「今日は疲れているからシャワーでいいや」と、湯船にはつからずにシャワーだけで済ませている方は多いと思います。夜遅くに帰ってきたり、まだやるべきことが残っていたりすると、手順の少ないほうを選びがちですよね。

ただ、湯船につかる習慣には、疲れやストレスを和らげたり、寝つきを良くしたりする効果が期待できることが、研究からわかってきています。

様々な研究結果をみると、長い時間入浴する必要はなさそうです。ポイントは「ぬるめのお湯に短めに入り、そのあと体の熱をうまく逃がすこと」です。

本記事では「入浴と疲労」や「入浴と睡眠」に関する研究をもとに、忙しいビジネスパーソンでも続けやすい「お風呂の入り方」をお伝えします。

湯船につかると、疲れやストレスが和らぐ

日本で行われた研究1では、健康な大人を対象に、同じ人が次の2つの生活を2週間ずつ試して、その違いを比べました。

  1. 40℃のお湯に、10分つかる生活
  2. 湯船にはつからず、シャワーだけで済ませる生活

それぞれの2週間を振り返って自分で採点してもらったところ、湯船につかった期間のほうが「疲労感」「ストレス」「痛み」の点数が低くなっていました。

評価項目湯船の期間シャワーの期間
疲労感42.052.2
ストレス39.250.7
痛み16.223.5

※いずれも100点満点で評価した平均値です。点数が低いほど、症状が軽いことを表しています。

さらに、気分を調べるアンケートでも、湯船につかった期間のほうが「緊張・不安」「落ち込み」「怒り・イライラ」の点数が低くなっていました。

シャワーだけで済ませる日が続いている方は、湯船につかる日を少しでも増やすことで、ココロとカラダの疲れを和らげられる可能性がある、と言えるでしょう。

寝る前のお風呂で、寝つきが良くなる

入浴は、疲れの感じ方だけでなく、睡眠にも良い影響があると考えられています。

2019年に発表されたレビュー2では、寝る前の入浴や温かいシャワーと睡眠との関係を調べた17件の研究をまとめて分析しました。

その結果、寝る前に体を温めることで、「睡眠の質の自己評価」や「睡眠効率」が良くなることがわかりました。

睡眠効率とは、布団に入っていた時間のうち、実際に眠っていた時間の割合のことです。布団の中でなかなか寝つけずゴロゴロしている時間が長いほど、この数字は下がっていきます。

また、寝る1〜2時間前に10分ほど体を温めるだけでも、寝つくまでの時間が短くなったという結果も報告されています。

さらに、日本の高齢者1,094人を対象にした研究3でも、寝る1〜3時間前に入浴した人は、入浴しなかった人に比べて、寝つくまでの時間が短かったことが報告されています。

寝つきのカギは「温まったあとの放熱」

なぜ、お風呂に入ると寝つきが良くなるのでしょうか。

お湯で体が温まると、手や足の皮膚に流れる血液が増えます。すると、その後(=お風呂から出た後)手足から体の熱が外へ逃げやすくなります(=放熱)。この放熱が、スムーズな寝つきを後押しすると考えられています。

つまり、睡眠のために大切なのは、体の芯まであたためることではなく、温まったあとに熱をうまく逃がしてあげることです。よって、熱いお湯につかったり、長風呂をする必要はありません。

寝つきを良くするための、入浴以外の方法・工夫については「寝つきが悪い人必読!寝つきが良くなる6つの入眠スイッチ」の記事もぜひお読みください。

湯船に入れない日は、シャワーでもOK

湯船とシャワーを比べた研究1では、シャワーの日にも疲労感などの改善が見られていました。

湯船に入れる日は湯船に、難しい日はシャワーで体を温める。その日の状況に合わせて選ぶことが、良い習慣を無理せず長く続けるコツです。

疲れをほぐすお風呂の入り方

ここからは、研究結果をもとにした、忙しい夜でも比較的取り入れやすいお風呂の入り方を紹介します。

1)お湯は「40℃」、つかるのは「10分」を目安に

多くの研究で使われていたのは「40℃のお湯に10分つかる」という条件でした。よって、まずば40℃のお湯に10分までを目安につかってみましょう。

熱いと感じたら温度を少し下げて、しんどいなと感じたら10分より早く上がってしまってもOKです。

2)睡眠のためなら「寝る1〜2時間前」にお風呂に入る

寝つきを良くしたいという方は、寝る1〜2時間前の入浴を目安にしてスケジュールを立ててみましょう。お風呂からあがったあと、手足から熱が逃げていくタイミングで布団に入る、というようなイメージです。

ただし、帰りが遅い日に「入浴後は1〜2時間は空けないと」と、寝る時間を遅らせてしまうのは本末転倒です。睡眠時間を削ってまで、タイミングを合わせる必要はありません。

そんな日は、短めの入浴やシャワーで済ませたり、早めに布団に入ってしまっても問題ありません。

3)帰宅したら、まず給湯スイッチを押す

「湯船につかりたいけど、お湯を張るのが面倒で、結局シャワーにしてしまう」という方もいるかと思います。そんな方は、帰宅後のルーティーンを再構築しましょう。

家に着いたら、まず給湯のスイッチを押す。これを習慣にしましょう。そして、着替えや荷物の片付け等をしている間にお湯を張っておきます。こうすることで、お風呂のためだけに待つ時間を減らすことができます。

いきなり毎日やろう!とすると疲れてしまいます。まずは無理なくできそうな日から試してみてください。

安全に入浴するために押さえておきたいポイント

お風呂は「体を休めるための時間」ですが、入り方によっては、逆に体に負担がかかってしまうこともあります。

消費者庁4の注意喚起をもとに、安全に入るためのポイントをまとめました。

こんな日は入浴を控えよう

次のようなときは、湯船につかるのは控えましょう。

  • お酒が抜けていないとき
  • 食事のすぐあと
  • 薬を飲んだあと

「疲れたから、すぐお風呂入っちゃおう」となりがちですが、お酒やお薬の状況も含めてタイミングを考えることは大切です。

温度と時間以外にも気をつけたいこと

消費者庁は、入浴中の事故を防ぐための目安として「お湯の温度は41℃以下、湯につかる時間は10分まで」と挙げています。そのうえで、次のような工夫も推奨しています。

  • 入浴前に、脱衣所と浴室を暖めておく
  • 浴槽から急に立ち上がらない
  • 入浴前に家族などに「お風呂入ってくる!」と声をかけ、ときどき様子を見てもらう

また、肩までつかる全身浴は、水圧によって心臓に負担がかかることがあります。心臓や血管の病気がある方は、お湯の温度やつかる深さ、入浴時間について、かかりつけの医師に確認しましょう。

途中で気分が悪くなったら、予定の時間まで我慢せず、すぐにあがりましょう。

まとめ|ぬるめ・短めのお風呂で夜の休息モードへ

湯船につかる習慣には、疲れやストレスを和らげる効果が期待できます。また、寝る前のお風呂は、寝つきや睡眠の質を良くする効果が報告されています。

ポイントは、40℃くらいのお湯に10分間つかり、寝る1〜2時間前にあがって、体の熱をうまく逃がすことです。

湯船に入れる日は、熱すぎないお湯で短めに。湯船に入るのが難しい日や、お酒を飲んだり体調がすぐれない日はシャワーに切り替える。

お風呂に頑張って入るのではなく、夜に自然に「休息モード」へ切り替えるための習慣として、ぜひ今夜から取り入れてみてください。

参考文献・資料

  1. Goto Y, Hayasaka S, Kurihara S, Nakamura Y. Physical and mental effects of bathing: a randomized intervention study. Evid Based Complement Alternat Med. 2018;2018:9521086. doi:10.1155/2018/9521086
  2. Haghayegh S, Khoshnevis S, Smolensky MH, Diller KR, Castriotta RJ. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: a systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019;46:124-135. doi:10.1016/j.smrv.2019.04.008
  3. Tai Y, Obayashi K, Yamagami Y, et al. Hot-water bathing before bedtime and shorter sleep onset latency are accompanied by a higher distal-proximal skin temperature gradient in older adults. J Clin Sleep Med. 2021;17(6):1257-1266. doi:10.5664/jcsm.9180
  4. 消費者庁. 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!―自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています―. 消費者庁ウェブサイト. 2020年11月19日. 2026年10月28日アクセス. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042