ベッドに入ってもなかなか寝付けないとツラいですよね?

目はつぶっているけれど眠れないという状態が続くと、つい仕事のことや最近悩んでいることを考えてしまって更に眠れなくなる、という悪循環に陥ってしまうこともあります。

眠れない状態でゴロゴロしている時間は短い方が睡眠の質は向上するため、いかに寝付きを良くするかが、疲労回復の促進や睡眠の充実感において重要となります。

本記事では、心地の良いスムーズな寝付きを達成するために効果的な「6つの入眠スイッチ」をお伝えします。

寝付きが悪くて困っている、より寝付きを良くして睡眠の質を高めたい、という方はぜひ参考にしてみてください。

寝付きが良くなる6つの入眠スイッチ

1日の中で寝付きを良くするためにできることを、朝の行動から順番に紹介していきます。

1)睡眠ホルモンの分泌を促す「朝の光スイッチ」

寝付きを良くする上で重要なのが、睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」を入眠のタイミングでたくさん分泌させることです。

そして、夜メラトニンを分泌させるためにするべきなのが「起床後に日光を浴びること」です。

夕方頃から夜、更に睡眠中にかけて分泌されたメラトニンは、朝起きて太陽の光を浴びると分泌が止まります。

メラトニンは、分泌が止まってから14〜16時間後に再び分泌が始まるという特性があるため、この特性を利用することで寝つきを良くすることが可能になります1

朝起きたら、モーニングルーティーンとしてまず、家中のカーテンを開けて、部屋の中に太陽の光を取り入れましょう。

その上で、窓際で新聞を読んだり、スマホをチェックしたり、朝食を食べるといった活動を5分程度行うことで、太陽光を脳が感知して体内時計がリセットされ、メラトニンの分泌を止めることができます。

窓を開けたり、ベランダに出るなどして太陽の光を直接浴びることができる方はぜひそうしましょう。こちらの方法の場合は1分程度でOKです(太陽を直接見るのは危険なのでやめましょう)。

体内時計のリセットには「胃腸を動かす」ことも重要

起床後にしっかりと体内時計をリセットしておくことは、睡眠だけではなく日中のワークパフォーマンス向上のためにも重要です。

実はヒトは2種類の体内時計を持っていることがわかっています2

メインの体内時計(=主時計)は、目の奥に位置する「視交叉上核(しこうさじょうかく)」と呼ばれる場所に存在しており、この体内時計は、前述したように「太陽の光」を感知することでリセットされます。

もう一つの体内時計は「抹消時計」とも呼ばれ、内臓に存在します。この抹消時計をリセットするためには「胃腸を動かす」必要があります。

よって朝起きたら、光を浴びて主時計をリセットするとともに、「朝食を食べる」ことで胃腸を動かして抹消時計もリセットしましょう。

朝食をどうしても食べられない、食べる時間がないという方は、コップ一杯(150〜200ml程度)の水を無理ない程度にガブガブと一気に飲み干しましょう。

水分を摂取することでも胃腸が動き始めます。睡眠中に失った水分を補給できるため一石二鳥ですよ。

2)副交感神経優位に切り替える「夕方の運動スイッチ」

ヒトが生きる上で必要不可欠な機能(呼吸、体温調節、血圧調節、消化吸収など)が働くのは「自律神経」のおかげです。

この自律神経は1日の中で、起床の少し前から日中にかけては交感神経が活発になり、夕方から夜にかけて副交感神経が活発になっていくというリズムがあります。

しかし、このリズムが乱れてしまうと、日中に元気が出なかったり、夜なかなか寝付けない、といったことが起こります。

このリズムを正常にするためにできることの一つとして、交感神経優位な状態から副交感神経優位な状態に切り替わるタイミングである「夕方」に運動をすることが効果的です。

切り替わるタイミングで、交感神経が活性化される運動をちょっとだけでも行い、その後休息をとると、反動で副交感神経が活性化して優位になりやすくなります。

夕方にしっかりと副交感神経活動優位に切り替わることで、夜をリラックスモードで過ごすことができ、スムーズな入眠につながります。

「自律神経」について詳しく知りたい方は「夏バテ予防はお早めに〜自律神経を鍛える夏バテ予防方法〜」の記事をぜひお読みください。

自宅でできるオススメの1分筋トレ

基本的には好きな運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳、筋トレなど)で良いのですが、交感神経をしっかりと活性化させるためには、ちょっとだけキツイなと感じる程度の運動を行いましょう。

本記事では、自宅で1分でできるおすすめの筋トレを2つ紹介します。

【1】リバースランジ・ローテーション

下半身の多くの筋肉を使うトレーニング「リバースランジ」に、上半身の回旋動作を加えたリバースランジ・ローテーションは、全身のたくさんの筋肉を一気に動かすことができるため、少ない回数でも交感神経がしっかりと活性化する、強度の高いトレーニングとなります。

  1. 両足をくっつけて立ち、両手は胸の前で組みます。
  2. 片足を大きく後ろに一歩踏み出しながら腰を落とし、両手は前に伸ばします。
  3. 腰を落とした位置をキープしながら、上半身を前に出した脚側に回旋させます。目線は両手に向けましょう。
  4. 2の位置に戻ります。
  5. 1の位置に戻ります。1〜5を繰り返します。左右5〜10回ずつ行いましょう。
【2】片足ルーマニアン・デッドリフト&エクステンション

もも裏(ハムストリングス)と臀筋群を効果的に鍛えるルーマニアン・デッドリフトを行いながら、腕を前方に伸ばします。

片足で行うためバランスをとる能力も必要となり、非常に難しいですが効果的な全身トレーニングとなります。

  1. 両足を揃えて立ちます。
  2. 片足を持ち上げてももを上げながら、両手を胸の前で組みます。
  3. 持ち上げた脚を後ろに伸ばしながら上体を前に倒し、両手は前方に伸ばします。伸ばした手から後ろに伸ばした足までが一直線になるように行います。
  4. ゆっくり2の位置に戻ります。
  5. 1の位置に戻ります。1〜5を繰り返します。左右5〜10回ずつ行いましょう。

3)深部体温を下げる「入浴スイッチ」

ヒトの基本的な1日の中での体温の変動は、朝から日中にかけて深部体温は上昇して夕方にピークをむかえ、そこから就寝に向かって下がっていきます。

その就寝に向かって下がっている途中で「入浴(湯船に浸かる)」をすると、一時的に深部体温が上がります。

ヒトには体温を常に一定に保とうとする働き(=恒常性 / ホメオスタシス)があるため、グッと上がった体温はその後グッと下がります。

このグッと下がったタイミングでベッドに入ると、体温は入眠モードとなっており、寝付きが良くなります。

寝付きが良くなる入浴方法

入浴によって一時的に上がった深部体温が元に戻り、更に下がってくるのは、入浴を終えてから「90〜120分後」です。

Shamanらのレビュー3によれば、寝る90〜120分前に40〜43℃のお風呂に浸かる、またはシャワーを5〜10分ほど浴びることで、入眠時間が平均で10分短くなることが報告されています。

したがって、入浴するタイミングは「ベッドに入る約2時間前」にしましょう。

就寝直前での入浴は、深部体温がまだ上がった状態のため、むしろ入眠しづらくなります。また、温度が高すぎるお風呂への入浴は、入眠モードとは逆の覚醒モードに導いてしまうため、寝付きを良くするための入浴の場合は、お湯の温度は「40〜43℃程度」に設定しましょう。

4)脳を空っぽにする「ブレインダンプスイッチ」

ベッドに入って目をつぶると悩み事や考え事をしてしまって寝付けなくなってしまう、という方に特におすすめの寝付きスイッチが「ブレインダンプ」です。

ブレインダンプとは、寝る1時間ほど前に「気になっていること」や「明日やること」などを紙に書き出す方法です。

ついつい頭の中で考えてしまう悩み事や、まだできていないタスクを、「紙に書く」という方法で頭の外に一度出してしまうことで、心配や不安が出ていった感覚になり、寝付きが改善します。

Michalelらの研究4によれば、就寝前に「前日と今日やり終えた作業」を書き出すグループと、「次の日にやらねばならない作業」を書き出すグループで入眠までの時間を比較したところ、次の日の作業を書き出したグループの方が、平均9分眠りにつくまでの時間が早かった、と報告されています。

入浴をした後の、就寝までのルーティーンの一つとして、このブレインダンプを取り入れてみましょう。

5)副交感神経を活性化させる「目元温めスイッチ」

休息モードに導く副交感神経を優位にすることは寝つきを良くする上で必須ですが、就寝前に副交感神経活動を活性化させる方法としてオススメなのが、寝る30分程度前に「目元を温める」ことです。

目元には迷走神経と呼ばれる副交感神経の束が通っているため、目元を温めて目の周りの血管を拡張させることで、副交感神経が活性化されて優位になります。

ホットアイマスクを利用したり、電子レンジ等を使って蒸しタオルを作ることで、目元を簡単に温めることができます。

ホットアイマスクを利用する場合、つけたまま眠るのは危険ですので、10分程度温めたらホットアイマスクは外してからベッドに入りましょう。

「迷走神経」についてより詳しく知りたい方は「疲労回復と心身のリラックスに欠かせない迷走神経を活性化する4つの方法」の記事をぜひお読みください。

6)快適な寝付きと深い睡眠をもたらす「寝室スイッチ」

寝室の環境も寝つきを良くする上で非常に重要です。ポイントは「暗くする」「涼しくする」「静かにする」です。

まず、寝室はできるだけ暗くしましょう。光を感知するとメラトニンの分泌が止まってしまう可能性があります。

よって真っ暗がベストですが、真っ暗だと不安になって眠れないという場合は、必要最低限の薄明かりをつけて眠るのが良いでしょう。

寝室の室温は、少し涼しいと感じる程度が、スムーズな入眠に良い環境と言えます。

Vitaleらによるレビュー5では、寝付きを良くして睡眠の質を向上させる室温は「15〜21℃」と報告されています。

しかし「少し涼しいと感じる室温」はヒトによって個人差があるため、15〜21℃という温度にはこだわらず、自分の感覚で “少し涼しい” 温度に設定しましょう。

寒くて震えが出るような室温や、発汗が起こる室温では、寝付きが悪くなるとともに、眠りも浅くなってしまいます。

最後に「音」ですが、不快な音はなかなか寝付けないという状況を生み出します。

音がうるさくてなかなか眠れなかったり、騒音で深夜起きてしまうという場合は、寝る時用の耳栓を使用したり、防音・遮音効果のあるカーテンを寝室にセットしたり、タイマーを使って入眠の時のみ雨音、波音、鳥のさえずりといった音を流す、といった対策を行ってみると良いでしょう。

まとめ

寝付きを良くするための6つの入眠スイッチをお伝えしました。

寝付きを良くするためには、就寝前の行動はもちろんのこと、朝起きてすぐの行動も重要です。

寝付きが悪くて困っている、睡眠時間はたっぷりとっているはずなのによく寝た感じがない、という方は、ぜひ今一度1日の行動を見直し、無理なく取り入れられそうな行動を1つだけでも選んで実践してみてください。

寝付きを良くして睡眠の質を高め、脳と身体のパフォーマンスを向上させましょう。

参考文献

  1. 『スタンフォードの眠れる教室』(西野精治 幻冬舎)
  2. 『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門』(柴田重信 講談社)
  3. Shaman Haghayegh et al. (2019) Before bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews; 46:124-135. 
  4. Michael K Scullin et al. (2018) The effects of bedtime writing on difficulty falling asleep: A polysomnographic study comparing to-do lists and completed activity lists. Journal of experimental psychology. General; 147:139-146.
  5. Vitale KC, Owens R, Hopkins SR, Malhotra A. Sleep Hygiene for Optimizing Recovery in Athletes: Review and Recommendations. Int J Sports Med. 2019;40(8):535-543. doi:10.1055/a-0905-3103