長時間のデスクワーク、連続する会議、残業による不規則な生活など、現代のビジネス環境は私達の体に大きな負担をかけています。
「なんとなく疲れが抜けない」「朝起きてもだるい」「午後の集中力が続かない」など、そんな症状に心当たりはありませんか?
実は、その慢性的な疲労感の原因は、ストレスや睡眠不足だけではありません。食事の偏りや栄養不足が大きく関係している可能性があります。
ビジネスパーソンに多い疲労の原因

現代のオフィスワーカーの疲労パターンには、特徴的な傾向があります。
厚生労働省の調査によると、デスクワーカーの約70%が慢性的な疲労を感じており、その背景の1つには、食生活の乱れが大きく関与しています1。
多くのビジネスパーソンが陥りがちな悪循環は以下の通りです:
1)不規則な食事時間
会議が1日続くような日に、食事を摂る時間がなくて食事を抜いてしまう、ということが起こります。
例えば、朝から行っている打ち合わせが長引いたことでランチタイムがずれ込んでしまい、14時頃に慌てて食事を摂り、その結果夕食の時間もずれ込んで遅くなってしまい、翌朝の食欲不振につながってしまう、といった悪循環が生まれます。
2)コンビニ食・外食中心
毎日忙しく働くビジネスパーソンはなんせ時間がないため、手軽さを優先するあまり、コンビニ食や外食に頼ることで、炭水化物中心の食事に偏ってしまいます。
タンパク質や野菜が不足してしまうことで、エネルギー代謝に必要なビタミン・ミネラルが慢性的に不足します。
3)糖質・カフェイン過多
仕事の生産性を高めようと、エナジードリンクや甘いお菓子を摂取する場合があるかと思いますが、大量の糖質を短時間で摂取すると、血糖値の急激な上昇(=血糖値スパイク)を引き起こします。
血糖値スパイクが発生すると、血糖値が上がった後の急降下によって強い疲労感を招いてしまいます。
4)水分不足
会議中や営業活動中のトイレ休憩を避けるため、意識的に水分の摂取を控える人も多く、それによって軽度の脱水状態が慢性化してしまうことがあります。
体重の1〜2%の脱水は、頭痛や集中力の低下、疲労感の増加などを引き起こしてしまいます。
疲労回復のための3つのポイント
ビジネスパーソンに多い疲労の原因が分かったところで、次は具体的な解決策に移りましょう。疲労回復における食事のアプローチは、闇雲に栄養を摂れば良いというものではありません。
効果的な疲労回復を実現するには、正しい順序と優先順位が重要です。
多くの人が「疲労回復に良い食材」ばかりに注目しがちですが、まずは土台となる食事の基本を整えることが最優先です。その上で、疲労回復に特化した栄養素を戦略的に取り入れることで、相乗効果を最大化できます。
1)バランスよくしっかり食べる

疲労の根本原因は、意外に感じるかもしれませんが「食事不足」や「栄養バランスの崩れ」にあることが多いです。ストレスやハードワーク、睡眠不足などに注目が集まりやすいですが、実は食事の質と量が疲労感に直結しています。
食事量が不足すると、単純にエネルギー不足になってしまうとともに、体は基礎代謝を下げて「省エネモード」に入ります。この状態では、脳や筋肉への栄養供給が制限され、集中力の低下や体のだるさを引き起こします。
また、栄養バランスが崩れると、たとえ十分なエネルギーを摂取していても、それを体内で効率よく利用するためのビタミン・ミネラルが不足し、疲労感が増大してしまいます。
バランスよくしっかり食べるための実践ポイントは下記の通りです:
- 1日3食の確実な摂取:欠食は疲労の最大要因
- 主食・主菜・副菜の三点セット:バランスの基本構造
- 量よりも質:量は少なくても栄養価の高い食材を選択
忙しいビジネスパーソンほど「時間がないから食事を抜く」という選択をしがちですが、これは生産性を著しく低下させる最悪の選択です。むしろ、効率的な仕事のために食事時間を確保することが重要です。
2)朝食は必ず食べる

朝食は「1日のパフォーマンスを決める最重要な食事」と言っても過言ではありません。特にビジネスパーソンにとって、朝食の有無は午前中の生産性に直接影響します。
睡眠中、私たちの体は約8時間もの間、栄養補給を受けていません。朝起きた時点で、体内のエネルギー貯蔵庫(=グリコーゲン)は枯渇状態にあります。
朝食を抜くと、この枯渇状態が昼食まで続き、脳のエネルギー不足により集中力が低下し、疲労感が増大します。
また、朝食を抜くことで血糖値が不安定になり、昼食後の急激な血糖値上昇とその後の急降下を招きます。この血糖値の乱高下が、午後の強い眠気や疲労感の原因となっています。
忙しい朝でも実践できる朝食戦略:
- 5分朝食:バナナ1本+ヨーグルト+ナッツ
- 3分朝食:おにぎり1個+牛乳
- 1分朝食:バナナミルクシェイク(前夜に準備しておく)
「朝食を食べる時間がない」という方は、上記したようなパッと食べられる朝食に工夫するか、起床時間を10分だけ早めることをおすすめします。この「たった10分」の投資で、1日のパフォーマンスが劇的に改善されるはずです。
3)疲労回復が期待できる成分を摂る

基本的な食事バランスを整えた上で、更に効果的な疲労回復を目指す場合は、特定の栄養素を戦略的に摂取しましょう。
疲労回復に特に重要なのは、エネルギー代謝を促進するビタミンB群と、疲労物質の除去を助けるビタミンC・Eです。
疲労回復のカギとなる栄養素は下記の通りです:
- ビタミンB1:糖質をエネルギーに効率的に変換
- ビタミンB6:タンパク質の代謝や、幸せホルモン(セロトニン)の合成
- ビタミンB12:赤血球の生成や神経機能の維持
- ビタミンC:抗酸化作用・ストレスへの対抗
- ビタミンE:血流の改善・細胞の保護
これらの栄養素を個別に意識するのは大変ですが、後述する「疲労回復に効く食べ物&飲み物」を日々の食事に取り入れることで、自然と必要な栄養素を摂取できます。
【即効性重視】疲労回復に取り入れたい食べ物&飲み物 TOP5
疲労回復の土台となる3つのポイントを理解した上で、「今すぐに疲労を解消したい」というビジネスパーソンのために、具体的な食材をご紹介します。
「明日の重要なプレゼンのために体調を整えたい」「午後の会議前にエネルギーをチャージしたい」など、即効性を重視した状況で力を発揮する5つの食べ物&飲み物は下記の通りです。
1)豚肉:エネルギー代謝の王様

- ポイントとなる栄養素:ビタミンB1、たんぱく質
豚肉に豊富に含まれるビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換する際の必須栄養素です。不足すると、糖質を摂取してもエネルギーとして利用できず、疲労感が残る原因となります。
豚の生姜焼き定食、豚汁、豚こまの野菜炒め、などなど、自炊でも利用しやすい豚肉で、エネルギーをチャージしたり、1日の疲れをリセットしましょう。
2)にんにく・たまねぎ:ビタミンB1の相棒「アリシン」の摂取

- ポイントとなる栄養素:アリシン
にんにくや玉ねぎに含まれるアリシンは、ビタミンB1と結びついて「アリチアミン」という物質を作ります。
この物質は、体内での持続時間が長いため、疲労回復効果を長時間維持するという役割を果たします。よって、豚肉を食べるときは、にんにくや玉ねぎといっしょに食べることがオススメです。
にんにくチューブで料理にちょこっと追加したり、サラダに玉ねぎスライスをトッピングをしたりと、ちょっとした工夫で疲労回復効果がグンと高まります。
3)パプリカ:ビタミンの宝庫

- ポイントとなる栄養素:ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE
パプリカは「ビタミンの宝庫」と呼ばれるほど豊富な栄養素を含んでおり、多角的なアプローチで疲労回復をサポートしてくれます。
特に注目すべきなのはビタミンCの含有量で、これはレモンの約2倍に相当します。ビタミンCは強力な抗酸化作用により、ストレスや疲労によって体内に蓄積された活性酸素を除去し、疲労物質の分解を促進します。
更に、ビタミンEの血管拡張作用により血流が改善され、疲労物質の排出と栄養素の運搬が効率化されます。
また、ビタミンAは免疫システムを強化し、疲労によって低下した体の抵抗力を回復させる役割を果たします。
これら3つのビタミンが相乗効果を発揮することで、総合的な疲労回復が期待できます。
4)アーモンドミルク:血流改善ドリンク

- ポイントとなる栄養素:ビタミンE、良質な脂質
アーモンドミルクはビタミンEが豊富に含まれるため、強力な血管拡張作用によって全身の血流を改善して、疲労回復をサポートします。
デスクワークや長時間の会議により、私達の血管は収縮して血流は滞りがちになります。ビタミンEの血管拡張作用にとって血流が改善されると、これらの疲労物質が効率的に排出され、同時に酸素や栄養素の供給も向上します。
特に脳への血流改善は、集中力や判断力の回復に直結します。また、アーモンドミルクに含まれる良質な脂質(不飽和脂肪酸)は、細胞膜の柔軟性を保ち、栄養素の取り込みを促進してくれます。
5)バナナジュース:バナナ × 牛乳 = 完璧な朝食ドリンク

- バナナ:ビタミンB6、糖質、カリウム
- 牛乳:ビタミンB12、たんぱく質、カルシウム
バナナと牛乳の組み合わせは、疲労回復において「完璧な栄養バランス」を実現する理想的なペアです。
バナナの天然の糖質は消化吸収が早く、摂取後15〜30分で血糖値を適度に上昇させ、即座にエネルギー不足を解消してくれます。
一方、牛乳に含まれるビタミンB12は、赤血球の生成を促進して全身への酸素運搬能力を向上させるため、持続的なエネルギー供給のサポートにつながります。
また、ビタミンB6とB12の相乗効果で、神経伝達物質の合成が促進され、集中力や記憶力の向上も期待できます。
まとめ|食事で変わるワークパフォーマンス
疲労回復は、一朝一夕で実現できるようなものではありませんが、正しい栄養戦略を継続することで、確実に体調とパフォーマンスは向上します。
多くの忙しく働くビジネスパーソンは「忙しいから食事は後回し」と考えることが当たり前になっている場合がありますが、これは短期的な効率を追求する代わりに、長期的な生産性を犠牲にする危険な選択です。
本記事で紹介した疲労回復の3つの基本原則と5つの食材は、どれも特別な時間や技術が必要なものではありません。1日3食の中のどこか1食で、1つだけでも摂るとか、小さな変化を継続することで、疲労回復習慣をつくることにつながります。
忙しいビジネスライフだからこそ、効率的な栄養摂取で疲労をためない体作りを心がけ、より充実したワークライフを実現していきましょう。
参考文献・資料
- 厚生労働省. 結果の概要. Mhlw.go.jp. Published 2025. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/08/02.html

永吉みねこ
管理栄養士
「献立に悩む女性のための出張料理&栄養レッスン」主催。 簡単・おいしい・栄養◎なレシピをモットーに1,000以上のレシピを提供。
レッスン受講者は300名以上。女性セブンや各種WEBへのレシピ記事提供、栄養カウンセリングも行う。
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