなく「脳の認知機能アップ」とも関係がある事が予想されます。

片足立ちのスコアアップを目指して、定期的な測定とバランストレーニングを行う事は、バランス能力を向上させ、転倒リスクを軽減させるだけでなく、認知機能の向上も期待できるということが言えます。

身体年齢を若返らせるオススメトレーニング

ここまで、握力や閉眼片足立ちが、身体機能や脳機能、健康度に関わっていることをお伝えしてきました。

ここからは、身体年齢を若返らせるために、握力とバランス能力の向上に効果的なおすすめのトレーニング方法をご紹介します。

1)身体年齢若返り術①「全身筋力を向上させるスロースクワット」

身体年齢を若返らせるために重要な要素の1つ目は「全身筋力の向上」です。そのためにオススメなのが「スロースクワット」です。

スロースクワットとは、一般的なスクワットよりもゆっくりと時間をかけて行うスクワットです。ゆっくり行う事で関節への負荷も少なく、自宅でも簡単に行える筋トレです。

一方で、関節を伸ばし切らずに力を入れた状態をキープすることで、少ない回数でも筋肉に大きな負荷がかかるようになるため、無理の無い範囲で行いましょう。

  1. 脚を肩幅程度に開いて立ちます。両手は、体が安定するように腰に当てるか、胸の前でクロスにして組みます。
  2. 3~5秒かけて、お尻を斜め後ろ方向に下げながら腰を落とし、3~5秒かけて立ち上がります。立ち上がる際は、膝を完全に伸ばしきらないようにして、滑らかに動き続けるとGOOD!
  3. 5~8回程度繰り返します。呼吸を止めずに行いましょう。

前述したように、握力と全身の筋力には相関関係があるため、全身の筋力を向上させることで、握力も向上していきます。

2)身体年齢若返り術②「バランス能力を向上させる足裏ほぐし」

バランス能力を簡単に向上させる「テニスボールで足裏ほぐし」をご紹介します(上画像はスーパーボールを使用しています)。

  1. まず、ほぐす前に、裸足になって床の上に立ち、ほぐす前の足裏の感覚をチェックします。
  2. テニスボール(他のボールでもOK)を床に置き、右足裏を乗せて体重をかけます。
  3. “痛気持ちいい” 程度の圧を目安にして、「①土踏まず内側」「②小指からかかとにかけての外側ライン」「③親指の付け根〜小指の付け根にかけての横ライン」「④かかと」の4ポイントを含めた足裏全体をほぐします。特に硬さを感じる部分は、無理せず丁寧にほぐしましょう。
  4. ある程度ほぐしたら、次は足裏でテニスボールを転がすようにして、軽く体重をかけて踏んだ状態でボールを前後左右に動かします。
  5. 左足裏も同様にほぐしましょう。

両足裏をほぐせたら、改めて裸足で床の上に立ってみて、足裏の感覚の変化や、立ったときの安定感の変化を感じてみましょう。

足裏ほぐし以外の「バランストレーニング」について知りたい方は、ぜひ「仕事や作業中の転倒予防ガイド|オフィスや現場での転倒事故を防ぐ」の記事もぜひチェックしてみてください。

まとめ

いかがでしたか?健康度を測る指標として「身体年齢」をご紹介しました。

従業員のヘルスリテラシーを高めたい!健康経営施策として何かイベントを行いたい!と考えていらっしゃる担当者の方は、是非「身体年齢測定」を検討してみてはいかがでしょうか?

測定を行うことで、自身の健康へ意識を向けるキッカケになります。そして、そこから日々少しずつでも生活習慣やワークスタイルを見直す事で、1年後、2年後のみなさまのコンディションが確実に変わっていきますよ。

身体年齢測定についての更に詳しい概要はこちらのページ(https://www.aspo-net.com/lp/)からご覧いただけます。ベーシックなプランから、様々なニーズに合わせたカスタマイズプランもご用意しておりますので、ご興味があればお気軽にご相談ください。

参考文献・資料

  1. BMI. e-ヘルスネット 情報提供. Published 2024. Accessed September 26, 2024. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html
  2. Ashwell M, Gibson S. Waist-to-height ratio as an indicator of ‘early health risk’: simpler and more predictive than using a ‘matrix’ based on BMI and waist circumference. BMJ Open. 2016;6(3):e010159. Published 2016 Mar 14. doi:10.1136/bmjopen-2015-010159
  3. 職場のあんぜんサイト:STOP!転倒災害プロジェクト:加齢と転倒災害. anzeninfo.mhlw.go.jp. https://anzeninfo.mhlw.go.jp/information/tentou1501_13.html
  4. Momma H, Sawada SS, Kato K, et al. Physical Fitness Tests and Type 2 Diabetes Among Japanese: A Longitudinal Study From the Niigata Wellness Study. J Epidemiol. 2019;29(4):139-146. doi:10.2188/jea.JE20170280