国内外のサッカークラブでコーチとして活躍し、FW三浦知良選手のパーソナルコーチとしても経験豊富な喜熨斗勝史(きのし かつひと)さんのコラム第4弾は、「トレーニングの組み合わせ」をテーマに記事をお寄せいただきました。


前回までの記事はこちら↓↓
Vol.1 なりたい自分を目指す Life Conditioning
Vol.2 ~トレーニング編~
Vol.3 〜トレーニングのキツさとその効果〜


今回のテーマは「トレーニングの組み合わせ」

こんにちは。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。リモートワークが増えて、外食もなくなり、ちょっとストレスを感じていらっしゃると思います。しかし、ここは我慢のしどころ。不要不急の外出は控えて、リモートワークを増やし、人と人との接触を減らして、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎましょう。やりたいことが出来なくても、命より大切なものはありません。アフターコロナに、よりアグレッシブに活躍できるように、このSTAY HOMEを“命を磨くトレーニングの時間”と捉えてみたらいかがでしょうか。

前回、トレーニング実施するときの負荷についてお話ししました。
トレーニングはその、負荷の高さによって、効果や疲労度が違うことをご理解いただけたと思います。そこで今日は、そのトレーニング効果をさらに大きくするために、負荷の違うトレーニングを組み合わせる、ということについてお話ししたいと思います。

トレーニングは組み合わせることで効果が上がる

「人は負荷がかかることによって、その適応能力により成長する」ということは既にお話しした通りです。しかし、そこには“トレーニング ⇒ 疲労 ⇒ 超回復(※1)”という一連のトレーニング効果サイクルがあるのです。つまり、トレーニングは、どんな負荷でも必ず疲労が伴うので、その疲労を回復させなければ、過労状態に陥ってしまう、ということです。同じ部位や同じ種類のトレーニングを繰り返し行うと、身体や心の一定の部分に負荷が蓄積してしまい、金属疲労のような状態に陥ります。マラソンのような、特定のスポーツに関わるアスリートでない限り、負荷や種類の違うトレーニングをバランス良く組み合わせて、このような金属疲労を避けるほうが、より高く、継続的な効果が得られるのです。

(※1)超回復:
トレーニングにより起こるエネルギーの枯渇や筋繊維の損傷が、適切に休息を取ることにより、回復の過程で次のトレーニングに備え、一時的にトレーニング前よりも筋力の向上や筋肥大が見られる現象

例えば、体重を落とすとか、糖尿病の予防に、有酸素運動が有効なことは有名な話です。しかし最近では、有酸素運動だけを行うよりも、ある程度の負荷の筋トレを行って、全身の筋肉量を増やした方が、より効果的だということが分かっています。つまり、毎日毎日走らなくても、走らない日を作って、ピラティスや自重を使った筋トレを組み合わせることで、心臓や足腰にかかる過度な負担を減らし、さらに効果的に結果を出すことができるのです。

このように、様々なトレーニングを組み合わせることで、多方面からの負荷が相乗効果となって、皆さんのパフォーマンスを大きくしてくれるのです。では、その組み合わせの一例を見てみましょう。

心、頭、身体のトレーニング

トレーニングと言うと、つい身体にかかる負荷ばかりを想像してしまいますが、実は頭や心にもそれなりの負荷が必要なのです。感動的な映画を観て涙を流したり、お笑い番組を観たりして大笑いすることも、立派な心のトレーニングなります。心を動かさないでいると、心が動きにくくなって、ちょっとしたことがストレスになり怒りっぽくなってしまいます。感動したり、笑ったり、時には悲しんだり、色々な方向に心を動かして、ストレスに負けないように心を鍛える事がLife Conditioningにつながります。走ったら終わり、ではなく、そのあと映画をみたり、本を読んだり、密を避けて景色のいいところに出かけたりして、心も鍛えてくださいね。

頭を鍛えなければいけないことは、既にご存じだと思いますので、その方法や負荷については割愛します。とにかく、心と頭、そして身体にしっかりと負荷をかけるのが、皆さんのバイタリティーを高めるポイントです。是非、実践してみてください。

筋トレと有酸素トレーニング

筋トレと有酸素運動を組み合わせると、体重減少(脂肪燃焼)や糖尿病の予防に効果が高いことは前述しました。筋肉量を増やすことは、車のエンジンを大きくするのに似ています。動くために、多くのエネルギーを必要とするので、燃費が悪くなり、消費カロリーが増えるという仕組みです。身体にはたくさんの筋肉があり、それらが共同して、人の動きを作り出します。その一つ一つを順番に鍛えていったのでは、何時間あっても足りません。そこで、一般の方は、主要な大きな筋肉を鍛えて動かすことをお勧めします。 ランニングの後に、

  • スクワット(20回×3)
  • 腹筋、背筋、腕立て伏せ(それぞれ20回×3)

の4つのトレーニングを組み合わせてみてください。
20-30分の軽い負荷であれば、筋トレは、ランニングの前でもその効果は、大きく変わりません。気持ちよく、トレーニングできる方法を探してください。

さらに、ランニングができない日も、ちょっとした時間を作って、このトレーニングをすることで、効果が飛躍的に上がります。朝、出勤前にスクワット、昼休みにベンチで腕立て、家に帰ってから腹筋と背筋、のように分けて行ってもOKです。まとめてやると、時間がかかりますが、分けて行えばそれぞれは3-5分もあれば十分です。ぜひ、ランニングと組み合わせて行ってみてください。

高い負荷 と 軽い負荷

前回、トレーニングの負荷と効果の違いについて説明しました。実は、トレーニングの負荷をうまく組み合わせることで効果を高めることができるのです。高い負荷のトレーニングを行った後に、軽い負荷のトレーニングを行うことで、回復を早めて、次の高い負荷に早く備えることができるのです。例えば、土曜日にランニングと筋トレをばっちりやって、日曜日は軽いピラティスと買い物がてらのウォーキングを行うと、月曜日にはばっちり締まった状態で出勤できるはずです。また、いつも低速でジョギングをしているなら、たまには速度を速めて、時間を短くすると心肺機能に刺激が入り、トレーニング効果が上がります。このように、トレーニングを実施するときは、いつも同じ負荷、同じ時間なのではなく、メリハリをつけて負荷を組み合わせてください。人生にメリハリが必要なのと同じで、トレーニングの負荷もコントロールしてください。

今回は、代表的なトレーニングの組み合わせをいくつか紹介しました。トレーニングの種類や組み合わせは無数に存在します。皆さんも様々な本や雑誌から、この組み合わせを探求してトレーニングすれば、きっとコロナ禍のSTAY HOMEも楽しめるようになるはずです。

次回は、そんな自宅で出来る、効果的なトレーニングを紹介します。一畳のスペースで出来る簡単だけど効果ばっちりのトレーニングを紹介します。是非、お楽しみに。

(編集後記)
Life Conditionを高める為には「頭・心・身体」をバランスよく鍛える。トレーニングの後に心を動かす様な映画を見るというのは目からウロコでした!自分が気持ちよくトレーニング出来る組み合わせ・順番を探求してみたいと思います!


喜熨斗勝史

喜熨斗 勝史(きのし かつひと 1964年10月6日 生まれ )
日本のサッカー指導者。日本サッカー協会公認S級コーチ(監督・コーチ・フィジカルコーチ)。東京都練馬区出身。日本体育大学、東京大学大学院修了。
Jリーグでトップチームのコーチを歴任したのち、中国スーパーリーグに移籍した。2016年から、中国スーパーリーグでは唯一の日本人コーチ。語学力を活かし、グラウンドでは英語、ポルトガル語での指導もできる。