「猫背を少し改善して良い姿勢をとるだけで仕事の生産性がアップする可能性がある」ことをご存知でしょうか?
アメリカ・コロンビア大学によって発表された2010年の研究1によれば、「2分間胸を張った良い姿勢」をとると、猫背姿勢の人に比べて「テストステロン」が増えて「コルチゾール」が減った、という報告があります。
テストステロンは別名「男性ホルモン」とも呼ばれ、テストステロンが増えることで「やる気」「判断力」「記憶力」「認知能力」などがアップします。
コルチゾールは別名「ストレスホルモン」とも呼ばれ、コルチゾールが高い状態であると、イライラしやすくなり、判断力や記憶力が低下してしまいます。
もしあなたが今、ちょっとしたことでイライラしてしまったり、仕事中に集中力が続かなかったり、なかなかやる気が出ない、という場合、それは「あなたが猫背だから」かもしれません。
ちょっと姿勢を意識して、少しだけでも猫背を改善するだけで、集中力が続くようになったり、常にモチベーション高く仕事に取り組めたりする可能性があります。
本記事ではまず「良い姿勢とはどういう姿勢なのか」をお伝えした後、3パターンある猫背について解説します。その後、パターン別に行うべきセルフマッサージ、ストレッチ、トレーニングを写真つきで詳しくお伝えします。
「姿勢が悪いのを直したい」「猫背を改善したい」「姿勢を良くしてバリバリ仕事をしたい」という方は、マッサージだけからでも良いのでぜひ実践してみてください。
「良い姿勢」とはどういう姿勢のことを言うのか?
良い姿勢とはどういう状態かご存知でしょうか?猫背を改善して良い姿勢になりたい!いという方は、まず目標となる「理想の姿勢」を知る必要があります。
良い姿勢には実は、一定の基準があります。真っ直ぐ立った時、「耳の穴・肩・骨盤・膝・外くるぶし」の5点が一直線上になる場合、その人は姿勢が良い、と言えます2。
ぜひ、真横から見た自分の姿勢を写真に撮ってみましょう。ご家族やご友人の方に撮ってもらうか、もしくは、鏡の前に立って自分で撮影してみてください。
写真を撮ったら、今回は「耳の穴」「肩」「骨盤」の3点の位置を見てみましょう。
もし上画像のように、3点が一直線上にあれば、あなたは良い姿勢と言えます。もし一直線上になければ、あなたは猫背と言えます。
3点が一直線上になかった場合は、3点のどの点が前方に出てしまっているかで、改善方法が変わってきます。
猫背には大きく分けて3パターンある
より効率的、効果的に猫背を改善するためには、あなたが3パターンあるうちのどの猫背であるのかを知ることが重要になります。
1)耳よりも肩が前に出ている
耳と肩の位置を比べた時、肩が前に出ている状態です。背中が丸まって、巻き込み肩のような姿勢になっていることがわかるかと思います。
2)肩よりも耳が前に出ている
耳と肩の位置を比べた時、耳が前に出ている状態です。あごが前に突き出ていて、首はいわゆるストレートネック(別名:スマホ首)の状態です。
3)骨盤が前に出ている
骨盤を前に突き出したような格好になっています。骨盤が前に出ると、バランスを保つために頭も前に出てきてしまいます。
良い姿勢に当てはまらない場合、多くの人がこの3ついずれかのパターンに当てはまるかと思います。
自分の猫背パターンがわかったら、いよいよエクササイズで猫背を改善していきましょう。
パターン別猫背改善3ステップ
自分の猫背がどのパターンなのかがなんとなく理解できたら、以下のような3ステップで猫背を改善していきましょう。
- マッサージで硬直した筋肉をほぐす
- ストレッチでほぐした筋肉を伸ばす
- トレーニングで筋肉を引き締める
まずは、良い姿勢を崩してしまっている、凝り固まってしまった筋肉をマッサージでほぐします。
その後、ほぐした筋肉やその周辺の筋肉をストレッチすることで、硬まって縮まっていた筋肉の長さをニュートラルな状態に戻します。
最後に、筋肉の硬さのアンバランスによってゆるんでしまった筋肉を、簡単な筋力トレーニングを行って引き締めることで、全体の姿勢を整え、猫背改善を目指していきます。
1)肩が前に出ている猫背を改善する
耳よりも肩が前に出ている方は、「胸」の筋肉をほぐして伸ばし、「背中」を引き締めることで、巻き込むように前に出てしまった肩を後ろに引き戻します。
【ほぐす】胸マッサージ
- 鎖骨の下にん指をあてて、指圧しながら少しずつ場所を変え、一番凝り固まっている感覚のある場所を探します。
- 見つけたらその場所を「痛気持ちいい」程度の強さで20秒程度グーッと圧迫をかけます。
- 凝り固まっている場所が複数箇所あれば、場所を変えてまた20秒指圧しましょう。
【伸ばす】胸ストレッチ
- 肘を軽く曲げて、壁に手をつきます。肩の高さよりも上につきましょう。
- 手のひらを壁につけたまま、ゆっくりと壁とは反対側に体をひねっていきます。
- 胸にストレッチを感じたらストップします。
- ゆったりとした呼吸を続けながら20秒キープします。
【引き締める】肩甲骨スライドトレーニング
- 真っ直ぐ立ち、腕を伸ばしたまま両手を下で合わせます。
- 両手を合わせたまま、頭上まで持ち上げます。
- 上まで上げたら、両手を離して、肘を曲げながら、手のひらを外側へ向けて真横に開き、肘をしっかり下げていきます。
- 肘をしっかり下げたら、肘を伸ばして、両手を下で合わせます。
- リズム良く20回繰り返しましょう。
2)耳が前に出ている猫背を改善する
肩よりも耳が前に出ている方は「首」がポイントです。
首周りをほぐして、伸ばして、引き締めることで、頭をニュートラルなポジションへ戻していきます。
【ほぐす】首マッサージ
- 親指で、後ろ側の頭蓋骨と首の筋肉の境目を見つけたら、その境目を親指で「痛気持ちいい」程度に押してほぐします。
- 3〜4秒ジワーッと押したら、少し下に位置を変えて、同じように指圧します。
- 左右の筋肉を、少しずつ位置を変えながら、片側30秒ほどかけてほぐしましょう。
【伸ばす】頭下げストレッチ
- 椅子に座り、背筋を伸ばします。
- 片手を後ろに回して、反対側の腰にあてます。
- 逆の手を頭の上から回して、耳〜こめかみのあたりに置きます。
- ゆっくりと息を吐きながら、斜め前に頭を倒して、首の斜め後ろ側の筋肉を伸ばしていきます。
- 左右20秒ずつ行いましょう。
【引き締める】首曲げ胸開きトレーニング
- 椅子に座って背筋を真っすぐ伸ばし、両手を頭の後ろに軽くそえます。
- 両肘を顔の前に近づけながら、あごをひいて首を前に曲げます。
- 両肘を外側に向けながら胸を開き、首は後ろに曲げて天井を見ましょう。
- リズム良く20回繰り返しましょう。
3)骨盤が前に出ている猫背を改善する
肩よりも骨盤が前に出ている方は、骨盤が後傾した状態になっていることが多いです。
よって、骨盤をニュートラルなポジションに戻すために、骨盤周りの大きな筋肉をケアする必要があります。
【ほぐす】腹式呼吸
お腹の中には多くの内臓が存在するため、むやみやたらとマッサージするのは危険なことがあります。 よって腹筋をほぐすためには、ゆったりとした腹式呼吸をすることがオススメです。
より体をリラックスさせるために、仰向けで行えるとベターですが、座ったままでももちろんOKです。
- 両手をお腹の上にそっと乗せて、鼻からゆっくりと息を吸いながら、両手をお腹で持ち上げるように、お腹を膨らませていきます。
- 4秒ほどかけてたっぷり息を吸ってお腹を膨らませたら、6〜8秒ほどかけて、ゆったりと口から息を吐きながらお腹を凹ませていきます。
無理にお腹を凹ませる必要はなく、リラックスした状態で行います。10回程度ゆったりと呼吸を繰り返しましょう。
【伸ばす】お尻ストレッチ
- 椅子に座り、背筋を真っすぐ伸ばします。
- 片足を膝の上に乗せます。上半身はリラックスしましょう。
- 背筋を伸ばしたまま、ゆっくり上体を前に倒します。
- お尻に伸びを感じたところで20秒キープします。
- 両側行いましょう。
【引き締める】ストレートレッグレイズ
- 仰向けに寝て、鍛える方の脚は真っすぐ伸ばし、逆側の脚は膝を90度に曲げて立てます。
- つま先をすねの方に引き上げた状態で、息を吸いながら、脚を曲げている膝の高さまでゆっくり上げます。
- 息を吐きながらゆっくり脚を下げましょう。
脚を下ろしたときに腰が反りやすいので、反らないように注意して行うことがポイントです。
左右20回ずつ行います。
まとめ
猫背姿勢を3パターンに分け、パターンごとに、姿勢を改善するための3ステップをお伝えしました。
座ったままできるものも多いので、ぜひお仕事の合間に、休憩がてらちょこっと行ってみてください。
その「ちょこっと」が、体の不調を改善し、仕事の生産性アップにつながっていきますよ。
参考文献・資料
- Carney DR, Cuddy AJC, Yap AJ. Power Posing: Brief Nonverbal Displays Affect Neuroendocrine Levels and Risk Tolerance. Psychological Science. 2010;21(10):1363-1368.
- 鈴木孝佳. ねこ背を10秒で治して人生を変える!. 宝島社; 2020.