インタビューのパート1「【渡邊幹彦氏インタビュー①】身体の声を聞いて、自分で判断する」では、渡邊先生が普段関わっているスポーツ選手とビジネスパーソンの共通点を踏まえながら、怪我や病気をしっかり治すために必要なことや、自分の身体の声を聞くことの重要性についてお伝えしました。

インタビューパート2の本記事では、自然を感じる心、当たり前を感じられること、それを幸せと感じられる感性の大切さ、といったお話です。

自然を感じる心の余裕があなたの幸せを作る

The room in your heart to feel nature makes you happy.

編集部
7月には東京オリンピックが予定されていますが、これからのスポーツについて、どう考えていらっしゃいますか?

渡邊先生
これからのスポーツの世界がどうなっていくか考えた時、コンマ何秒の世界の中で、薬を使ってでも記録を取りにいく人が出てきていたり、サイボーグのようになってでもスポーツをやろうと思う人がいたり、はたまたeスポーツなんてジャンルも出てきていますよね。

そんな中、そもそもスポーツの楽しさって何なのかな?と考えてみた時に、僕が普段接している野球選手との話で共感しているのが「雨だとか、風が吹いていたりだとか、自然の中でやるのがいい」ということですね。

ドーム球場よりも、雨風が吹いていて、湿度を感じられる甲子園や広島球場などでやるほうが好きな選手は多いです。ドーム球場では、天候によらず試合ができて中止がなく、興行的にはもちろん助かるのだけれど、選手自身はあまり楽しくはないそうです。

僕が趣味のゴルフをしながら楽しいと感じるのも、やはり雨が降ったり風が吹いたりっていう自然の中だからかなと思います。今日は風が強いなとかを感じながら、自然の中でスポーツをするのが楽しいのです。

色々なことに忙しいビジネスパーソンは、目の前のことに精一杯で、自然を感じる余裕がないかもしれません。もし少しでも身に覚えがあるな、という方は、ちょっと自然を感じてみる時間を作ってみるのはどうでしょうか?

当たり前を幸せと感じられる感性が幸せの鍵

The key to happiness is the sensitivity to perceive the ordinary as happiness.

渡邊先生
病院に入院中の患者さんは、雨だろうが、暑かろうが、エアコンがあれば温度や湿度の管理ができるし、心拍数を管理しながら生命活動はできるけど、そうではなくて、「今日こんな日だったね」と感じて、毎日違う感情が生まれる事が、生きているという事なのではと思います。

病院の中で生きていても、それは本当の意味で生きているといえるのか、医者として働きながら、いつもそんなことを考えています。

若いときはとにかく元気で、毎日熱を測る必要もないし、朝はすっきり目を覚ます事ができて、ご飯を食べて、一人でなんでもできるのが当たり前ですよね。でも年をとって、トイレや食事が一人でできなくなると、人の手が必要になります。だけどそうなってからでは遅い。そこを “元気なとき” に教えてあげる必要性を感じています。

また、こうなったら大変というばかりではなく、いかに今自分たちが充実しているのか、当たり前に何でもできる毎日は幸せなことなんだ、と感じながら暮らす事が大事なのだと思います。それは働く人も同じです。当たり前を幸せだなぁと思える感性があると、毎日幸せを感じながら生活できますよね。

編集部
若い時って、健康を当たりまえと思ってしまいがちですね。

渡邊先生
たくさん稼いで良い所に住むのを目標にしがちだけど、年取ってから入院するとなると、お金をたくさん持っていて、良い家に住んでいても、結局最後は病院で寝ていたら誰でも同じだよね、と。結果的に最後はみんな同じなら、こうしなきゃいけないというのも、あまりないのではないでしょうか。

日本はとかく働きすぎと言われていますし、みんなが同じ方向、同じ価値観でがんばるのではなく、それぞれ一人一人が自分の幸せについて考えて、気づくことが大切だと思います。

編集部
周りの目を気にしたり、誰かより上に立つことばかりを目指していると、自分にとっての幸せを見失ってしまいそうですね。

渡邊先生
そうですね。他からの評価ではなく、自分目線でいいなぁと思える感性が、毎日の幸せなのではないかなと思います。

例えば、数字が良くなったからじゃなくて、これはいい運動だと思える事が、その人たちを良くしてあげている内容であって、必ずしも数字じゃないのです。

いっぱい手術したから名医なのか。手術は必要だから名医はもちろん必要だけど、実は手術をしなければいけない所までいかないようにするのが名医かもしれないとか、長生きする中で人間の体のケアは、手術以外の要素もいっぱいありますよね。

みんながそれを理解して、どう気がついて、どう行動するかが大事だと思っています。

編集後記

仕事、プライベート関係なく、自分自身の価値観で、実は近くにたくさんある幸せに気づけること、「良いと思える事」に気づける感性が、毎日の幸せに繋がっているというお話、興味深く伺いました。

次回のテーマは、「日本でよりよく生きるには」というテーマでお届けします。スポーツ選手とビジネスパーソンに共通するお話、パート3もどうぞお楽しみに!


渡邊 幹彦
東京明日佳病院院長 スポーツ整形外科医
日本整形外科スポーツ医学会評議員、日本臨床スポーツ医学会評議員、日本肘関節学会評議員、2013年WBC日本代表チームドクター

香川医科大学卒業後、昭和大学整形外科に入局し活躍
その後、日本鋼管病院スポーツ整形外科部長、昭和大学客員教授などを歴任し
2013年に東京明日佳病院副院長
2015年に院長へ就任