「最近、なんとなく疲れやすい」「以前より集中力が続かなくなった気がする」
そんな感覚を、年齢や忙しさのせいにしていないでしょうか。
十分に寝ているつもりなのに疲れが抜けない。仕事中、集中力がすぐに切れてしまって判断に時間がかかる。健康診断では「特に問題なし」と言われるものの、なんか体調が優れない。
多くのビジネスパーソンが、こうした “原因がよくわからない不調” を抱えています。
その原因として考えられるものの一つが「AGEs(最終糖化産物)」と呼ばれる「体内老化」の指標です。
AGEsは、日々の食事や働き方、睡眠、ストレスといった生活習慣の積み重ねが体に残した “結果” とも言えます。
本記事では、”生活習慣の通信簿” とも呼ばれるAGEsとは何か、そして、なぜAGEsが増えると疲れやすくなったり、集中力低下につながってしまうのかを、わかりやすく解説していきます。
AGEsとは?体内で起こる “糖のコゲ”

AGEs(エイジス)とは「Advanced Glycation End Products(最終糖化産物)」の頭文字をとった略称で、体内で起こる「糖化(とうか)」という反応によって生じる物質のことを指します。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、この反応が起こる仕組みは、実はとてもシンプルなものです。
ホットケーキやトーストを焼いたとき、表面がこんがりと茶色くなりますよね。このいわゆる “焦げ(コゲ)” は、「糖質とタンパク質が熱によって結びついた状態」と言えます。
実は、私たちの体の中でも、この現象とよく似たことが起きています。
血液中に糖(=ブドウ糖)が多い状態が続くと、その糖が、体内のタンパク質(筋肉・血管・脳・皮膚など)と結びつき、体温という「熱」によって、体の中でゆっくりと「コゲ」が作られていきます。
この “コゲが作られる” 反応が「糖化」と呼ばれ、このときに生じるのが「AGEs」です。
一度AGEsに変化してしまったタンパク質は、筋肉や血管を作ったり、脳の機能を支えるといった働きはできなくなってしまうとともに、元の機能的な状態にも戻りにくいことがわかっています。
AGEsは「今の状態」ではなく「これまでの積み重ね」
1つ知っておきたい重要な点は、AGEsが「今、この瞬間の体調」を表すものではない、という点です。
- 血糖値が高い状態がどれくらい続いてきたか
- どんな食事をしてきたか
- どんな働き方・生活リズムだったか
といった、これまでの生活習慣の積み重ねによって、AGEsは増えていきます。
そのためAGEsは「生活習慣の通信簿」あるいは、これまでのライフスタイルが体に残した「結果」と表現されることがあります。
「AGEs」という言葉を聞いたことがある方は、AGEsが増えるとシワが増える、白髪が増える、老化が進む、といった印象がある方が多いかもしれません。
そういった「見た目」の変化にもAGEsは関わってきますが、AGEsの影響はそれだけにとどまりません。
なぜAGEsが増えると疲れやすく、集中しづらくなるのか

AGEsが体内に蓄積しても、すぐに強い痛みが出たり、明確な病気として現れるわけではありません。多くの場合、最初に現れるのは「なんとなく調子が悪い」といった、原因がよくわからない不調です。
例えば、下記のような状態となることが多いです。
- 十分に寝ているつもりなのに、疲れが抜けにくい
- 午後になると集中力が落ち、仕事の効率が下がる
- 頭が重く、考えがまとまりにくい時間が増えた
- 以前より回復に時間がかかるようになった
- 些細なことでミスや判断の遅れを感じる
これらの状態は、一般的には「年取ったなぁ〜」などと年齢のせいにしたり、「最近忙しいからしょうがないよなぁ〜」などと仕事のせいにして、特に対策をとらずにそのままにされることが多いです。
しかし、こうした不調が重なってくる背景には、体内で進むAGEsの蓄積が関係している可能性があります。
AGEsは、体の様々な部位のタンパク質に影響を与え、血流やエネルギーの使われ方、脳の働きにまで関わります。
その結果、病気とまでは言えないものの、仕事のパフォーマンスに影響する「小さな不調」として現れてきます。
タンパク質の糖化によって血流が悪くなる
私たちの体は、筋肉・血管・脳・内臓など、様々なタンパク質によって支えられています。
AGEsは、このタンパク質に蓄積していくことで、本来の機能を奪っていき、不調を引き起こします。
たとえば、血管の壁にAGEsがたまると、弾力が失われて、血流が悪くなりやすくなります。血流が滞ると、酸素や栄養が全身・脳に届きにくくなり、結果として:
- 体を動かしていないのに疲れる
- 休んでも疲労感が抜けにくい
- 午後になると頭がぼんやりする
といった状態が起こりやすくなります。
これは「年齢のせい」でも「最近忙しいから」といった問題ではなく、AGEsが体内にたまったことによる、体のエネルギー効率低下のサインの可能性があります。
脳の働きにも影響し、集中力が続かなくなる
AGEsは、脳の中でも問題になります。
脳内のタンパク質が糖化すると、情報処理や判断に関わる神経細胞の働きがスムーズにいかなくなります。その結果:
- 集中力が長く続かない
- 仕事の切り替えに時間がかかる
- 判断が遅れたり、ミスが増えたりする
といった変化が起こりやすくなります。
本人としては「以前より踏ん張りがきかない」「頭の回転が鈍くなった気がする」と感じても、明確な異常があるわけではないため、「年齢のせい」「忙しいから仕方ない」と見過ごされがちです。
しかしその背景には、体内で静かに進むAGEsの蓄積がある可能性があります。
忙しいビジネスパーソンほどAGEsがたまりやすい3つの理由
AGEsは、特別な病気や、極端な生活をしている人だけに増えるものではありません。
むしろ、真面目に仕事に取り組んでいるビジネスパーソンほど「忙しいから仕方ない」「このくらい普通」と不調を見過ごしやすく、知らないうちに蓄積しやすいという側面があります。
忙しい日常に潜む「AGEsを増やしやすい条件」を3つお伝えします。
1)血糖値が乱れやすい働き方

ビジネスパーソンに多いのが、
- 朝食を食べない、または簡単に済ませる
- 昼食を短時間でかき込む
- 忙しい日は夕食が遅くなる
といった食生活のリズムです。
空腹時間が長く続いたあとに食事をすると、血糖値は一気に上がりやすくなります。この血糖値の急上昇と高い状態が続く時間こそが、体内でAGEsが作られやすい環境です。
また、デスクワーク中心で長時間座りっぱなしになると、食後の血糖値を下げる筋肉の働きも十分に使われません。
その結果、血糖値が高い状態が長引き、体内で「糖のコゲ」が進みやすくなります。
2)常にストレスにさらされた働き方

仕事のプレッシャーや人間関係、納期への追われ感など、ビジネスパーソンは日常的に多くのストレスを抱えています。
ストレスがかかると、体内では「血糖値を上げるホルモン(コルチゾールなど)」が分泌されます。これは、体が「非常事態に備える」ための自然な反応ですが、慢性的に続くと、血糖値が下がりにくい状態を招きます。
つまり、忙しさやストレスそのものが、AGEsを増やしやすい体内環境をつくっているとも言えるのです。
3)慢性的な睡眠不足

忙しい日々が続くと、睡眠時間が削られがちになります。しかし睡眠は、
- 血糖コントロール
- 体の修復
- 脳のリセット
にとって欠かせない時間です。
睡眠不足が続くと、血糖値の調整がうまくいかなくなり、糖化が進みやすくなります。
さらに、日中の疲労感や集中力低下も強まり、「不調のループ」に入りやすくなります。
AGEsは減らせる?今日からできるAGEs対策
ここまで読んで、「AGEsが増えているかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。
上記した通り、AGEsは一度できると簡単には消えないのですが、これ以上増やさないようにすることや、増えにくくすることは十分に可能です。
完璧な生活習慣を送る必要はありません。今の生活の中でも続けられる、ほんのちょっとした工夫を取り入れることがポイントです。
1)血糖値を急上昇させない「食べ方」を意識する

AGEs対策で最も重要なのは「血糖値が急激に上がる時間をできるだけ減らすこと」です。
そのために意識したいのが、「何を食べるか」と「どう食べるか」です。
- 野菜・海藻・きのこ類を最初に食べる(=ベジタブルファースト)
- よく噛んで、食事に少し時間をかける(=一口30回を目安)
- 忙しい日でも、ドカ食いは避ける
これだけでも、食後の血糖値の上昇は穏やかになります。
また、朝食を完全に抜いてしまうと、次の食事で血糖値が急上昇しやすくなるため、
- ヨーグルト
- ゆで卵
- プロテイン
- スープ
など、血糖を急に上げないために、少しだけでも朝食を取り入れることがポイントです。
血糖値の乱高下について詳しく知りたい方は「血糖値スパイクを抑えてワークパフォーマンスを最大化する5つの方法」の記事もぜひお読みください。
2)食後に「少し動く」だけで体は変わる

食後の軽い運動は、AGEs対策として非常に効果的です。特別なトレーニングは必要なく、ちょっとした「身体活動」をするだけで、しない場合と比較すると大きな違いがあります。
- 食後に5分程度歩く
- エレベーターではなく階段を使う
- デスクワークの合間に立ち上がる
こうした、ほんのちょっとの身体活動でも、筋肉が血中の糖を取り込み、血糖値が下がりやすくなります。
忙しい人ほど、「まとめて運動」よりも、こまめに体を動かすことが現実的で、続きやすい対策になります。
こまめに体を動かすことの効果・エビデンスは「“時間がない” は言い訳にならない!新健康習慣「マイクロワークアウト」」の記事で詳しく解説しています。ぜひこちらもお読みください。
3)睡眠時間の確保とストレスコントロール

AGEs対策というと、食事や運動に目が向きがちですが、睡眠とストレス管理も重要な要素です。
睡眠不足が続くと、血糖値のコントロールが乱れやすくなり、糖化が進みやすい状態になります。
また、慢性的なストレスは血糖値を上げるホルモンの分泌を促し、AGEsが増えやすい体内環境をつくります。
「完璧な睡眠」や「ストレスゼロ」を目指す必要はありませんが、
- 睡眠時間を最低7時間確保できるようにスケジュールを組む
- 睡眠の質を高める行動をとる(参考記事:寝付きが悪い人必読!寝付きが良くなる6つの入眠スイッチ)
- ストレスをこまめに取り除く(参考記事:働く人のためのストレスマネジメント|ストレッサーとストレス反応とコーピング)
といった、生活習慣のちょっとした見直しや行動が、体内老化のブレーキになります。
まとめ
疲れやすさや集中力の低下を、「年齢」や「忙しさ」のせいにしていないでしょうか。これらの症状は、生活習慣の積み重ねによって体内で進む “老化” が影響している可能性があります。
AGEsは、これまでの食事や働き方、睡眠、ストレスが体に残した結果であり、いわば「生活習慣の通信簿」です。
食べ方を少し意識する、こまめに体を動かす、しっかり休む。こうした小さな選択の積み重ねが、疲れにくく、集中しやすいコンディションにつながります。
疲れにくく、集中しやすい状態を長く保つために。
まずは、自分の生活習慣が体にどんな影響を与えているのか、少し立ち止まって振り返ってみてはいかがでしょうか。
