デスクワーク中の疲労や肩こりは、多くの人が “仕方のないもの” として受け入れてしまいがちです。
しかし、「マイクロブレイク(数秒から10分程度の短い休憩)」を仕事の合間に挟むだけで、活力の維持や疲労の軽減、さらには首・肩・腰の不快感の予防にまでつながる可能性があることが、複数の研究によって明らかになっています1。
「休憩を取ると集中力が途切れる」「休憩時間分、仕事が遅れてしまう」といった声を聞くことが多いですが、実際の “小休憩” の効果について、本記事では、2,000人超を対象にしたメタ分析をはじめとしたエビデンスレベルの高い研究の知見をもとに、マイクロブレイクが心身にもたらす効果や、ビジネスパーソンが実際の業務中にどう取り入れられるのかなど、具体的なやり方もご紹介していきます。
マイクロブレイクとは?

マイクロブレイクは、仕事の合間に意図的に入れる「10分以内の短い休憩(作業の中断)」を指します。
2022年に発表されたAlbulescuらによるレビュー2では、マイクロブレイクには「数十秒程度の超短時間の休憩」も含まれ、作業を完全に止めて受動的に休むものだけでなく、歩行や軽いストレッチ、立ち上がること、外(景色など)を見る、呼吸法等の短いリラクゼーション、などもマイクロブレイクに含まれるとしています。
私たちヒトの注意力(集中力)や判断力、感情をコントロールする能力や精神的なエネルギーは、使えばもちろん消費していきます。
同じ作業を長時間続けていると、集中度や気分、身体の快適さなどは少しずつ低下していきますが、そのタイミングで、短くても一旦作業から離れる時間をつくることで、心身のエネルギーを回復させることができます。
研究が示すマイクロブレイクの3つの効果

では、マイクロブレイクを取り入れることで、実際にどのような変化が期待できるのでしょうか。
ここでは、ビジネスパーソンのワークパフォーマンスに関わる「活力の増加や疲労感の軽減」や「首・肩・腰などの身体的負担・不快感の軽減」、そして「長時間の座りっぱなしによる代謝への影響」という3つの観点について、それぞれ研究結果をもとに解説していきます。
1)活力を保ち、疲労感を抑える
Albulescuらによるレビュー2では、19本の研究論文から、計2,335人のデータを統合して、マイクロブレイクと活力、マイクロブレイクと疲労、の関係について検証されました。
その結果、マイクロブレイクには、活力を高める小さな効果と、疲労を軽減する小さな効果が示されました。
「活力」について、休憩を入れない条件と比較すると、「エネルギーがある」「元気が出た」と変化を感じる人が多く、小さな効果ではありますが、マイクロブレイクによって活力が有意に高まりました。
また、「疲労軽減」についても、効果は小さかったものの、複数の研究間で結果のばらつきは見られず、マイクロブレイクによって疲労感が有意に低下したことが報告されています。
2)首・肩・腰の痛み・不快感への予防や軽減になる
オフィスワーカーにおける休憩の研究をまとめたレビュー3では、能動的な休憩や姿勢の変更といった介入は、腰痛や身体的な不快感の軽減に有効であることが示されました。
一方で、研究数や介入内容にばらつきがあり、最適な休憩の頻度や休憩時間を断定するには、追加研究が必要であることも示されています。
さらに、首痛や腰痛の発症リスクが高いオフィスワーカーを対象にした研究4でも、アクティブブレイク(立つ、歩く、ストレッチする等)や姿勢の変更を促すような介入によって、新たな首痛や腰痛の発生が減少したことを報告しています。
3)座りすぎによる食後の血糖値スパイクを抑える
長時間の座りっぱなしを、短い身体活動で中断すると、代謝の面でも良い効果が生まれることが複数の研究で示されています。
過体重や肥満の成人を対象とした研究5では、ずっと座りっぱなしでいる群と比較して、短時間の軽運動(歩行)を定期的に挟んだ群は、食後の血糖値やインスリンの分泌量が低下しました。
また、健康な成人を対象にした研究6では、下記3つのグループに分けて食後の血糖値の動きが調べられました。
- 5時間の座位中、20分ごとに2分間軽い歩行を行う
- 5時間の座位中、20分ごとに2分間立つ(立つのみで、軽運動はしない)
- 5時間座りっぱなし
結果、20分ごとに2分間の軽い歩行を行ったグループは、食後の血糖値の上昇が抑えられる効果が見られました。一方で、ただ立つだけでは食後血糖値の改善は見られませんでした。
2022年に発表されたレビュー7では、座位を立位で中断すること、さらに軽い歩行で中断することは、座り続ける場合と比べて食後の血糖値の改善と関連があることが報告されました。また、軽い歩行は立位のみよりも、血糖値の上昇を抑えるとともに、インスリンの過剰な分泌を抑える効果がみられました。
ただし、現実問題、「20分ごとに2分間歩く」というのは、なかなか実施するのは難しい頻度でしょう。それでも、このような研究があり、それによって改善する項目があるということを知ることは、日々の生活や仕事の中で活かしていける部分はあるかと思います。
また、注意すべき点は、日々のマイクロブレイクを行えば、運動習慣、食事、睡眠といった生活習慣の柱をおろそかにしても大丈夫というわけではもちろんないということです。医療的な治療を置き換えるものでもありませんので、特に糖尿病のある方は、運動や血糖値の管理について、しっかり主治医や医療専門職の方に相談してください。
マイクロブレイク=良いコンディションを維持する方法

こまめに休憩をとりましょう、といった話を健康経営施策としてお伝えすると、「休む時間をこまめに挟むと、作業時間が減るので、作業量が減ったり成果も落ちるのでは」と考える方は多いです。
しかし、前述もしたAlbulescuらによるレビュー2では、マイクロブレイクを行ったことによって総作業時間が少し短くなっても、全体のパフォーマンスが一律に悪化するとは示されていません。
一方で、複雑で高い集中力を要するような仕事(分析、企画等のクリエイティブ、執筆など)では、数十秒〜数分の休憩だけでは十分に回復しない場合があることが示されています。
Albulescuらによるレビュー2でも、休憩時間が長いほど仕事のパフォーマンスへの好影響が大きい傾向があることが示されており、認知的負荷が高い仕事からの回復には、10分以上の休憩が必要になる可能性も指摘されています。
そのため、マイクロブレイクは「脳のパフォーマンスを最大化する方法」ではなく、疲労やカラダへの負担をマネジメントするような、「仕事の質が低下しすぎることを予防し、良いコンディションを維持するための施策」と考えると良いでしょう。
| 仕事・状態 | 実践の目安 |
|---|---|
| メール処理、入力、資料の確認 | 30〜60分ごとに2〜3分、立つ・歩く・伸ばす |
| オンライン会議が連続する | 会議の間に1〜2分、画面から離れて歩く |
| 分析、企画、執筆などの深い集中 | 60〜90分ごとに10分程度(もしくはそれ以上)、仕事と画面の両方から離れる |
| 首・肩・腰に違和感がある | 我慢せず、その時点で姿勢変更や軽い活動を行う |
| 食後に眠気やだるさが出やすい | 仕事の合間(複数回)に2〜3分ほどの軽い歩行を試す |
マイクロブレイクにおすすめの4つの実践メニュー

では、実際の業務中にマイクロブレイクをどう取り入れれば良いのでしょうか。
ここまででもいくつか例は挙げてきましたが、特別な道具やまとまった時間の確保は必要なく、既存の業務の流れに小さな休憩を組み込むだけで十分です。
ここからは「歩く」「席のそばで動く」「画面から離れる」「習慣化する」という4つの切り口から、今日から試せる実践メニューをご紹介していきます。
1)一作業の終わりや作業の合間に軽く歩く(足踏みでもOK)
最もシンプルな方法は、下記のような仕事の一区切りや合間に、2分程度立ち上がって軽く歩くことです。
- メールを数通送った後
- 資料を3ページ読み終えた後
- 会議が終わった直後
- 次の仕事を始める前
Radwanらによるレビュー1には、30分ごとに2〜3分の軽強度活動が、座り仕事の人にとって実践しやすいであろう方法として提案されています。
ただ、時間で区切るのは、タイマーのようなものをセットしない限り、現実的には難しいです。仕事に集中していたら、気づいたら2時間たっていたという経験はみなさんあるかと思います。
給湯室へ行く、ウォーターサーバーに水を飲みにいく、少し遠いトイレを使う、コピー機まで遠回りする、フロアを一周する、階段をのぼって下りる、など、業務中でも違和感のないような行動を、業務の区切りとセットで設定すると、続けやすいでしょう。
2)自席で行う60秒メニュー
席を立つことや、離席が難しいときは、座りながらでも良いので、次の動作をゆっくり行ってみましょう。くれぐれも痛みが出る動きがあればすぐにやめてください。
- 両肩を上げて耳へ近づけて(=肩をすくめる動き)ゆっくり下ろす、を5回
- 肩甲骨を軽く寄せて胸を開き、肩甲骨を外側に開いて背中を丸める、を5回
- 両手を組んで真上に伸びながらゆっくり呼吸、を3回
- 座ったまま(立位でもOK)かかとを上げ下げ、を20回
- 座ったまま(立位でもOK)その場でゆっくり足踏み、30秒
重要なのは「同じ姿勢で長時間いつづけない」ことです。よって、どんな運動でもOKです。その時に疲れがたまっている部位を動かしたり、その場でやりやすいストレッチを1個でも行うことで、カラダへの負担がリセットされて、心身のエネルギーの回復につながります。
3)PC画面・スマホから離れる
こまめに休憩をとって身体を動かしていても、メールやチャット、SNSなどを確認し続けていると、脳は仕事から十分に離れにくくなります。
短い時間でも、PCモニターやスマートフォンから離れて、遠くを見る、窓際で視線を外へ向ける、ゆっくり呼吸をするなど、注意の対象を電子機器以外のものに向ける時間をつくりましょう。
Albulescuらによるレビュー2では、身体活動以外にも、自然へ注意を向けることや、仕事とは異なる認知的活動、リラクゼーションといった活動も、マイクロブレイクとして有効であることが示唆されています。
「眼精疲労改善まとめ|ビジネスパーソンの目の疲れを取る方法5選」も参考になるのでぜひこちらの記事もお読みください。
4)小休憩を取る仕組みをつくる
ここまで1〜3で紹介した「歩く」「自席で動く」「画面から離れる」を実践するうえで、最大の壁となるのが「気づいたら忘れている」ことです。
仕事に集中しているときほど、休憩のタイミングは意識から抜け落ちてしまいます。だからこそ、意思の力に頼るのではなく、自然とマイクロブレイクがとれる仕組みを作っておくことが重要です。
- 30〜60分ごとに、PCやスマートフォン、ウェアラブル端末で通知がくるように設定する
- 会議前や後に、アクティブなブレイクを行う時間をアジェンダにあらかじめ加えておく
- 電話は可能な範囲で立ってする
- 水分補給(ウォーターサーバーやコーヒーブレイク)、コピー作業や印刷、トイレ等を「歩くきっかけ」に変える
- チーム内で、短い離席を「集中と健康を保つ行動」として共有し、推進する
一つひとつは小さな工夫ですが、これらを組み合わせることで「休憩をとろう」と意識しなくても、自然に、業務の流れの中で良いコンディションを維持するための小休憩をとれるようになります。
自分の働き方に合うものをぜひ1つだけでも試してみてください。
まとめ
マイクロブレイクは、数秒〜10分以内の短い休憩を仕事中に意図的にはさむ方法です。
科学的には、活力の向上、疲労感の軽減、座り仕事に伴う筋骨格系の不快感への対策、そして食後の血糖値スパイクの改善に役立つ可能性が示されています。
まずは、「作業が一段落したら2〜3分歩く」という小さなルールから始めてみてください。みなさんの仕事中に何度か訪れるような “一段落” を決めて、それと「2分歩く」をセットにすると習慣化されやすいです。
短い休憩をこまめにとることは、業務の中断ではなく、心身のエネルギーを保ちながら質の高い仕事をし続けるための投資と考えましょう。
マイクロブレイクで、高い活力を維持して、質の高いワークパフォーマンスを発揮していきましょう。
参考文献・資料
- Radwan, A., Barnes, L., DeResh, R., Englund, C., & Gribanoff, S. (2022). Effects of active microbreaks on the physical and mental well-being of office workers: A systematic review. Cogent Engineering, 9(1). https://doi.org/10.1080/23311916.2022.2026206
- Albulescu P, Macsinga I, Rusu A, Sulea C, Bodnaru A, Tulbure BT. “Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLoS One. 2022;17(8):e0272460. Published 2022 Aug 31. doi:10.1371/journal.pone.0272460
- Waongenngarm, P., Areerak, K., & Janwantanakul, P. (2018). The effects of breaks on low back pain, discomfort, and work productivity in office workers: A systematic review of randomized and non-randomized controlled trials. Applied ergonomics, 68, 230-239.
- Waongenngarm P, van der Beek AJ, Akkarakittichoke N, Janwantanakul P. Effects of an active break and postural shift intervention on preventing neck and low-back pain among high-risk office workers: a 3-arm cluster-randomized controlled trial. Scand J Work Environ Health. 2021;47(4):306-317. doi:10.5271/sjweh.3949
- Dunstan DW, Kingwell BA, Larsen R, et al. Breaking up prolonged sitting reduces postprandial glucose and insulin responses. Diabetes Care. 2012;35(5):976-983. doi:10.2337/dc11-1931
- Bailey DP, Locke CD. Breaking up prolonged sitting with light-intensity walking improves postprandial glycemia, but breaking up sitting with standing does not. J Sci Med Sport. 2015;18(3):294-298. doi:10.1016/j.jsams.2014.03.008
- Buffey AJ, Herring MP, Langley CK, Donnelly AE, Carson BP. The Acute Effects of Interrupting Prolonged Sitting Time in Adults with Standing and Light-Intensity Walking on Biomarkers of Cardiometabolic Health in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Med. 2022;52(8):1765-1787. doi:10.1007/s40279-022-01649-4
