先月からスタートした喜熨斗勝史(きのし かつひと)さんのLife Conditioningコラム第2弾は、「トレーニング」がテーマです。
国内外のサッカークラブでコーチを歴任された喜熨斗さんのご経験を元に、ビジネスパーソンも真似出来る、日々のトレーニングについて教えて頂きました!

人間が生き残って来られたのは“環境適応能力”があったから

こんにちは。皆さん、いかがお過ごしですか。まだまだコロナ禍は続き、いろいろと規制がかかる毎日ですね。でもこんな時だからこそ、生活の中で変えられること、チャレンジできることを見つけて、ポジティブに過ごしたいですよね。小さなウイルスに支配されるのではなく、自分の人生は自分でコントロールできるように賢く、そしてアグレッシブに「トレーニング」していきましょう。

みなさん、トレーニングというと「厳しい」とか「疲れる」とか「時間とお金がかかる」など、なんとなくネガティブなイメージがありませんか?実際、あのサッカーブラジル代表のロナウジーニョですら「サッカーをプレーするのは、まだまだ問題ないけど、トレーニングが厳しいから引退するよ」なんて言っていました。私も引退後、プロの世界でコーチを続けていますが、”かなり厳しいトレーニング“を選手たちには要求しています。 よく「鬼コーチ」なんてからかわれます(笑)

相手に”勝つ“ことで生計を立てている、プロスポーツの場合、大きな結果を出すためには、大きな努力が必要です。才能だけで結果を出し続けることは出来ないので、厳しく且つ合理的に心身を鍛え続けることが成功の秘訣なのです。ではなぜ、結果を出すために「トレーニング」が必要なのでしょうか。それは、我々人間が本来持っている「適応能力」が大きく関わっています。

皆さんご存じの「ダーウィンの進化論」によると、現在地球上にいる生物が、50億年もの間、生き残ってこられたのは、目まぐるしく変化する地球環境に適応しながら進化してきたからなのだそうです。我々人間もその範疇から漏れることはありません。“環境に適応することのできる能力”それこそが、生きるか死ぬかを決めるポイントだったのです。

そんな、厳しい環境を生き抜いてきた我々の中には、かなり高性能な「環境適応能力」が備わっています。予想外の環境の変化、つまり「負荷」がかかった時には、再び同じような負荷がかかった時にも耐えられるように準備をします。筋トレをすると筋肉が大きくなって力が出せるようになるのは、次回の負荷に備えるためです。半面、全く負荷がかからない状態が続けば、安心して必要のないものを省いて、余ったものを蓄えてしまいます。どんなにハードな筋トレをしてムキムキになっても、しばらく何もしないでいると“すっかり元通り”、あるいは、以前以上に太ってしまうのはそのためです。

環境の変化に流されない。度が過ぎた快適さには要注意!

我々の周りの環境も、50億年にはかないませんが、常に変化しています。学生時代と今では、食べるものから、運動の機会、頭を使う時間や覚えることの量など、すべてが変わっているはずです。車に乗れるようにもなったし、デスクワークも増えて、座っている時間はもっと長くなっているかもしれません。さらに、好きなものは食べられるし、お酒だってタバコだって楽しめます。家の近くにコンビニができたり、近くに駅ができたりしたら、自然と歩く距離が短くなります。新型コロナウイルスが流行し、リモートワークになったのも、大きな変化ですね。

このような環境の変化に流されずLife Conditioningを成功させるには、自ら考えて、心と体と頭にかかる負荷を適切にコントロールしなければなりません。快適に過ごせるようになったからと言って、度が過ぎてしまうと、心身に適切な負荷がかからなくなってしまうのです。しっかりと必要な負荷をかけて、本来持っている力を最大限に出せるように準備しましょう。

このように、意図的に負荷をかけたり、取り除いたりすることが「トレーニング」なのです。足りない負荷や刺激をプラスして、多すぎる負荷(ストレス)やエネルギーを減らす。そして、程よく疲れて、良質の栄養を補給し、回復する。この繰り返しが、私たち「人間」を強くし、環境への適応力をあげていくのです。しかし、トレーニングと言っても、プロスポーツ選手やボディービルダーでもないかぎり、自分を必要以上に追い込む必要はありません。少しずつ、足りないと思うところに負荷をかけていく感覚でいいのです。

トレーニングをするチャンスは溢れている!

ちょっと、考えてみましょう。駅の階段の上り下りやリモートワークの合間にするストレッチと筋トレ。食事の量や時間のコントロール。睡眠時間の確保や寝る前のルーティンの改善。休日のウォーキングやランニングそしてショッピング、などなど。とにかく、トレーニングをするチャンスは、すでに皆さんの周りに溢れているのです。後は、そのチャンスを皆さんが活かせるかどうかなのです。

「今日は、いつもより500歩多く歩いた」「今日は、リモートワークの合間にストレッチと腹筋をした」「今日は、買い物に、車を使わず歩いて行った」「今日は、間食をチョコレートからナッツに変えた」さらに言うなら「今日は、トレーニングの動画を見ただけ」なんて言う小さな変化でも、積み重ねることによって、それがトレーニングとなり、予想外の変化に耐えられように皆さんを少しずつ強くしていくのです。そして、大事なことは、それを意図的にコントロールして、自分の行動で適応力を上げていくことなのです。

自分を「進化」させてくれる友人=トレーニング

皆さんご存じのキングカズ。彼と私の共通理解は「進化」です。年を重ねても、進化することにチャレンジする。自分を鍛えて進化させてくれるトレーニングのチャンスを見逃さないことです。皆さんも、トレーニングを「厳しくてつらいもの」と決めつけて敬遠するのではなく、自分を進化させる「友人」として探してみたらいかがでしょうか。「友人」が増えることは、いくつになっても楽しいことですよ。次回はそのトレーニングの「負荷」についてです。
See you soon KINOSHI

(編集後記)
トレーニングを始めるぞ!と意気込むと、つらいイメージが先行してなかなか重い腰が上がらない事も多いですが、トレーニングを「自分を進化させてくれる友人」だと思うとそのチャンスを見つける事や、ちょっとした変化を楽しめそうですね。
人間に備わっていると言われる適応能力を信じて、日常にトレーニング要素をプラスしてみる。ビジネスパーソンのLife Conditioningに一歩踏み出してみませんか?
次回の記事もお楽しみに!


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喜熨斗 勝史(きのし かつひと 1964年10月6日 生まれ )
日本のサッカー指導者。日本サッカー協会公認S級コーチ(監督・コーチ・フィジカルコーチ)。東京都練馬区出身。日本体育大学、東京大学大学院修了。
Jリーグでトップチームのコーチを歴任したのち、中国スーパーリーグに移籍した。2016年から、中国スーパーリーグでは唯一の日本人コーチ。語学力を活かし、グラウンドでは英語、ポルトガル語での指導もできる。