日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、管理栄養士、スポーツ栄養士の後藤 優子さんに編集部がインタビューしました。

栄養指導方法は、その人に合った内容で

編集部:栄養指導ってどんなことをするのですか?

後藤さん:ある程度のフォーマット(型)にそって行いますが、嫌いなものを別のものに変えるとか、食事の時間帯がフォーマットに合わせられない場合は、フォーマットからピックアップして何回かに分けるなど、その方のライフスタイルに合うものにアレンジして提案しています。

継続していける方法なのか、一生できる生活スタイルであることが大事です。栄養士が関わらなくなって、続かなくなったというのでは、だめですから。

お酒が好きな人には、お酒を飲みながらどう続ければいいのかを提案する。お酒以外の部分で提案するのです。食事だけでなく、階段をのぼってみましょうかなど、お酒をやめない中での提案をします。

食事改善の選択肢は複数ある、臨機応変さが大切

編集部:食事改善のアドバイスをお願いします。

後藤さん:体作りをしている方に、何を食べていますかと聞くと、必ずといってチキンと返ってくることが多いです。体作りのために必要な食べ物はチキンだけではないのに、みんなそこを選びがちです。調理面や、金額面から来ているところもありますが、チキン以外にもいろんな食べ物があるのだから、選択の幅を増やして、もっと食事を楽しんでもらえたらと思っています。

お寿司の話でいうと、酢飯には砂糖が入っているので、体重を気にする方の場合、回数が多くない方がいい。逆に、食欲がなくて食べられない方にはお寿司はお勧めです。つまり、「これだけ食べていればいい」というような、誰にでも合うメニューはないのです。その方その方の状況に合った選び方、食べ方があると思います。

また、時間がある方や苦にならない方は自炊するでしょうが、時間のない方や不得意な方は買わざるをえない。コンビニやお惣菜が悪いとはいわない。できること、続けられることをやるのです。

編集部:忙しい人、時間のない人向けに、コンビニだったらどんな選択がいいですか?

後藤さん:1個で完結できるものはなかなか無いので、組み合わせを実践してはどうでしょう。お弁当+サラダなど、実際のものをみて、足りなそうなものをつけることから始めましょう。

パソコンに向かいながらなど、お箸を使いたくない人には、おにぎりとサラダチキンと野菜ジュースという手もある。サラダチキンはパックのお魚にかえてもいい。

どの食べ方がベストと考えるよりも、その時々のベストの基準を変えていくことが必要です。また、一回で揃えようとしない、お昼におにぎり1個、休憩で机の引き出しにストックした魚肉ソーセージなど、分けて食べるのもいいですね。

野菜ジュースのストックが難しければ、スティック(粉状)の青汁を利用するのも手です。デスクに忍ばせる方法もあるかなと。

理想を追い求めてしまえば際限がなくなるので、ご自身の生活にはこの選び方があっている、というところをトライ&エラーしてみてほしいです。忙しい人はその時間さえもないかもしれませんが、可能性のあるものはぜひ一度試してほしいです。

また、炊き込みごはんは具材を一緒に食べられるので、忙しくていつもおにぎりのみの方にはすごく便利です。

おすすめの組み合わせとしては、
・炊き込みごはん:鶏肉・にんじん・ごぼう・油揚げの組み合わせ、まめ、ひじきを加えるのもいい
・混ぜごはん:おかかとチーズ
・ピラフ的に:シーフードミックス・バターの混ぜ合わせ
こんにゃくを加えてカロリーカバーという手もありますね。

味噌汁はインスタントでも構わないのでマグカップで飲む。鉄不足が気になるならシジミの味噌汁!発酵食品が1品取れておすすめです。

カロリーや糖質カットよりも大切なこと

編集部:カロリーや糖質カットについてはどうお考えですか?

後藤さん:食事改善というと以前はカロリーが注目されていましたが、いまではカロリーだけでは無いことを、多くの方が知るようになってきました。

では、糖質カットはどうかというと、体調に合わない人もいます。特に女性の場合は、月経がとまってしまう人もいて、とても大変なことです。糖質をカットした結果、ご自身ではなく、出産した子供の糖質代謝(糖尿病になりやすくなる)に問題が出てくることもあります。特に女性の場合は、自分の体だけではないので注意が必要です。

カロリーや糖質カットよりも、咀嚼を意識する事の方が大切です。ウェイトコントロールにもつながるし、体調改善のいいきっかけになります。

今、タピオカドリンクが流行っていますが、食事のかわりにタピオカドリンクを飲んで、お腹いっぱいになっている方がいる。食事中の糖質カットをしている方もいて、知っていてやっているのでしょうか。流行っているからといって、糖質いっぱいのタピオカドリンクを飲んでいるのは、少し考えてもいいかもしれません。自分の体が心地いいかどうかよりも、トレンドにいかに乗れるかで選択をしてしまっているように思います。まずは、自分の体がどうかというところを感じてください。

自分に興味を持つことから始める食事改善

編集部:具体的には、どのように食事改善していけばいいのでしょうか?

後藤さん:すべての方にすべての方法があてはまる訳ではありません。それが食事指導の難しさです。どれを食べてくれと言われたらやるのに、と言われるけど、それは考えることを放棄しています。

何が合うかなんて、それは指導する側にはわからない。提案はするけど、その方が試してみないと分からないことが多いのです。体調の良し悪しを栄養士という立場の人間に任されても、それはちょっとまた違います。

体の調子がいい・悪い、朝スッキリ起きられる、眠くならない、集中して仕事にとりくめた、イライラしない等、悪いのはなんで?調子がいいのはなんで?というように、原因を探っていくと何を食べればいいか分からない人が減るのではと考えています。
自分で考える、感じることが大切です。


後藤 優子
福岡県生まれ
フィットネスクラブでの運動指導、アスリートトレーナー&栄養サポート、専門学校講師
■資格:日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、管理栄養士、スポーツ栄養士
■サポート歴:
[トレーナー]東福岡高校サッカー部、中京大学水泳部、大同特殊鋼ハンドボール部、DENSOボート部、名経大高蔵高校テニス部、女子空手選手パーソナルトレーナー
[栄養士]国学院栃木高校野球部セミナー、東京都少年野球連盟セミナー、競泳選手食事サポート、オムロン女子ハンドボール食事サポート、高齢者フレイル予防セミナー