「姿勢がすごく悪いんだよなぁ」「姿勢を良くしたいなぁ」と考える方は多いかと思います。

特にデスクワーカーは、仕事中に「あっ、自分今すごく姿勢悪いな」と気がついて、そのときは姿勢を正してみるものの、数分後にはすぐ悪い姿勢に戻ってしまう、というようなパターンが多いのではないでしょうか?

実際に、姿勢や座り方が悪いと、すぐにエネルギー切れとなって疲れてしまったり、身体のあちこちに痛みが発生したり、脳機能が低下してしまったりと、ワークパフォーマンスを著しく低下させることがわかっています。

本記事では、「姿勢を良くしたい」「仕事の生産性がアップするような正しい座り方を知りたい」というデスクワーカー向けに、正しい座り方を作るための6つのポイントを写真付きで詳しく解説していきます。

どのポイントもすぐに実践できるものばかりなので、まずは1つだけでも取り入れてみて、少しずつ正しい座り方を身につけて、快適なデスクワークにしていただければと思います。

姿勢や座り方が悪いことで起こる3つのデメリット

そもそも姿勢や座り方が悪いと、デスクワーカーにとってどんなデメリットがあるのでしょうか?

1)局部的な筋疲労や痛み

猫背、反り腰、ストレートネック、左右の歪み姿勢など、継続的に不良姿勢をとっていると、一部の筋肉のみに過度な負荷がかかるため、その筋肉の凝りや疲れ、痛み(頭痛、首凝り、肩こり、背中の張り、腰痛、鼠蹊部の痛み、膝痛、こむら返りなど)が発生してしまいます1

2)脳機能の低下

背中が丸まった「猫背姿勢」は、呼吸が浅くなり、全身の血流も低下します2

呼吸が浅いということは、体内に入ってくる酸素の量が少ないということになります。脳がしっかりと活動するには酸素が必要なため、酸素が少ないと、集中力や判断力、思考力の低下といった脳機能の低下を引き起こします。

また、酸素は血液に乗って脳を含めた全身に運ばれるため、猫背姿勢は、体内に入ってくる酸素の量が少なく、更にその少ない酸素も血流が悪いためにうまく全身に運ばれない、という二重のデメリットが発生することになってしまいます。

3)自律神経のバランスの乱れ

交感神経と副交感神経からなる「自律神経」は、姿勢が悪いとうまく働かなくなってしまいます3

前述したように、猫背姿勢のような背中が丸まった姿勢では呼吸が浅くなるため、交感神経の活動が活性化します。

不良姿勢が続くことによって、常に交感神経が優位な状態となってしまい、副交感神経がうまく働かず、身体のリラックスや食べ物の消化吸収、良い寝付きなどができなくなります。

特に寝付きの悪さは睡眠の質の低下につながるため、睡眠不足を引き起こし、体調の悪化につながってしまいます。

「自律神経」について詳しく知りたい方は「夏バテ予防はお早めに〜自律神経を鍛える夏バテ予防方法〜」を、寝付きを良くしたいとお考えの方は「寝付きが悪い人必読!寝付きが良くなる6つの入眠スイッチ」の記事をお読みください。

正しい椅子の座り方を作る6つのポイント

快適に、そして高いパフォーマンスで仕事を行うためにも、正しい座り方を知り、実践することはデスクワーカーにとって不可欠です。

では具体的に、正しい椅子の座り方を作るためのポイントを解説していきます。

1)骨盤の傾きをニュートラルにする

椅子に座っているときの骨盤の傾きは、前傾でもなく後傾でもなく「ニュートラル」の状態が理想です。

骨盤のニュートラルを作るための方法は以下の通りです。

  1. 椅子に座ったら、お尻の下に手を入れます。
  2. その手で「硬いとがった骨(=骨盤の一番下にある坐骨)」を探します。
  3. その坐骨をしっかり立てて、そこに体重がしっかりと乗るように座ることで、骨盤がニュートラルになります。

座っているとき、骨盤の後ろ側にある「尾てい骨」が座面に触れている感じがある場合、骨盤は後傾しています。

逆に、座っているときに体重が一番乗っていると感じる部分よりも坐骨が後ろにある場合は、骨盤は前傾しています。

坐骨がしっかりと座面に触れ、坐骨に体重が乗った状態で座ることで、上半身を支える土台がしっかりするため、腰周りをはじめとした身体への負担がかなり減ります。

2)背もたれのある椅子を使用する

骨盤の傾きをニュートラルにすることができても、それを長時間キープするのは大変ですね。そのため、骨盤の位置をラクに維持するために「背もたれ」を利用しましょう。

背もたれのある椅子に深く座り、背もたれの下側に骨盤〜腰のあたりをあてた状態で骨盤ニュートラルをつくることで、その骨盤のポジションを長時間ラクにキープすることが可能になります。

背もたれのない椅子を使用すると、骨盤ニュートラルを作ることはできても、すぐに骨盤が後傾しやすくなります。

正しい座り方をラクに維持するために、もしお仕事で使用している椅子に背もたれがない場合は、ぜひ導入を検討していただくと良いかと思います。

3)椅子の座面の高さを調節する

「椅子の座面の高さ」も、正しい座り方をつくる上で非常に重要なポイントです2

正しい座り方を作るための座面の高さの調節方法は以下の通りです。

  1. 椅子に深く座り、背もたれの下側に骨盤と腰をあてます。
  2. この場所で、1で解説したように、骨盤のニュートラルを作ります。
  3. この状態のときに「足の裏全体が床についている」「股関節の角度が90〜100°」になる座面の高さに調節します。

足の裏全体が地面についていることで身体が安定し、良い姿勢を長い時間ラクにキープできるようになります。

両足が床から離れてしまう場合は、背もたれと背中の間にクッションなどを挟んで、両足が床に接地するようにしましょう。

また、座面が低すぎると股関節の角度が90°以下となります。股関節90°以下の状態では、骨盤が後傾しやすくなってしまうとともに、股関節や膝関節の曲がりが深くなることで血流が悪化しやすくなり、筋肉が凝りやすくなります。

座面の高さを調節できない椅子の場合は、座布団や薄めのクッション等を敷いて高さを出して、股関節の角度が90〜100°になるように調節しましょう。

座面に敷くクッションが柔らかすぎると、骨盤が後傾しやすくなり、正しい座り姿勢を作りづらいため注意しましょう。

もしこれから椅子の購入をするという方は、ぜひ「背もたれ付き」で「座面の高さを調節できる」椅子の購入をオススメします。

4)頭が天井から吊られているように

「良い姿勢をキープしよう!」と意識して “頑張りすぎる” と、身体の筋肉は収縮して、緊張します。

筋肉の収縮にはエネルギーが必要のため、姿勢の維持にエネルギーを使い続けてしまうと、すぐに疲れてしまいます。

疲れれば、姿勢は崩れていってしまうため、良い座り姿勢を長時間維持するためには「頑張らない」のが重要になります。

骨盤をニュートラルのポジションにしたら、その骨盤の位置をキープしたまま、頭のてっぺんから糸で真上に引っ張られているのをイメージして、首を長くするように、背すじを自然にまっすぐ伸ばします。

この時、決して上半身は力まず、積み木のように、骨盤の上に腰が乗っていて、腰の上に胸が乗っていて、胸の上に首があり、首の上に頭が乗っている、という状態を作りましょう。

5)パソコンモニターの高さを調節する

正しい座り方を作る上でのパソコンのモニターの理想的な高さは「目線とモニターの上端が床と並行になる高さ」です4

この高さよりも低い位置にモニターがあると、目線は下に下がるため、うつむき姿勢になります。

背骨の真上に頭があるときの首への負荷を「1」とすると、頭がたった15°前に傾くだけで、首への負担は3倍の「3」となります5

モニターが低いことで、首や肩に負担がかかりやすくなり、首凝りや肩凝りの原因となります。

もし普段ノートパソコンで仕事をされている方は「PCスタンド」と検索するとたくさん商品が出てきますので、ぜひこちらの購入も検討いただくと良いかと思いますが、厚めの本を数冊重ねることでも代用できますので、ぜひお試しください。

首や肩への負担がグッと減ることを感じることができるかと思います。

6)肘をデスクの上に乗せる

肘が宙に浮いた状態でデスクワークを続けていると、腕の重さが肩にかかり続けることになります。

仕事しはじめは問題がなくても、徐々に肩に負担がかかってくると、その腕の重さを軽減するために、頭が前に出やすくなり、首凝りや肩凝りの他、ストレートネックや猫背といった不良姿勢の原因となります。

肘をデスクの上に乗せることで腕の重さが肩にかからなくなるため、ぜひパソコンやキーボードの位置をデスクの奥に移動してみましょう。

もし仕事デスクに奥行きがあまりない場合は、椅子の肘掛けに肘を乗せることでも負担を軽くすることが可能です。

まとめ

姿勢や座り方の悪さによって引き起こされる3つのデメリットをご紹介した後、正しい座り方を作るための6つのポイントを一つ一つ詳しくお伝えしました。

背もたれ付きの椅子、肘掛けのある椅子、PCスタンドなど、一部ツールが必要なものもありますが、道具の準備の必要がない、すぐに実践できるものもあったかと思います。

正しい椅子の座り方をつくるために、特別にどこかの筋肉をトレーニング等で鍛える必要はありません。ポイントを理解し、良い座り姿勢を維持しやすい環境を整えることで、誰でもすぐに快適な座り方を身につけることが可能です。

ポイント一つ一つは簡単なものばかりだったの思いますので、ぜひ実践していただき、毎日高いワークパフォーマンスを発揮して、楽しく快適にデスクワークを行っていきましょう。

参考文献・資料

  1. ZERO GYM. 超「姿勢」力. クロスメディア・パブリッシング; 2017.
  2. 酒井慎太郎. テレワークの腰痛・肩こりは自分で治せる. Gakken; 2021.
  3. 花岡正敬. あらゆる不調は姿勢力で治せる!. KKロングセラーズ; 2019.
  4. 平井孝之. 仕事で成果を出し続ける人が最高のコンディションを毎日維持するためにしていること. 東洋経済新報社; 2021.
  5. Hansraj KK. Assessment of stresses in the cervical spine caused by posture and position of the head. Surg Technol Int. 2014;25:277-279.